3月24日のゲストは、フジファブリック 山内総一郎さんでした。

  • 投稿日:
  • by

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手は香月千鶴です。

今回のゲストはフジファブリック、山内総一郎さん。 #フジファブリック

2004年に5人編成のグループとしてメジャーデビューしたフジファブリック。
2011年からは現在の3人編成で、一貫して唯一無二のメロディとサウンドで、今の日本のロックシーンに大きな影響を与え続けているグループです。

そんな山内さんはとりわけ、この番組が放送されている山口には一方ならぬ想いがあるよう。

最初のごあいさつはこんな感じ。

「こんにちはフジファブリックの山内総一郎です。
福岡は久しぶり、FM山口ではデビュー当時に『フジファブリックのGUCHIGUCHI言わせて』って5分番組を一年くらいやらせていただいて、そこから今年15周年なんですけども。形を変えてネットラジオになりまして今でも「フジファブリックのゆるゆるいかせて」という番組で続いているきっかけにもなったのはFM山口ですね。よろしくおねがいします」

今日は時々その頃の思い出も登場しつつ、平坦ではなかったこの15年の総決算とも言えるアルバムを通して今のフジファブリックの音世界を垣間見ることができました。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


まずは今日、ピックアップしてくれたドライビングミュージックはAndy Shaufの『The Magician』。70年代感あふれるゆったりしたピアノのストロークと少しサイケなサウンドと優しいボーカルが気持ちいいですね。

「いやあ、これは美しいですね。大好きですね。イントロから声出ちゃいますね『うぁっ』って(笑)
車運転しながらよく聞くんですよ。あんまり飛ばしたりしないでゴロゴロゴロゴロ転がしているようなおっそいおっそい運転なんですけど。そういう時に助けてくれるっていうか。 景色と共に染み入るような音楽なんで。あのぉ?好きですねぇ。」

そう言うと少し恥ずかしそうに笑う山内さんです。

「僕らいつもお世話なってるとあるCDショップの店員さんがいまして、その人がAndy Shaufさんのアルバムが出た時に『もう絶対好きだよ』って言って頂いたんですよ。カナダ出身のアーティストで、音にも余裕があるというか広い所で鳴っている大自然の音楽と言うか、狭い部屋で聞く音楽じゃないかもなって気がしますね。海の中道のあたりをゆっくりドライブしながらだとすごくいいような気がするんですよね。 僕は好きです、ドライビングミュージックとしてはドンピシャだと思います」

無邪気な表情で笑うその顔は、音楽ファンそのもの。


そんなフジファブリックは今年デビュー15周年、1月23日に、通算10枚目となるフルアルバム『F』をリリース。15周年に10枚目と節目が重なる年ですね。

泣ける名曲と話題の『手紙』のアルバムver.に加え、アニメ『3D彼女 リアルガール』のエンディングテーマ『破顔』や『AQUOS 2』のCMソングとしても注目された『恋するパスタ』など、全9曲が収録されています。

アルバムのコンセプトは?とたずねるとすかさず、

「最高傑作です(笑)」

最初から最高傑作を目標にアルバムは作られたそう。

「最高傑作をテーマに作り始めたのはファーストアルバム以来ですね。
ハードルは高いなと思ったんですけど、その分メンバーそれぞれの内にある気持ちや希望を掘っていく作業だったのでルーツが出てきたりとか、結果的になんて言うかほんっとに楽しいレコーディングになったので、音楽の基本ですかね、音楽を楽しく作って自分たちも満足する最高傑作が出来たなあって思います」

タイトルはシンプルに「F」。

「フジファブリックの頭文字でセルフタイトルのつもりです。
これが自分たちの全てですって言い切って良いようなアルバムにしようってことで、まずはタイトルから決めました。
最初に『手紙』って曲がまずあって、これがアルバムの核になるだろうと。 これを核にするのなら最高傑作にしないといけないということで、まずタイトルを決めよう!ってことですね」

アルバムは一曲目は言葉もメロディも削ぎ落としたシンプルで力強いナンバー「Walk On The Way」から始まります。  

「メロディの音数も多くないので、だいぶ端折ったというとアレですけど言葉も削りました」

そんな削りに削ったという作品は、いきなりグッと耳と心を掴まれて、気がつけば4分半あっという間に終わっているような濃密な一曲になりました。

「嬉しいですね。今回のアルバムは当初全曲に『F』から始まるサブタイトルを付けていたんです。これ裏テーマで、この曲の裏テーマというかサブタイトルは『フジファブリック』というタイトルだったんです」

そこには15年というバンドの歴史についての一方ならぬ思いがこもっていました。

「フジファブリックも2009年に志村くんが亡くなって。そこが大きなターニングポイントだったりしたんで。 それでもこうやって続けられてるっていうことに喜びもあり感謝をもってこの曲を書きましたね」

そうやって聞くと裏に表に随所に「F」が散りばめられたアルバムなんですね。

福岡も『F』ですし山口のフクも『F』ですし。こじつけは否めませんが(笑)」

そう言って山内さんニヤリ。さすが番組やっていただけあって山口への目配せも怠り無いですね!そこから少し当時の思い出を聞くことが出来ました。

「番組は『フジファブリックのGUCHIGUCHI言わせて』です!コイツらホントに喋れねえからってやらせていただいて、ディレクターの方にすごく指導頂いて。ラジオのスタジオに入っていてもシーンとしているという (笑)」

こわい!

「収録だったんですけど、あ、なんかいろいろ思い出してきました。スミマセン(笑)」
なんだか嬉しそうなんですけどね。

ともあれ、そんな色々な思いのこもった渾身の1曲めから、ぜひこの曲順を追って聞いてほしい素晴らしいアルバムです。


続いては、このアルバムからより深く音世界を紐解くべく、山内さんに一曲ピックアップしていただきました。


TVアニメ『3D彼女リアルガール』第2シーズンのエンディングテーマにもなった「破顔」です。

おだやかなメロディとリズムではじまりやがて壮大な風景が広がるような今回のアルバムでも、聞き所の多い一曲です。

「こだわりはもう細かいところを言えばいっぱいあるんですけど、この曲ではアメリカ製のギターとギターアンプに日本製の真空管とスロバキアさんの真空管といろいろ混ぜ合わせてレコーディングしました」

普段からいろいろ機材の組み合わせにこだわるんでしょうか?

「組み合わせますね。だいたいアメリカとイギリス産のやつがいいんですけど、ガッツがほしいときはロシア産のもの入れたりとかそういうのがあるんですよ。

もうひとつ、この曲は比較的オーソドックスなバンドサウンドというか、ドラム、ギター、ベース、キーボードみたいなところにストリングスが入っているんですけども、実はいろんな民族楽器も入っているんです。

1サビ終わりのところでは中国の阮(ルアン)という楽器を使っています。

中阮(チョンルアン)ってやつをつかってるんですが、これがなんか面白くて。『Feverman』って曲でも使ってるんですが、ギターやピアノとユニゾンさせることによってどこかの民謡っぽい音にはなるんですね。なんかアイリッシュな感じがしたりとか、大陸的な広いサウンドになるっていうのは生楽器の持つ音色の面白さだなといつも思って、いつもレコーディングではいろんなチャレンジをしています。それで、この曲ではルアンを使っています」

確かに独特なサウンド作りに一役買っているようにも思います。それにしても、そんな珍しい楽器、例えば今回の阮(ルアン)の場合はどうやって出会ったんですか。

「2018年に3日くらい空いたので海外でも行こうかなと思って、台湾に行ったんですね。その国独特の楽器をちょっと探したくてそこで見つけたんですね。四弦の楽器なんですけどベースとギターの間のレンジ感、音域ではあるんですけど、弾いた瞬間に『コレはほしい』って思って買って。そんな感じですかね。」

ということは山内さん自信で演奏されているんですね。

「そうですね。まあ マンドリンだバンジョーだ、そういうのが好きで。集めて持ってて、もう倉庫は大変なことになってますね

まー、一度観てみたいですぅ。

「僕も機材本なんか出してますのでよかったら観て下さい(笑)」

あっさり宣伝されてしまいました。
気を取り直して。

そもそも今回の楽曲を作るキッカケについて伺いました。

「色々ありまして。まずは、この曲がフジファブリックの最高傑作と言われるための幕開けにふさわしいんじゃないかと思って『幕開け担当』を作りたかったんですね。それで作った曲なんですが、作った最中に『3D彼 女 リアルガール』のエンディングの話もいただいて。『3D彼女』のストーリーも普遍性があって切ないお話なんですけど、遠くへ行ってしまった人への気持ちがすごく描かれているアニメ、マンガだったので、そこも自分が考えていることとリンクして、生まれた言葉だったりメロディですね」

切ないけれども後半未来へ開けていくような膨らみがありますね。

「そうです。それをなんとか表現したいと思って。やっぱり未来が暗いと思っていたくないじゃないですか。色んなことはありますけど、やっぱり明るくしていきたいなという希望をこの曲に込めて作りました」

さらに音の定位にもこだわりがありました。

「音の定位も真ん中に歌がいて、ドラムもいるんですけど左右にタムがいて、そのドラムの下にベースがいるようになっているので、特に車で聞くときには低音がグッとのびてくると思うので、気持ちいいかと思います。

手前味噌ですけど、いい曲できたなと嬉しくなりますね。人間は心配とかしてしまいますが、楽しく行きましょう。っていうそんな曲です(笑)」


フジファブリック LIVE TOUR 2019 FEVERMAN

広島公演 3月9日(土)『CLUB QUATTRO』
福岡公演 3月10日(日)『DRUM LOGOS』

※詳しくはフジファブリック Official Website (外部リンク)


「この『FEVERMAN』ってツアータイトルなんですが、15周年なんでお祭り的なアルバムの世界を表現する熱狂的なライブにしたいんです。15周年を振り返るような自分たちの軌跡というか足跡を聞いていただくためにもたくさん色んな曲をやっていくと思います。是非、足を運んでいただければ嬉しいです」

さらに、10月20日(日)には、大阪城ホールの『フジファブリック 15th anniversary
SPECIAL LIVE at 大阪城ホール2019 IN MY TOWN』
の開催も決定ですね。

「僕のふるさと大坂なんですけども15周年を記念してといいますかスペシャルなステージを。15周年続けられるってのは皆様へ感謝を伝えたいってライブでもありますし、それを今年1年やって行きたいんですけど、その集大成が大阪城ホールなんで、ぜひみなさんよろしくおねがいします!」


比較的訥々と喋る印象の山内さんですが、こと音楽の話になると流れるように楽しそうに饒舌に、いろんなお話をしてくれました。

今作と今のバンドの充実した状態について揺るぎない自信を持っていることが、伺えますね。

15年目のフジファブリック、注目していきたいです。

ありがとうございました。

  


フジファブリック Official Website (外部リンク)

次週、3月9日は 押尾コータローさんをお迎えします。どうぞお楽しみに。