毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手はこはまもとこです。
今回のゲストは高田漣さん。 #高田漣
細野晴臣さん、星野源、アンサリー、ハナレグミ、原田郁子あるいは高橋幸宏さんといった錚々たるアーティストのサウンドに欠かせないマルチ弦楽器奏者、プロデューサー。ソロとしては前作の「ナイトライダーズ・ブルース」で「第59回日本レコード大賞」の最優秀アルバム賞を受賞するなど、今や日本の音楽シーンに欠かせない活躍の高田漣さん。
そんな高田さんの新しいアルバムが今、話題です。今回はなんども顔を合わせているこはまさんと、ニューアルバムを中心にいつものように飄々と自身の音楽についてお話してくれました。
そんな高田さんのドライビングミュージックは大滝詠一さんの「ナイアガラ音頭」。陽気お囃子がスタジオに響き渡り高田さんもご満悦。
今日の音解、かなり楽しくなりそうですね。
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「普段ドライブするときはモータウンとかR&Bを聞くことが多いんですが、 ある日急になんか山下達郎さんの『パレード』を聞きたくなって『ナイアガラ・トライアングル』を持っていったんですけどね。その『パレード』もそっちのけになるくらい久しぶりに聞いた『ナイアガラ音頭』の破壊力がもうすごくて(笑)。
さんざん色んな音楽を聞いた後にすごいメインディッシュ来ちゃったかんじ。
もともと大滝さんの音頭モノ 『LET'S ONDO AGAIN』とかもすごい好きで聞いてたんですけど、なんか久しぶりに思い出して、もう一度聞き出して、今でも車ではヘビロテ中ですね」
楽しそうに語る高田さん。
大滝詠一さんの音楽は高田漣さんの音楽の中にも生きていて、それは新しいアルバムの中にも確実に息づいています。
今年3月にリリースされた前作「ナイトライダーズ・ブルース」からおよそ1年半ぶりのオリジナルアルバム『FRESH』は、前作とはガラリと印象の異なるカラフルでポップなオリジナル曲や、自身の音楽ルーツの一部でもある、はっぴいえんどや細野晴臣さんのカバー曲など、タイトル通りフレッシュで充実の作品になっています。
こはまさんも「本当に気持ちのいい私のドライブミュージックです!」と、お気に入りのよう。
「ありがとうございます。自分でもそういう普段、車で聞いてる音楽みたいなもの、が割と反映されてるような気がしますね」
その軽やかなサウンドづくりの肝は、長年一緒に活動してきたメンバーとの強い信頼感があるようです。
「レコーディングのメンバーは細野晴臣さんのメンバーでも一緒の伊賀航(B)と感みたいなものがどんどん強くなってきてて。それが高田渡トリビュートのあたりからだんだん濃くなってきて、ある意味最初の雛形ができたのが『ナイトライダーズ・ブルース』。で、今回のそのバンドのサウンドを使ってどうやって、そこから色んな要素、POPな要素を散りばめようか考えていたんです。なんか今回もレコーディングしてても、せーのって音を出した瞬間からもう良いものできるって自信があるし、まさにタイトル通り『フレッシュ』な本当に少ないテイクでどれも録られてますね。」
ソロアルバムではあるのですが、メンバー間のライブ感がすごくて高田さんも自由に音楽を奏でている空気感が伝わるようなアルバムとなったポイントなのかもしれませんね?
「そうですね。本当になんか自分は普段今聞いてる音楽を素直に反映できるようになったって言うか。そこに気負いとか逆に照れくささとか、何もそういうものがなく自分が聴きたいものを作ろうっていうコンセプトだったんで、 自分なりにドライブする時のプレイリストを作ってるような感覚に近いかもしれないですね」
そんな中で、今回も細野晴臣さんの曲もあったりはっぴいえんどのカバーがあったり、やっぱり細野さんやはっぴいえんどの音楽っていうのはもう自分の中の一つの核と言うか大きな影響はあるんですね。
「そうですね。ベーシックの部分ではやっぱりすごいあるかもしれないですね。もう意識する前から流れてたものなので、父(高田渡さん)のフォークソングと同じで家にいっぱいレコードもありましたし、記憶にないぐらいですけど。いろんなライブに連れてっていただいてるんで、その影響はすごく自分の中でも濃いいと思いますねえ」
細野さんって漣さんから見てどんな方ですか?
「細野さんはですね、やっぱり音楽の巨人って言うか。本当に豊富な音楽の知識があって一世代若い僕らのバンドをいかに細野さんが今までどうやって音楽を聴いてきたかとか、どういうものをやりたいのかってことをちゃんと丁寧に教えて下さる教授みたいな感じですね。先生みたいな感じで。
でもそういう面がある一方、すごく視野の広い方で、最近も新作を出すにあたって、街で流れてる最近の音楽っていうんですかね、もう一度聞き直したりして。そういうのだけじゃなくって例えばモー娘。とかね聞いてみたりして、そういう柔軟さも兼ね備えているんですね。僕もやっぱりルーツ・ミュージックが好きなんですけど、やっぱり2019年を生きてる以上、今の音楽のフォーマットもきっちり理解しておかなきゃいけないと思っているので、そういうスタンスみたいなものは細野さんから学んでいるような気がしますね」
なるほど。そうやって音楽も、音楽に向かう姿勢みたいなものも、やっぱり先人から受け継いでつながっていくものなんですね。
「そうですね。色んなものを紐解いてみると案外全部同じで。細野さんだったらはっぴいえんどの細野晴臣もいるけどYMOの細野晴臣もいて、今の映画音楽を作る細野さんもいて、その多様性っていうのは本来皆それぞれに持っているもので、だから自分もなるべく自分をこういう仕事なんだとか、こういう事をやるんだってふうに意識しないように、なるべくどなものでも興味があったらやってみるっていうつもりではいますね。 ニュートラルな感じは自分の音楽でも大事なんだろうなと思います」
そんな楽しいアルバムの中から、高田漣さん自ら一曲をピックアップしてもらってさらに深く音世界を紐解いて頂きました。
その曲はアルバムの中でも際立って楽しくて愉快でちょっとオリエンタルな匂いもする「ハロー・フジヤマ」です。
これは本当に国道20号線を高田漣さんが下りながら富士山を見ながら書いたのかと思ったんですけど、実は違うんですね。
そうこはまさんが言うと、高田さんは少し嬉しそうに、なんだ最初はまったく関係なさそうに思えた意外なエピソードを披露してくれました。
「きっかけっていうのは細野晴臣さんの香港のライブに真心ブラザーズ YO-KINGさんが見に来たんですけど。
YO-KINGさんって普段でも一緒にツアーしていてもいつでも手ぶらなんですよ。どこ行くのも。で、香港来るって時に まさかとは思うけど手ぶらかなと思ったら本当に手ぶらで来たんですよ。パスポートとお財布だけもって。着替えさえ持ってないですよ、すっごいですよねその身軽さって(笑)。そのことに最初衝撃を受けて。
ある種YO-KINGの人生観っていうか。色んな無駄な時間を人生過ごしたくない、手ぶらで身軽に生きたいんだっていう。そういうなんていうのかなパンク精神っていうか、アティチュードでやってるとは思うんですが、なんかまあいろいろ裏目にはでてるとは思うんですが(笑)。まあ実際帰り道に日本に帰ってくる時に 、あまりに手ぶらで不審がられてだいぶ質問されたらしいんですが(笑)。奥さんのYUKIさんに逆に時間かかったっ、て名言残したそうですけどね」
面白い!そういったところからインスピレーションを得たんですね?
「そうですねー。そこからはKINGの話だけじゃなくって、海外に行くって言った時に日本のその面白いものってなんだろうと思って、最初は銭湯の富士山みたいなものを歌にしようと思い出したんですよ。でもそれがうまく行かなくなって、そのうちにだんだんじゃあ富士山を見に行く広重(安藤広重)のことを歌って、KINGが手ぶらで香港に行ったみたいに、現代の広重が手ぶらで香港まで行ったらどれだけ楽しいだろうかみたいなところから歌詞ができたような感じですね」
なるほど、だから楽曲の方も富士山の日本的なサウンドから香港の音になっていくんですね。
「そうそうそうそう。後半の香港の件の方は、以前にサケロックオールスターズのアルバムに参加した時に書いた『Bao Shen ?宝神?』という曲があって、それがちょうど香港を舞台にした曲だったんでそれをセルフカバーして入れたりしてますね」
途中にバクバクドキンのお二人のコーラスが入って、それがまた不思議なオリエンタルな感じがするんですよね! 混沌としているというか。
「うん。自分でもどうしてこんな曲になっちゃったのかがちょっと(笑)。アルバム全体どの曲もそうなんですが、いい意味で完成予想図を書かないまんま書いてる曲が多いんですよ。自分でも毎回曲ができるたびに驚くっていうか、なーんでこんな歌詞になっちゃったんだろうとか、なんでこんな曲調になっちゃったんだろうとか、自分の中でも今までにない不思議なテイストのものが多いですね」
そう言って高田さんはちょっと苦笑い。いえ逆に少し誇らしそうかも。
今作では高田さんが思うがままに、信頼できる仲間と行き先を定めない旅を楽しんできたようにも聞こえます。
「僕自身が書き始めた頃にはまだ富士山くらいまでしか行かないはずだったのに、自分も手ぶらで香港まで行っちゃったかんじですね(笑)」
そんな楽しい曲、そして楽しいアルバムになりました。
福岡、山口ではありませんがそんな盟友たちとのライブも予定されています。
FRESH&REFRESH 2019 -梅雨のレン祭り-
6月16日(日) 大阪・千日前ユニバース
6月23日(日) 東京・東京キネマ倶楽部
高田漣(vo,g),伊藤大地(drs), 伊賀航(b), 野村卓史(key), ハタヤテツヤ(key)
「どちらも夜の盛り場、キャバレーみたいなところで独特の雰囲気の場所ですね」
最初から最後まで本当に楽しかった今日の音解。
こはまさんもまだまだ話したいことがたくさんあるようで終わるのが名残惜しい様子。
そんな高田渡さんに最後にリスナーのみなさんへ一言いただきました。
「福岡でも山口でもまたライブできたらなあと思っています。その節はどうぞよろしくおねがいします」
ほんとに楽しみですね。
ありがとうございました。
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次回は、高MIYAVIさんをお迎えします。どうぞお楽しみに。