サッチの取材日記
皆さん、八女提灯は、生産量日本一!ってご存知でしたか?
江戸時代から始まり、現在まで脈々と受け継がれている伝統工芸ですが、
仏壇と同じように、提灯も分業制で製造工程は、
1. 火袋の製作
2. 絵付け
3. 木地づくり
4. 漆の塗り
5. 蒔絵の製作
6. 仕上げ
と、大きく6つに分かれていて、それぞれが一つの業種として独立しています。
職人さんたちがそれぞれのパーツを平行して作っていき、
完成すると全体の流れを管理する提灯屋さんに集められて、
ここで製品に仕上げられるというのが基本的流れ。
今回は、2.絵付け職人さん、樋口孝一さんにお会いしてきました。
実はこの日、霧と事故で、高速道路がとても混んでいて待ち合わせの時間に
少し遅れてしまったのですが、樋口さんは優しく迎えてくださいました。
申し訳ありませんでしたぁ。
さて、町屋の中にある工房に入ると、作業場にたくさんの火袋(ひぶくろ)が並んでいました。
火袋とは伸縮する提灯のボディの事で、八女提灯は1本の骨を螺旋状に巻いて
提灯の形にしていく、一条螺旋式で作られます。
これに糸を掛け、糊を塗って絹を張って火袋が完成します。
この火袋に樋口さんが絵を描いていくわけですが、その図柄がなんとも素晴らしい!
全く下書きなしで、山水画や美しい花々、
時にはトラなんていう動物やアニメのキャラクターなども描くそうです。
取材させていただいている間にも、手は動きつつ、先がいくつかに細く割れている筆を
使って、松の葉の部分をさささっと描いてらっしゃいました。
本当にさささって感じ。
樋口さんが筆を入れていくと、ただの線がちゃんと松になっていくんだもの。驚きです!
この時の樋口さんは、先に他の部分が描かれている火袋に、松の葉だけ描いています。
実は同じ部分のみを連続して描いていく方法を「速描」(そくびょう)というんですが、
明治時代に編み出された技なんだそうです。
その技を継承しているのが樋口さん。
そして奥様の千鶴子さんもこの速描のお手伝いをされていて、
連係プレーで絵が仕上がっていきます。
奥様にいたっては、まぁるい火袋には絵が描けるけど、
平面になると描けないとおっしゃっていました。
ある意味特殊技術ですよねぇ。
今、主流となっている2重になった提灯は、
色や柄に更なる趣が加わり、飾るのが楽しくなるかもしれません。
また、隠し絵なんかもありましたよ。
美しい絵の中に、こっそりクモがいたりてんとう虫がいたり、遊び心がありました。
「分かるかな?」
伝統ある八女提灯も、こんな風に進化しているんですねぇ。