毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手はちんです。
今回のゲストはCurly Giraff 高桑圭さん。 #Curly Giraff
ロッテンハッツにGREAT3、渋谷系をはじめとする良質なポップソングを送ってきたバンドを経過して、今や引っ張りだこのベースプレイヤー。そして2005年からは「Curly Giraffe」として作曲、歌、演奏、録音、ジャケットデザイン全てを一人で手掛けるソロ活動も各方面で熱い支持を受けています。
長身で飄々とした音楽そのままの雰囲気の高桑さんがドライビングミュージックとして選んでくれたのはニューオリンズ・ファンクの開祖の一組、The Metersの『Out in the country』からスタート。
陽気でほっこりしたサウンドはCurly Giraffeのサウンドにも似て今日は楽しい音楽のお話が聞けそうな予感です。
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「単純に気持ちいいってことで。 最高なんですよ」
開口一番、高桑さんはこの曲をピックアップしてくれた理由を話してくれました。
「このアルバム(「FIRE ON THE BAYOU(1975)」ってミーターズファンからするとそんな評価高くないっすよね。ミーターズっていうと「Cissy Strut(1969年発表の代表曲)」あたりでスタートじゃないですか。もちろんかっこいいんですけど、僕ね。こういう中途半端な時期の歌もののアルバムがすっごい好きで」
1975年の「Fire On The Bayou」というアルバムでこのアルバムはちょっとゆるい雰囲気で。
「ゆるいんですよ。『Cissy Strut』とかが好きな人は、逆にあんまり好きじゃないかもしれないっすよ(笑)。 でも絶対、青空のドライブに絶対合いますよ」
確かに青空によく合う音楽。それはCurly Giraffeの音楽とも共通していますね。
そんなCurly Giraffe、先月24日におよそ5年振りとなる7枚目のオリジナル・アルバム『a taste of dream』をリリースしました。
久しぶりのアルバムになりましたね。
「そうなんですよ。気がついたら5年もあいちゃってて。自分でもびっくりですね(笑)」
今回、話題になっているのはなんと言ってもデビュー以来、一貫して英語で歌ってきていたのですが12曲中8曲を日本語で歌っています。この間になにか心境の変化などあったんですか?
「5年開いたからこそ、歳取ったっていうこともあるんですけど、いい意味でこだわりがなくなってきたんですよね。それこそCurly Giraffeを始めた時には英語でずっと歌ってたから、周りから日本語で歌った方がいよとかも言われたりもしてたんだけど全然日本語で歌いたい気持ちでもなんなかったし」
それが今回大きく変化した理由を問うと、思いもよらない意外な理由を披露してくれました。
それはカナダ出身のシンガーソングライター、マック・デマルコ(Mac DeMarco)がカバーした細野晴臣さんのナンバーです。
「いっこきっかけがあって、マック・デマルコってアーティストが細野さん(細野晴臣)のカバーをしてまして『Honey Moon』だったかな。それを聞いた時にすごい良くて。最初聞いた時にこの人、絶対日本人じゃないなってわかってるんだけど、そのたどたどしい日本語の方が日本語が入ってきたんですよ。何言ったってるんだ?ってすごい聞きたくなっちゃったっていうか。そういうアプローチって新しいなと思って」
え。そっちからですか!?
「そう、そっちから。その日本語の聞こえ方って、なんか今まであんま感じたことなかったっていうか、日本人が歌う日本語と違うから。もしかしたらマックデマルコは全然意味が分からず耳で聞いたまま歌ってるかもしんないじゃないですか。その感じがむしろ日本語が耳に入ってきたっていうのが、僕にとって新しい感覚でしたね」
確かにマック・デマルコさんのカバーは、上手くはないけど丁寧に日本語で歌うカバーは細野晴臣さんへの愛情がすごく感じられるカバーでしたねえ。
「確かに。音楽に対する愛を感じるじゃないですか。そこって言葉を越えているっていうか、その聞こえ方っていうのに僕ショック受けちゃって。だからこうやって言葉にこだわってる自分がすごいつまんない奴だなって思っちゃって。日本語でも英語でもいいんじゃないかと思って」
逆輸入的に日本語詞に目覚めたってことですか。
「そうなんですよ(笑)。アメリカ人が歌っている日本語になんか感動しちゃって。むしろ言葉の意味に強さを感じると言うか不思議な感覚が好きになっちゃって」
今回のCurly Giraffeのアルバムで聞かれる日本語は丁寧に丁寧にすんなりと耳に入ってくるきれいな歌になっています。それはそんなところに原点があるせいなんですね。
もうひとつ今回は、楽曲提供やプロデュースあるいはベーシストとして日頃親交の深い高橋幸宏さん、藤原さくらさん、ハナレグミさんとの共演も話題になっています。
「もともとデュエット曲があったんですね。この5年の間に勝手になんかデュエットを誰かとできたらいいなって想定して、特に今回のアルバム用にってわけでもなくて曲を作っていたんですよ。今回アルバム作るに当たって、そういえばデュエット曲あったなと思って聞き直したら、 『あ、これユキヒロさんが歌ったら合うなあ』とか『さくらちゃんが歌ったら合うなあ』とか『永積くん(ハナレグミ)が歌ったら合うなあ』って後から当てはめて、だからアテ書きしたわけじゃないんですよ」
それにしてはどの曲もそれぞれのアーティストにピッタリの曲ばかりですね。
「ピッタリなんですよ」
結果、日本語詞と合わせて今回のアルバムがまた今までと違う一枚になりましたね。
「そうですね。で、またデュエット曲に限ってアレンジがよりシンプルで(笑)。幸宏さんの曲に至ってはアコギ一本です(笑)」
しかも高橋幸宏さんと声がそっくり。
「僕ね。Curly Giraffe始めたときから割と幸宏さんと声が似てるね、って言われてたんですよ。それを『高橋幸宏 with In Phas』って幸宏さんのアルバムを一緒にやった時にコーラスとか入れるとどっちが歌ったかよくわかんなくなるくらい似てて」
今回のそれぞれ音楽的にも共通しているところがあるからってのもあるんでしょうね。
「そうですね。そう思いますね」
そんな高桑さんにこのアルバムから1曲選んでいただいて、さらに深くお話をお伺いしました。
シンプルで奥深い、アルバムを象徴するようなナンバー「Youth」です。
「この曲アレンジはすごいシンプルで、楽器編成もギターとドラムとベースって編成で。僕いつも自宅スタジオでレコーディングするんですけど、とかくプロの方はあの自宅スタジオとしても立派なスタジオを持ってらっしゃるじゃないですか。 僕のスタジオは至って普通で本当にスタジオってるいうか部屋なんですよ」
じゃあどっちかというと宅録(こじんまりとした自宅録音)のイメージですか。
「完全に宅録ですね」
そんな自宅に高橋幸宏さん、藤原さくらさん、ハナレグミさんが足を運んだんでしょうか。そう考えると友達の家に遊びに行くようでちょっと想像すると微笑ましいですけど。
ここでCurly Giraffeのサウンドの特徴とも言える部分について質問してみました。音世界の核心についてお聞きすることができました。
この曲では音がもこもこというかアットホームな雰囲気がありますよね。そこで、Curly Giraffeの音楽ではよく言われるとは思いますが「デモ音源っぽい」というか、すごくナマモノの感じがあるですが、そういったこだわりはありますか?
「いやあのね、よくデモっぽいって言われるんですけど、僕からすると自宅スタジオだからちょっと限界はあるんですけど自宅で録れる一番最大限綺麗な音で録りたいとは思ってるんですけど(笑)。
でも、デモっぽいと思われるのは、自宅で録ってるから『僕が作曲してるときの音』なんですね。普通は自宅で作曲した音をもとに、またスタジオで録りなおすわけじゃないですか。だけど僕はスタジオで録りなおすってことはしてないので。要するに自宅でデモを作った段階で完成なんですよ。そんな工程なのでデモっぽく聞こえるのかなって」
なるほど。つまり最初に鳴らした音をそのまま届けたいってことなのかなって思いました。
「いやこれが不思議なことがあって。
コレが例えば『Youth』のデモだとして、そのままスタジオでお友達のミュージシャンと録りなおしたとするじゃないですか。するともともとのデモのパッションというのが失くなっちゃうんですよ。僕それが一番イヤで。スタジオで録れば音も良くなるし演奏も絶対良くなるんですけど、でも最初に浮かんだパッションが絶対消えちゃうのがなんでなんだろうって、昔からおもってたんですよ。プロ始めたときから。
デモテープの強さって絶対あるんですよ。
思いついたときの勢いって絶対あるんですよ。それが失くなっちゃうのがなんか納得いかなくって昔から。だからCurly Giraffeに限っては初期衝動をちゃんとリスナーに届けたいっていう意図が最初っからあるんですね」
最初におもいついた音をそのまま鳴らしたい。
Curly Giraffeのデモっぽいと言われる音は、プロの現場で長年思っていた理想の音。デモ段階である初期衝動やサムシングを残したまま、最良の環境とテクニックでパッケージしたまさにいい意味で『デモっぽい』音だったわけですね。
もうひとつCurly Giraffeのサウンドですごく気になっているのは、それこそプロのベースプレイヤーとしては隠しても隠しきれない主張やテクニック、エゴを一切感じないんですよね。
「ないんですよね」
ちなみに一人でレコーディングすることが多い中で、ベースって順番はどのへんで入れるんですか?
「一番最後です。それは理由があって、一番最初に入れちゃうとそれでカッコがついちゃうんですね。本業だから(笑)。そうすると他の楽器を入れるアイディアが浮かばなくなっちゃうんですよね。むしろ僕の場合不得意な楽器を先に入れるんですよ。例えば鍵盤とか、あんまり自分の専門じゃない楽器から先に入れると他にアレンジをしていこうアイディアが浮かんでくるんですね。先にベース入れてカッコついちゃうのはそれはあんまり望んでないというか、僕の上手なベースを聞いてねってことをしたいわけじゃないから(笑)。全体像で届けたいから」
いつも風通しが良くて自然体のCurly Giraffeの音楽。
それはプロとしてバンド活動やベースプレイヤーとして経験を積み重ねていく中で、パッションといういちばん大切なものを一番良い形でリスナーに届ける理想の形であったことがよくわかります。
Curly Giraffe Tour "a taste of dream "
BAND MEMBER:Vo,Ba. Curly Giraffe / Gt.名越由貴夫 / Key.堀江博久 / Dr. 恒岡章大阪:2019年6月12日(水)@心斎橋JANUS
東京:2019年6月13日(木) @渋谷WWW-X
東京、大阪のみとなりますが、バンド編成で行われるライブも楽しみですね。
今回の音解、いかがだったでしょうか。
「なかなか、こんな音楽的な話ができるラジオも少ないんで楽しかったです」と笑ってくれた高桑さんですが、一人のアーティストがなぜそういうサウンドを選択するのか。なぜ日本語で歌うのか、そんなお話を聞ける機会もそうそうなく、貴重な体験だったように思います。
高桑さんは飄々と時に楽しそうに時に考えながら、ご自身の音楽をわかりやすく解説してくれました。
最後に記念撮影をしたんですけど。
やっぱりでっかい...
ありがとうございました。
Curly Giraffe Official WEB (外部リンク)
次週、5月18日は雨のパレード をお迎えします。どうぞお楽しみに。