「プロジェクトY」 星のふるさと・冬まつり
~厳冬の麻生池 風前水面の浮上作戦~ 後編
コロンブスの卵のような発見から、
水に沈まない土台を完成させた祝原と荒川であったが、
まだまだ問題は山積していた。
水に沈まない土台の完成で、周囲を包んだコピー用紙の浸水問題は多少改善したものの、
下から徐々に浸透してくる水を受け止めきれるだけの物ではなかったのだ。
使える予算は少なく、燈籠800個分の防水素材を用意する金額は無い。
限られた時間が無くなっていく中、
遂には残業を重ねる日々を送ることとなった祝原と荒川。
季節はすっかり晩秋になっていた。。
思うような結果が出ない日々が続く中、荒川がある事を思い出した。
それは、去年までの冬まつりで使用した、竹燈籠用のキャンドルの燃え残りを、
何かに使えるかもしれないからと、全部溶かして保存していた事だった。
蝋は水をはじく。コピー用紙に塗布すればもしかしたらいけるのではないか。
事態は大きく動いた。
保存してあった蝋を溶かし、コピー用紙を浸してみたところ、
水をはじくどころか、紙の耐久性、そして透過性までも向上し、
燈籠としての光量も増加する結果となった。
それは、一石三鳥とも言うべき発見。
二人の想いが報われた瞬間だった。
残す壁は、池の対岸へと繋ぐ「糸」だけとなった。。
当初、祝原も荒川も水燈籠を繋ぐ「糸」に関しては楽観視していた。
「釣り糸」を使えば大丈夫だろうと
しかし、当初の目論見は最初の実験で打ち崩された。
2m間隔で並ぶ水燈籠の重みと風力で釣り糸が伸びてしまい、
真っ直ぐに張る事が出来ないのだ。
針金でも試してみたが、結果は同じようなものだった。。
水燈籠はほぼ仕上がった。
後は真っ直ぐ張る事が出来る「糸」を見つける事だけ。
いつの間にか夜の湖面は手を刺すような冷たさへと変わり、
冬まつりが開催できるかどうかの期限が迫ってきていた。。。
(翌日UPされる完結編へ続く......)