fmfukuoka

2009年7月アーカイブ

【その11】繋がりの世界

線は人と人 心と心を繋ぐ

人の古 長い時の中にも繋がり続けている線

線は音を生みだす

線から生まれた音は旋律となり

誰かの心に触れては 甘い感触や切ない余韻を残す

筝は 心に触れる楽器

筝は 人と人を繋ぐ

筝は 人生を奏でる

筝は 共鳴しあう線 心が繋がる相手を求める

上にあるのは―――

筝がテーマになっているラジオドラマ『月のしらべと陽のひびき』を書く前に、インスピレーションを得ようと書いていた文。

苦し紛れだったけど、自分の書く気を煽ろうと書いてみたもの。

僕は、とにかく【繋がり】を描こうとしました。

それは、遠い昔と現在の繋がり。
男女の繋がり。
日中の繋がり。
そして、発信する側と、受け取る側の繋がり。

それらが全て、筝の音で繋がっているような物語にしたかったんです。

筝の【線】が弾かれると繋がってゆく世界...

舞台では、もっと近く――

もっと深く――

繋がってゆく世界を作りたいです。

作演出 阿久根知昭

【その10】本格的に始動

先日、日蝕がありましたが、皆さん、いろんなところでご覧になっていたんでしょうね。
「月のしらべと陽のひびき」では重要な出来事である日蝕なんですけれども、
皆さんは運命の人に出会えたりしましたでしょうかー...みたいな時事から入ってみました作演出の阿久根です。

まー、昨日、一昨日の集中豪雨で、家の前の道が川になったりしてまして、日蝕の話題なんてどっかに飛んでいってましたけど、
豪雨に襲われた北部九州にいらっしゃる方々は大丈夫だったでしょうかね?

さて...

日本一に輝いたラジオドラマ「聞こえない声」の大騒ぎも一段落いたしましたので、これからは、舞台「月のしらべと陽のひびき」に全力で臨みます。

これからは忙しくなるので、プロデューサー大塚さんも、川や海に釣りに行ったり、海外に遊びに行ったり出来なくなると思いますけど...
(と、意地悪を言ってみたり)

でー...

今、やっているのは楽曲作りなんですけどね。

僕の演出上の要求を聞いてもらって作っていただきまして、曲が出来てゆくと、それを元に構成台本を更にイジリます。

それを9月の半ばまでに―――

そして、出来上がった曲にダンスの振り付けをしてもらいます。
そこにも演出上の要求を加えつつ、ダンスを作ります。

それを10月以内で完成させたいな...

あとはダンスの稽古。

もうそろそろ、衣装や道具の美術会議もやんなきゃ...

...

...

...

とにかく大変な日が始まってます!

作演出 阿久根知昭

オッス、おら相国。

というワケで相国(しょうこく)を演じた作演出の阿久根です。

大塚さんの記事で冷や汗モンの事件が綴られておりましたが、あの

『収録した音の中に、ミキシングの機械のノイズが入ってた』

という報告を聞いたとき、
取り直しも不可能なんつーことを言われたので、
もー僕は覚悟しましたよ。

『紀元前の中国の市場にはミキシングの機械が置いてあった設定にしよう』

ってね。

置いてあった理由は、やっぱ

『古代中国のDJはワンマンでやってたから』

でしょうね。

で、第2案の打開策として風の音だったんですけど、まあ、そっち採用になりまして...

で、あの風の音。

最初聴いた時は「台風やないですか!」とケチつけましたけど、手前の風の音の向こうから、微かに箏の音が聴こえてくるんですよねえ。
まるで風に揺らいでいるように...か細く頼りなく...

結果、いい効果になりました。

古代中国にミキシングマシンが置いてある設定でなくて良かったですねっ。

と、いうワケで、舞台にもそれくらいの効果が...いや!それ以上の効果がほしいっっっっ!!!!

なーんて考えて、サラウンドの音を丁寧に作って、観客席をぐるっと含めた空間を、より立体的なドラマ空間に仕立て上げようと思っています。

市場の喧騒。
夏の夜の虫。
優しい雨音。
春の鳥の声。
王宮の空間。

お客さんは、座った席によってドラマの体感具合がいろいろ違ってくるという音構造。

あと、
冒頭の甘沢登場位置も細かく設定します。
甘沢は市場のどの辺りに位置していて、どっちの方向に歩いていたのか。
また、箏の音は、どちらの方向から聞こえてくるのか。

ラジオドラマって音だけのモノなんで、いくらでもイメージが広がって、結構立派な世界が出来上がっちゃいますよね。

舞台は見えていて、見渡せば限られた空間がアリアリと分かるので、ラジオドラマには出来ないことを、盛り沢山に用意しないといけません。

それに、舞台のお客さんは、ラジオドラマを聴いて、ストーリーを知った上で観に来る可能性が高いので、ただ「ラジオドラマを舞台上でやってみました」じゃ話にならないんです。

ラジオドラマとは別物。

というより、ラジオもいいけど、舞台もいい。
両方楽しめる、というのが理想です。

まずはラジオドラマ越え...いや、
ラジオドラマ超え。

今、僕は、そこで戦っております。

楽しませるものを、盛り沢山にするための努力をしています。

舞台用の細かな音作りには、機械のノイズは入りませんので安心してくださいな。


収録の失敗と成功?

DSC00488.jpg

おおつかです。

もう、阿久根先生、このブログすごい勢いで更新しておりますねえ。
いや、いいんですよ。
結構なことです。

で「収録と編集」を読んで、おおつかも思い出しました。
収録のとき大変なことをしてしまったことを・・・。

FM福岡は現在新社屋になり、スタジオもすべて新品。
この新社屋のスタジオでは改善されているのですが、
旧社屋(電気ビル内)だったときの苦労です。

というのも、「月のしらべと陽のひびき」の収録は基本的に、
当時の第1スタジオでおこなっておりました。
一応1日で収録を終えたのですが、編集の段階になって、
どうしても気に入らない箇所があった。で、収録のやり直し。

第1スタジオが空いていて使えれば問題がない訳ですが、
何度も何度も部分的に録りなおししていると、
タイミング的にどうしても第1スタジオが使えない日があった。

しようがない、ってんで、第2スタジオで収録したんです。
ま、収録は満足いく上がりになって、よし、と編集作業に戻ると、
わたしは声を上げてしまいました
「あっ!」と。

マイクが、周りの機械音の「サー」というノイズを拾ってしまっていたのです。

FM放送は、むかし基本的に「ワンマン」で放送されていました。
つまりDJが自分でミキシングまでこなしていたわけです。
ということは、すべての機材がひとつの部屋にある。
イコール「機械のノイズ」もかまわずマイクが拾う、というわけだったのです。

1スタは、ブースとサブが分かれているのに対して、2スタは一緒だったのです。
これに収録のときに気がつかないところが、おおつかのアホたるゆえんであります。
そうとう「かすか」ではあるのですが、そこは音にこだわっているラジオドラマ。
妥協はできません。

で、どうするか?
阿久根先生に電話で相談しました「どうしよ?もう録りなおしの時間がない・・・」と。
するとさすが天才・阿久根先生、すかさずひと言「風吹かせたらどうですか?」
おおつか、さっそくその案、採用。
機械の「サーッ」という音が風の「ヒュー」という音に消されたではないですか。

さらに、これが結構、場面の雰囲気作りのいい効果になったのです。

それが、
番組最初のあたりで甘沢(カンタク)が市場を歩いているシーンの風の音なのです。

こういうのを本当の不幸中の幸いというのでしょう、ね。

聴いてみてください。


DSC00424_2.jpg


【その8】 収録と編集の話

作演出の阿久根です。

えー

今日は収録と編集の話です。

まず収録の話なんですけど、
『月のしらべと陽のひびき』は、ホンが上がったすぐでは、キャストは、ブッチさんと渡辺しか決まってませんでした。

とりあえず、局の一室を借りて本読みを始めたんですけど、ブッチさんが忙しくて時間とれず、渡辺だけの読みチェック。
なので、ブッチさんが読む主人公、甘沢のセリフ部分は僕が読んで稽古してました。

で、ブッチさんの時間が取れて、渡辺と読み合わせする時は、まだキャストされていないホカの役、女主人、編集者、相国(しょうこく)のセリフを、僕が入れるということをしていたんです。

ある日、僕が女主人の役を演じていると、ブッチさんから

「もう、阿久根さんでいいんじゃないのー、合ってるし」

と言われ、ちょっと照れつつ―――

「いえいえ、そんなあ、へへへ」

なーんて言って謙遜してみたりして...
でも、そのあとすぐ、女主人役に岩城朋子さんが決まったので、それはやらずに済みまして。

で、また別の日に、まだ決まってなかった軽薄な編集者の役を演じていると、本部長から

「いいんじゃないの、阿久根君で」

と言われ、これもまた照れながら―――

「いえいえ、そんなあ、へへへ」

なーんて言って謙遜...
でも、これもすぐあとに縄田さんがキャストされたからやらずに済みまして。

...

...

気が付いたら僕

めちゃめちゃ憎たらしい悪役の相国をやるハメになっていました。

はからずも役者デビュー。

この役をやってから、僕はめっきりおじいちゃんと思われるようになりました。

僕としては、この役は大塚さんしかいないと思ってたんスけどね。

――――

で、収録し終わると編集です。

ここから大塚さんが活躍するワケです。

ラジオドラマを聴いた方には分かると思いますが、実は、この『月のしらべと陽のひびき』は、劇中、【間】に重点が置かれています。

このラジオドラマは【間】が壮大なイメージを広げる時間なんです。

最初に編集して上がってきたものを聴いて、僕は大塚さんにもっと【間】を入れてくれるように頼みました。
【間】を入れてほしいところを指定しといたら、次に再編集されて上がってきたものは、もー絶妙な【間】が入ってました。

指定してなかったところまで、いい【間】を入れてくれてた(笑)。

大塚さん、何度もこの作品を聴いたと言ってましたけど、それは本当なんだと思いましたね。
もう作品の隅から隅まで熟知している編集になってた。

これが無かったら...
賞は獲れてなかったと思う。

これからポッドキャストで聴く方、聴いたけどもう一度聴こうと思っている方、いろんな【間】を楽しんで聴いてみてください。

作演出 阿久根知昭


【その7】 舞台のダンスについて

作演出の阿久根です。

今回は、ダンスについて。

舞台では、ラジオドラマでは観ることが出来なかったダンスをご覧いただける!
ということで、そこらへんについてちょっと話します。

物語に出てくる姜琰は、西方の民族舞踏を舞う踊り子です。

で、

その姜琰役を演じたのが渡辺美穂ですが、彼女は中国国家認定の職業舞踏家だったりします。
ま...ラジオドラマでは声だけなので、中国舞踏を披露することは出来ませんでしたが、彼女が姜琰役をやるということで、姜琰という人物を踊り子という設定にしてみました。

つまりアテ書きだったワケですよ。
下の画像は、渡辺なんスけど...

26a.jpg

この画像のソフトフォーカス具合がちょっとアレですが...
なぜ彼女が始めにキャスティングされていたかと言いますと、凄く発音の良い中国語が喋れたからなんですよね。

ラストシーン...

ま、ドラマ聴いた方はお分かりになると思いますが、日本語と中国語で会話させたかったから――彼女に。

彼女は、実は中国残留孤児の二世だったりします。

つまり、親が残留孤児でありまして...

彼女のお母さんは2歳の時、終戦間近に満州から引き上げる列車から落ち、中国人の夫婦から育てられました。
近所の子供たちからは、日本人の子ども「鬼子」と言われて苛められてしまったらしいんですが、志を抱いて、俳優の養成所に入り、そして見事に京劇スターとなりました(スゲー話)。

そこで舞踏家の男性と知り合いまして結婚し、その方が渡辺美穂のお父さんになるワケです。

結婚の時も

「私、日本人だけどいいの?」

みたいなことをいうと―――

「日本人だからって関係ないよ。僕は君そのものが好きなんだ」

みたいなね、みたいなね、
えー...そんなドラマチックな蜜月がありましてね、それはそれはハッピーなね...生活が始まったんですけど。

で、のちに日中友好で国交開始になると、残留孤児の身元捜しが始まり、お母さんも当局に登録しといたら、なんと、身元が分かって来日、舞踏家のお父さんも日本に帰化しました。

日本に来た時、渡辺美穂はまだ小学生だったので、幼かったぶん、すぐに日本に馴染み、高校生まで普通に生活していたんですけど、中国のクロサワと言われている映画監督の謝晋氏が俳優養成所を作ったというので、そこへ願書提出。
そして、彼女は日本人として唯一合格し、中国上海謝晋俳優養成学校に入学。

僕と逢ったのは今から14年前くらいかな...

僕が映画監督として動いていた時、日中友好団体と新聞社から紹介されて、映画のヒロインオーディションを受けてもらいました。

それからの知り合いなんだけど、大塚さんが彼女のお母さんの壮大なるノンフィクションドラマに興味を持ちまして...
えー...ラジオドラマにしました。

その名も『中国残留孤児渡辺千代子物語』(超まんま)

「こーゆー直球のタイトルのほうがいいんだよ」とは、付けた大塚さんの談。

彼女を、大塚さんとFMフクオカに紹介したのは、この企画がキッカケ。

ま...彼女のお母さんのドラマは賞を獲ってませんけどね。
僕、一所懸命書いたのに。
それ以降、僕が書いたものは僕が演出するようになりました。

話を戻します。

で、渡辺は舞踏家なので、舞台では彼女の振り付け、そして彼女のお父さんのサポートがあれば、素晴らしいステージが作れる!

と思ったワケです。

ここがラジオドラマでは出来なかったところですよね。

これで姜琰の舞踏が観れますよ、皆さん。

03082612.舞踊 003a.jpg

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いやらしい話ですけど、彼女の舞踏のステージはチケット2000から3000円するワケでして、更に、箏を演奏する河原姉妹のチケットも2000から3000円はしますし、これがジョイントされて、ドラマが付いてるとすれば、この舞台のチケットって決して高くないと思うんですよねー。


だから観に来て!

来年の5月末だから!

ね!

ここで【作演出】って書いてたら、最近、旧映画スタッフの連中から

「ラジオドラマの脚本だけでなく演出もするようになったんですね」

って言われましたが、ラジオドラマスペシャルはここ3、4年ずっと演出してますよっ。

舞台も演出します!

観に来て!


作演出 阿久根知昭


作演出の阿久根です。

さて、大塚さんが執念で企画を通してスタートしたラジオドラマ作り。

実は、このドラマで大切なのは、何より楽曲だったりします。

ぼんやりとした、あらすじを書いただけで、まだいろんな情報を集めていた頃に、大塚さんから箏奏者の河原さんを紹介していただきました。

最初逢った時の河原さんったら、

「私、協力はしますけど、いろいろ出来ませんから」

なんて言ってまして、無理難題をフッかける前にガッチリ予防線を張られました。

なので、僕と大塚さんは―――

「うんうん、いいですいいです、そんな無理しなくて。今ある楽曲をちょっとアレンジしてもいいですし、作るんであれば1小節くらいでも構いませんので」

「そうですかー、すみませーん」

「ううん、いいのいいの」

なんつってね...
まー...こー...アレですよ。
まずは安心させときました。

で、ですね、
居酒屋でビールを飲みつつ物語の内容を説明したんですけど...
まだ1行も書いてないから、かなりザックリと、どんな空気が欲しいかだけ言いまして。
んで―――
近々にテスト版みたいなものを作ってほしいってお願いしてたら、その2日後くらいに曲が上がってきたんです。

妹さんにマイク持たせての自宅録音だったらしいですけど、それを聴くとしっとりとして雰囲気がよかったので、
その曲を『月のしらべ』というタイトルにしました。

それを聴いて、「これはもう少し出来そうだ」と判断した僕は、その次に河原さんに会った時、ベッタベッタに褒めました。

もーねえ、
まさにイメージどおりだっただの...
あれを聴いたらストーリーが出来上がっただの...

言ってね...

でもホントのことですよ。
確かに、『月のしらべ』と命名した曲を聴いて、中国部分の物語は書いてますからね。

で、

「出来たら登場人物の男女に1曲ずつほしいかなー」

って言いまして...
そしたら河原さんが「どんなのですか」なんて訊いてきたから、

「陽のひびきって曲が欲しいんです。姜琰は月で静、甘沢は太陽で動なんです。だから、荒々しいハデなやつが」

と、言って、更に調子に乗って

「それら2曲が最後入り混じるようにしてほしいんです。というより、それで『月のしらべと陽のひびき』という曲が完成するみたいなのを作って欲しい、いえ、作って下さい、お願いします」

てな風にね...

まー
そしたら河原さんキレ気味に言いましたよ。

「最初と話が違う」

ってねーっ、はっはっはっはっはー!
ま、言いますわね、フツー。
で、

「1小節でもいいって言ってたのにィー」

と言う河原さんに対して「だって河原さんが上げてきた曲が良かったからねー」なんてこと言ってノセようと試みたり...

で、出来たのが『陽のひびき』です。

河原さん070303_1506~02.JPG

上は収録した時の河原伴子さんです。
物語が中国なので衣装がチャイナしてます。
弾いているのは日本箏。

で、下が河原さんから紹介していただいた古箏(こそう)奏者の江舟(こうしゅう)さんです。
日本箏は演奏する前に弦を張り、終わったらとっちゃうんですけど、古箏は弦を張ったままケースに仕舞ってました。
古箏は、音も大きく響くように設計されてます。
ワビサビといいますか...静かに深く耽美を探る響きの日本箏に対して、古箏の音はゴージャスで優雅な音です。
同じ箏でありながいろいろと違うんですねえ。
月のしらべと陽のひびきは、この箏2つが入り混じる物語なんです。

江舟さん070303_1506~01.JPG

舞台は河原伴子さんが妹の抄子さんと演奏します。

まあ、お二方とも海外に演奏に行ったり、姉の伴子さんはアメリカ在住だったりして、本番までなにかと大変ですけども、舞台では姉妹の息のあった演奏を聴かせてくれると思います。

本人たちこれ読んでるかなあ...

とにかく、もーねえ、すっごい演奏してくれますよ。

もーそれはそれは最高のねッ!

よし、これでプレッシャーかかったろ。
ではまた。

作演出 阿久根知昭

【その5】 物語制作の裏ドラマ

えー...

前回までいろんなシナリオの材料の話をクドクドとしてまして、

「なんか話がむずかしい」

とか言われちゃったので、もう少し柔らかめの話をしようと思います。

この物語は、番組ディレクター(舞台はプロデューサー)の大塚さんが、僕に依頼してきて書いたものなんですけど、
実は頼まれて書き始めるのに、だいぶ時間がかかってます。

最初、大塚さんに呼び出されて、この企画書を読んだ時、僕はそれはそれは丁寧にやさしく
やさしく「これは出来ませんよ、大塚さん」って言いました(やさしいはウソ)。

もちろん書けないって言ったんじゃないですよ。
「日本の箏と中国の古箏のコラボで、箏と箏が会話する悲恋ドラマ」
ってのだけが決まっていて、あとは箏の発祥とその歴史だとか、箏にはどんな種類があるのかっつー資料がどっさりとあるだけだったので、「これだけじゃムリ」と言ったんです。

とりあえず、「企画が通ったら書きます」とだけカルーく言っておきました。
ご飯ごちそうになったし。
(プラス・通るワケないし)

で、大塚さんは、僕のあと、今度はブッチさんを捕まえて企画書を見せたらしいです。
そして僕の時と同じ説明をして、同じようにダメだしを食らったみたいです。

でも、たぶんブッチさんのほうが厳しい言い方だったんじゃないかな。
元々、大塚さんがブッチさんをFMに連れてきたほどの長い付き合いの2人だから。

その後も、僕は大塚さんに何度か呼び出されて、この企画についての説明を受けました。
その度に、僕はそこで美味しいものをご馳走になっている立場でありながら、ナンクセつけてましたね(笑)。

まあ、あれだけ言われても、何度も説明してくるあたり、大塚さんが石に噛り付いてでもコレを作りたいというのは伝わりましたけど。

で、結果―――
案の定、局に提出した企画書は眠ってしまいました。
...ホッとしました。

ところが...
ところがです。

半年ほど経ったある日、電話がかかってきて「企画通ったから書いてよ」って...

その前年にギャラクシーの優秀賞を獲ってたから、ひょんなキッカケであっさりと通ってて...

それも、ありがたいことに、局側の「大丈夫なのか?」との問いに、大塚さん

「阿久根が書きますから大丈夫です」

と言ってくれたみたいで...
(それを僕本人に言うあたりに策略は感じるけど)

...そこから、僕の「書かねばならない」地獄は始まったんですよね。

で、大塚さん、企画が通ってなかった時期、ただ遊んでたワケではなかったようで、

「逢わせたい人がいるから」

と、箏奏者の河原伴子さんを紹介してくれました。

大塚さんが、6月27日の記事で、日本の箏の音楽を大成させた僧侶賢順(けんじゅん)のことについて触れてますけど、河原さんは、その賢順記念全国箏曲コンクールにおいて、1位である「賢順賞」受賞したお方。

僕は、河原さんにお会いした時に、ストーリーなんて全然出来てないのに、また調子のいいこと、もっともらしいことを散々言って、自分の首を絞めたのでした。

ンー...なんか印象的には、僕、凄くイイモノを書けるみたいなことを口走ったような...

そこでは、大塚さんの「この人天才」だとか「この人の書くもの最高」という風な言葉にしっかり乗せられましたね。
まさに、アレを【口車(くちぐるま)】というのだと思います。

まー、僕アホですよ。
かなり重度の。

結局、大塚さんの執念にやられたワケですよ。

あ、そうそう、
舞台『月のしらべと陽のひびき』では、河原さんの生演奏が聴けますよ。

構成も広がり、楽曲もグーンとグレードアップ。

執念の男、大塚和彦が舞台のプロデューサーでございます。

乞うご期待。


作演出 阿久根知昭

【その4】 刑罰について

ナニ?トカラ行った?

大塚さん...

いーねーぇ、またそんなとこ行って。

最近「俺アメリカ行っていないから」とか言ってたのに(チッ)

というフテった入りで、今日は中国戦国春秋の刑罰について書きます。

物語で、ある刑罰が出てくるんですけどね、これも今の時代では考えられないものだったりします。

物語の刑罰が具体的にどんなのかは言いません。
知らない方はドラマを聴いてください。

昔の刑罰には人権なんてものは微塵もありませんでした。
それも、見せしめ的罰が多いため、かなり残酷。

と、いうことで、戦国春秋の五刑を紹介します。

墨(ぼく)

劓(ぎ)

宮(きゅう)

刖(げつ)

殺(さつ)

の五つ。


では、軽いものから説明します。

まず―――

墨(ぼく)

顔に入れ墨をするんです。
黥(げい)とも言います。

項羽(こうう)に仕えて秦を打倒し、のちに劉邦(りゅうほう)の元で活躍した黥布(げいふ)は、本名は英布なんですけど、刑罰を受けて顔に墨を入れられたので通称が黥布になりました。

でも、これは結構最近まであった刑罰です。
中国だけではなく、日本にも長くありましたので。

黥布の時代より、ずっと進んだ宋の時代なんて、一兵卒から軍に入ると、逃亡を防ぐために顔に入れ墨をする習慣がありました。
罰でなくとも顔に墨を入れられちゃう時もあったんですね。

あと、日本で言うと、
時代劇を観ていると、腕に入れ墨の2本ラインがあると「おめえ、島帰りだな」と、島送りになった前科者であることが発覚するシーンがありますよね。アレも罰ちゃ罰です。
藩によっては、「犬」という字を額に入れたところもあったようですね。

で、その次が―――

劓(ぎ)

鼻削ぎの刑です。

鼻の穴が正面から丸見えになるんですが、これは顔に墨を入れる罰を超えるとコレになります。
一般民はまず顔に墨を入れられたあと、また罪を犯してコレになることが多いので、顔に入れ墨で鼻の穴丸見えという悲惨な人相になります。

その次―――

宮(きゅう)

いわゆる去勢ですね。
男性の中心にぶら下がっているものを切っちゃうやつです。

昔の中国には宦官(かんがん)という方々がいて、この方たちは皆さん去勢された方たちでして、アレがなければオカシなことにならないだろうということで、後宮(王や皇帝の奥様方がいらっしゃる場所)に出入りできたりするんです。
だいたい捕虜とか献上奴隷なんかが宦官にされるんですけど。
ま、野心でいっぱいの輩は、自ら宦官となり、そこで幼い太子とお近づきになって操り人形に仕立てたり、王が可愛がっている妃に近づき、あることないこと言いつけたりして、気に入らない者を粛清したり...結構暗黒面が目立つ方々です―――

...辱めを受けさせる罰としてのは、そういうのとは違います。

宮刑を受けた有名な人といえば、『史記』を編纂した司馬遷(しばせん)です。
司馬遼太郎氏のペンネームの元になった方ですね。

彼は太史令だった時に、戦争で破れ、敵方に投降した友人を弁護したために、王の怒りを買い、死刑を言い渡されたのですが、『史記』を綴ることが出来なくなってしまうため、生きながらえるために恥を忍んで宮刑を受けるように頼んだのでした。

彼が宮刑を選んでなかったら、多くの英雄たちは、無名のまま終わっていたでしょう。

というより、多くの故事も残らず「先んずれば人を制す」「四面楚歌」「臥薪嘗胆」「背水の陣」「鳴かず飛ばず」という言葉も生まれてなかったですね。

僕個人としては「酒池肉林」という言葉が好きですけど。

丁度、『月のしらべと陽のひびき』を書くころ、大塚さんが史記を読んでいて、僕がここにある五刑に触れたら、この宮刑の惨めさあたりが司馬遷絡みで響いたらしく、この刑罰を物語のどこかに反映させるかどうかで、ブッチさんも含めて議論になりました。

で、次―――

刖(げつ)

足斬りの刑です。

足斬りとは言っても実際は膝蓋骨(しつがいこつ)、いわゆる膝の皿をえぐり取って歩けなくする刑罰で、臏(ひん)という字が膝蓋骨を意味することから、臏が刖と同じ意味で使われるようになりました。
『孫子の兵法』で有名な孫子って、春秋時代にいた孫武(そんぶ)と、その100年後の戦国時代にいた孫臏(そんぴん)の2人がいたりします。
司馬遷は、孫臏は孫武の孫だって言ってますけどね...よく分かりません。

孫臏は、友人にその才を妬まれて罠に落ち、足斬りの刑に処せられ、顔に入れ墨を入れられて二度と表舞台に出られないようにされました。

孫臏の【臏】は、実は、足斬りの刑に処せられた意味で呼ばれた名前です。黥布と似てますね。

孫臏はのちに、そのすぐれた兵法で、自分を陥れた者を見事に屠るんですけどね。

で、最後が―――

殺(さつ)

これは、もう死刑ですね。

これはこれでいろんな残虐なものがあるんですが、いろいろありすぎるので、この五刑では書かないことにします。

月のしらべと陽のひびきを書くにあたっては、いろいろな情報を固めていったワケですよ。
大塚さんが海外に遊びに行ってる間にも、グチを言いながらねーっ。

ま、書いて演出してしまえば、あとは収録したものを編集する地獄にハマったのは大塚さんでしたけどね。

大塚さんは編集中に『月のしらべと陽のひびき』100以上聴いたらしいですよ。
その話を大塚さんから10回くらい聞きました(笑)


こうやって刑罰のことを書いておけば、大塚さん、今度は刑罰を見に、またどっか行ってくれると思います。

期待してます。

作演出 阿久根知昭

 


トカラ列島に行ってきた!

阿久根先生に先を越されてしまいましたが、
おおつかも「日蝕」のことを書き込むための下書きまで、
しておりました。
たいした内容でもないのですが、
書き直すのもなんなので、そのまま掲載します。


月のしらべと陽のひびき、とは読んで字のごとく、
主人公たちを月と陽(太陽)に置き換えて表現した、物語りです。
月と陽といえば、いま話題の皆既日蝕。
日本国内では、鹿児島県のトカラ列島で観察するのがイチバンだと、
聞いています。

どんなところか、6月の初旬、先に見に行ってきました。
トカラ列島のイチバン北にある「口乃島」。
鹿児島の港からフェリーで、およそ8時間。
いや?、すごい島でした。

何がすごいって、海がきれい。もう、南国の青さ!
さんご礁で囲まれている部分などは、文字どおりエメラルドグルーン!
さらに火山で隆起した島なのか、小さな島なのに、高い山がある。
それも原生林に囲まれた、
まるでモスラが出てきそうな島だったのです。(ってモスラ、古すぎますか?)

そんなトカラ列島の口之島でさえ、観光客の受け入れ準備で、
大変そうでした。
まず、水の確保をどうするか?(と同時にトイレも) 
宿泊施設が足りない。
島にあるキャンプ場も急ピッチで拡張工事の様子。


7月22日は、相当な混雑になるようです。
ま、福岡でも90パーセントは日蝕になるようですから、
わたくしは福岡で楽しもうと思います。

しかし、ラジオドラマ「月のしらべと陽のひびき」は、
けっこう日蝕がキーワードでもあるわけです。
まだお聞きになっていない人は、
このページから無料でダウンロードして聞くことができますので、
どうぞ。

ドラマが先か、日蝕が先か・・・さて、どちらが正解か?

プロデューサー:大塚和彦

PS/阿久根先生の書き込みによると、おおつかは、
  とてもアホな男、だと読めますね。
  問題ありませんので、よろしくお願いします。

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