2月9日のゲストは、日食なつこさんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手は香月千鶴です。

今回のゲストは日食なつこさん。 #日食なつこ

類まれなる歌声、聞くものの心に時に激しく時に優しく刺さる歌詞、表情豊かなピアノ、そんなシンガーソングライターとして登場した日食なつこさん、それはアルバムを重ねるごとに新たなサウンドと歌詞世界を取り込みつつ進化しています。

今もっとも注目されるシンガーソングライターのさらに進化する音世界を今回は紐解いて行きましょう。

そんな日食さんがドライビングミュージックに選んでくれたのはJudee Sillの『Solder of the Heart』です。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
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「ずっと前から気になっていたんですけど、聴けるタイミングがなくって、2年前ぐらいの春先に2泊3日の車を借りて宿も決めずに北海道の一人旅をしまして。そのドライブのはじめにですね CD をようやく買いまして、二泊三日帰りずっと車の中で流してたのがJudee Sillだったんです。その中でも気に入ってずっと聞いていたのがこの『Solder of the Heart』です。

他の曲は結構スローなんですけど、この曲だけグッとアップテンポになってくるのでやっぱりこの曲が回ってくると本当に春先の北海道の雪の感じが思い起こされるなあと、私のドライブミュージックになりましてございます」

日食さんの音楽世界にも通じますね。

「Judee Sillは自分でピアノも弾き、ギターも弾き、オーケストラの指揮もして、音楽の魔女のような方なので、本当にこの人のアルバム聴いてるとメチャメチャどうしてこれに10年前に出会ってなかったんだろうってすごい悔しい思いなることが多いので、そういう意味では後々ルーツになってくればいいなと思ってます」

そんな日食なつこさんは、先月9日に2ndフルアルバム『永久凍土』をリリースしました。

東北に生まれ、その風土に叩き上げられた日食さんの感性の、ここまでの総まとめのような作品となっています。

「今回は日食なつこ、活動10周年を密かに迎えるという。これはあえてこっそりとあんまり出さずに言ってるんですけど。その節目で出す作品っていうのはやっぱり自分の活動1年目から10年までの総括をしたいなと思いまして。
そんな時にやっぱり自分の中に一番芯としてあるものっていうのは、愛を込めて、何もない東北の荒涼とした土地なんですよね。
そんな土地でゼロからモノを作り出して、音楽を続けてこれたっていう、その雪国魂というものを一度ここで見せたいなと思いましたので、アルバムを真冬コンセプトで作りました。で、タイトルも冬らしく『永久凍土』という作品にさせていただいた形です」

『永久凍土』ってタイトルは文字面的にも強く過酷なイメージですが、中にはとても暖かい曲もあり、冬のいろいろな表情が描かれた13曲が収録されています。また、 今回のアルバム全体を通して色んな挑戦もしています。

「そうですね。 本当に今までやってこなかった構成な曲がたくさんあるのって例えば『タップダンスとなつこだけ』とか『バイオリンとなつこだけ』とかいろいろやったことない試みを色々としましたね」

5曲目の『seasoning』はまさにタップとピアノだけのナンバーですが、ライブでどう再現されるのかってあたりも気になりますね。

「あたしも気になるところですー!(笑) どうするんだろうなって思っています」

今回のアルバムはピアノの弾き語りが一曲だけなんですね。

「そうなんですよ。これは完成してみて私も意外でした(笑)。あれ?一曲しか無いんだ!?みたいな(笑) 」

できてみて気づいたこともあるってかんじで?

「そうなんですよ。それだらけでした今回は」

それでいてアルバム通して時間軸が、きれいに整っていますね。

「そうなんです。真夜中からやがて朝焼けに向かってくみたいな並びになるようにと、曲順でちょっと遊んでみたりしているのでそういうところにもこうして気づいていただけると、より面白い作品だなと思います」

アルバムを通して聞くと新たな発見のある一枚。全曲がそんな挑戦と工夫に溢れています。
そんなアルバムから一曲、日食さんに選んでいただいて改めて音を紐解いていただきましょう。

そのナンバーは「white frost」。
美しく壮大なこのナンバーは、打ち込みからストリングスへと劇的に変化する意欲的な一曲でもあります。

「この曲はですね、私の生まれた北の大地を考えた時に生まれてきた曲です。東京に住んで4年目になるんですけど、何もない土地生まれとしては東京はすごく情報量が多い街なので、そういうところをフッと離れて、例えば自分の生まれた土地や似たような場所に行ったりすると、青い空と白い雪しかない、情報量がないぶん自分の考えをじっくりと考えられる場所って絶対に残っていてほしいな、っていう思いがあるんですよ。 そういう願いを込めてこういう曲ができたというかんじです」

白、青、灰色...歌詞に出てくる色は限られていて、カラフルな都会とは対照的だったりしますよね。

「これもやっぱり、自分の生まれた土地で、まさに真冬に見える色はこれだけっていうのがあるので。街で暮らすようになると、冬夏関係なくいろんな色がとにかくめまぐるしく動いていて。それが目新しくもあり、でもちょっと自分の中での季節感がずれるところもあるみたいなところもあって。通年通して町にだけいるとやっぱり調子が悪くなるんですよ。
数年前ですか。真冬にすごくライブも作曲も調子が悪かったことがあって、なんだろうと思っていて、それで、自分の土地、岩手だったかわからないんですけど、真冬のこの歌詞のような青と白しかない土地にふっと降り立った瞬間に『今年ここに来てなかったからだ』って自分の中で腑に落ちたんですよ。 そこで数日過ごして戻ったら完全に状態が戻ったので、やっぱり自分の生まれた環境っていうのを定期的に思い出さないと、私は調子がちょっとずれてしまう人間なのだということを思いましたね。そういうところはやっぱり自分の中でちゃんと守ってあげたいなみたいなところはありますね」

そして、この独創的なメロディがとても印象的です。
メロディはどうやって思いつくんでしょう。

この曲に関しては完全に降りてきました。
曲によっては、曲の雰囲気でメロディーを先に作って歌詞とか、その逆とかもあるんですけど、この曲は本当に完全に歌詞に合うメロディーをそのまま一緒に呼んで頭の中で合流させて出した、みたいなかんじなので直感的に作った感じなんですよね。 多分、アルバムの中でも一番サラサラサラっとできた曲ですね」

なんと、驚きのお答え。
その降りてきた曲をどう音にしていくのか。前半の打ち込みから後半はストリングスも登場して使っている楽器も雰囲気も違いますよね。

ここが実は一番のこだわりで。前半の打ち込みは、そういう自分の戻りたい場所に戻りたいけど戻れない、そこで頑張ってる自分の心の動き。で 後半は弦楽でそこから一気に解放して戻るべき場所に戻った時の自分の感情の解放みたいな。抑圧と解放の対照的なアレンジをあえてくっつけたかったっていうのはあるので、だからこれは2回始まる曲かなって思います

通して聞いて初めて全貌が見えるということですね。
静謐な前半もよく耳を澄ますと背後にカタカタっとかうっすらいろんな音が入っていて、細部まで音の仕掛けがあることに気づきます。

「そうですね。このアレンジ部分はですね、Synkroさんという海外のアーティストさんにお願いしてるんですけど。(音のイメージは)日本語ですら伝えるのが難しいので、もう正しい意味を理解してもらうのは不可能だろうと思ったので、自分の生まれはこうです、こういうことを歌ってます、みたいなのだけポンと投げて、あとはこのピアノの旋律から分かってもらうしかないかないかなと。バクチのような感じだったんですけど。だけど、もともとこの方が作る打ち込みは機械ぽい打ち込みじゃなくて、土とか木とか風とか。そういう匂いのある オーガニックなちょっとアナログっぽい打ち込みをされる方で、そこは信じていたので、出来上がってきたのでもうバッチリってかんじで」

お互いの感性のシンクロを信じたって感じですか。

「そうですね。まさしくそんなかんじ」

終盤のティンパニーの音。すごくいいですね。

「このティンパニーは本当にこの最後にくるべき音だなと思って。弦楽だけでも本当に素晴らしいんですけど、弦楽の扉を開いた感じをさらにグイっともう一段階押し広げるのがこのティンパニーの役になっていますね」

この曲は本当に耳をそばだてて細部までじっくり聞いてほしいですね。

「そうなんですよ! これはイヤフォン、ヘッドフォン、素晴らしいオーディオ環境なんかで聞いていただくとしっかり伝わるかなと思いますね。360度音に囲まれるカーオーディオなんかでぜひ聞いていただきたいですね」

そんな日食なつこさんのライブは間もなく。


△Sing well△Tour

日程:2019年3月8日(金)
会場:広島 Live juke
時間:OPEN 18:30 / START 19:00

日程:2019年2月11日(月・祝)
会場:福岡 イムズホール
時間:OPEN 17:30 / START 18:00


福岡でのライブは今回バンドセットにグレードアップ。

「福岡ではじめてバンドセットでやることになりました。今までのピアノドラムでもいろいろやりきって来たんですけど、これまでで満足していただいていた方の予想をさらに上回る演出ができるかなと思ってますので、はじめての方はもちろん、何回か参戦して頂いた方もはじめてのつもりで来ていただいて大丈夫かなって思っております

日食なつこさんはイメージ通りスッと背が伸びて凛とした雰囲気をまとわせつつも、自分の音楽についてよどみ無く楽しそうに話してくれました。音楽同様、すっとこちらの気持ちをすくってグッとたぐりよせるような魅力にあふれています。

そんな日食さんにまだまだこのアルバムについてお話をしていただきたかったんですが、今回はここまで。

最後に日食なつこさんからみなさんにメッセージ。

「九州なかなか来れてなかったので、あさってのライブからなんとか頻繁にお邪魔できるように頑張れればなと思っておりますのでよろしくお願いします」

ありがとうございました。


日食なつこ OFFICIAL WEB SITE日食なつこ | 環礁宇宙 (外部リンク)

次週、2月16日はDEENをお迎えします。どうぞお楽しみに。