毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手はこはまもとこです。
今回のゲストは瀬尾一三さん。 #瀬尾一三
日本を代表する音楽プロデューサーとして、時代を彩る数々の名曲を手掛けてこられました。
その名曲の数々を耳にすれば、あの曲も、この曲もと...多分、あなたも瀬尾さんが手がけた作品を意識せずともたくさん耳にしているはず。そして楽曲の数はもちろん、日本のフォークの黎明期から、歌謡曲、ニューミュージック、J-POP、アイドルとそのジャンルの広さにも本当に驚かされます。
70歳を越えてご覧の通りとってもダンディな瀬尾さん。こはまさんは毎週土曜日の「Re-folk」などでもおなじみのお相手。そんなこともあってか、今日はそんな音楽人生をユーモアたっぷりに、リラックスしてお話いただけました。
貴重なお話たくさん。
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(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)
瀬尾一三さんといえば、今月30日に、芸能活動50年のワークスをまとめた作品集の第2弾
『時代を創った名曲たち 2 ?瀬尾一三作品集 SUPER digest?』をリリースします。
2017年にリリースされた「時代を創った名曲たち 瀬尾一三作品集 SUPER digest」の好評を受けての第2弾。
今回のアルバムには、中島みゆきさんを始め、徳永英明さん、工藤静香さん、松山千春さんなどなど...
70年代から2000年代までに瀬尾一三さんが編曲を手掛けた名曲たちが、16曲収録されています。
「それが1作めもね『瀬尾一三誕生70周年』ってついていてなんだ!って、で 今度は『芸能活動50周年』って、なんでも周年ってつければいいってもんかと思うんですけども(笑)」
こはまさんは今回もずらりと並んだ名曲の数々の中でも斉藤哲夫さんの「グッド・タイム・ミュージック」がお気に入りのよう。「最初のコーラスから...素敵な曲ですよねえ」
「あのコーラスはシュガーベイブだということがね。山下(達郎)くんとか大貫(妙子)くんがやってくれたんですよ」
今となっては大物となった音楽仲間のみなさんも瀬尾さんのまわりにはいつもたくさんいて、必要なときには仲間に声を掛けるようにすごいメンバーが気軽に参加しつつ、アレンジもしていったのかなあ、なんて思いますが。
「色々とね。昔の頃では記憶も定かじゃないんだけど、まあそんなかんじかなと思います(笑)。昔はやっぱり皆さんとの交流も近かったので、また若かったしみんな仕事もそんなになかったので『今度こういうことあるんだけど手伝ってくれる?』とかっていう感じで皆さんでもらったことありますね。いろんな人に無理言って頼んでやったんだなあって。今だったら電話で『ねえ来てくんない』なんて頼めませんよね」
アレンジの第一人者である瀬尾さんですが、アレンジャーってどういうふうに作り上げていくんでしょうか。以前、こはまさんは瀬尾さんから『絵を思い描く』というお話を聞いていました。
「僕の場合、専門的な音楽教育を受けてないので、音符からっていうよりは映像とか絵とかっていうイメージをまず自分の中でデモテープを聴きながらそこから思い浮かべますね。それを、じゃあ映画音楽のように『このシーンでこういう風にしたほうがいい』とか、『この歌詞のとこはこうかな?』とかっていうふうに。ミュージシャンではないので音楽が先には出てこないんです、音符がね。だからこの場面にはどういう音楽がいいんだろうとかっていう感じで作っていきますね」
映像とか絵とかからインスパイアされてそちらから音楽を組み立てていくこともあるとか。瀬尾さんがアレンジすると、聞いている方の頭の中に豊かなイメージが湧いてくるのはそんなところに秘密があるのかも知れませんね。
具体的に一曲解説してもらいましょう。
今回のアルバムにも収録されている 中島みゆきさんの「ヘッドライト・テールライト」。
もともと『プロジェクトX』という番組のための楽曲ですが、『地上の星』というテーマ曲があってこの『ヘッドライトテールライト』がエンディングになっています。 まさに対をなす曲です。
「一応 頭の中に想像したのは、アメリカのフリーウェイで。都会の中ではなくて大自然の中を一直線に走ってるフリーウェイで。 そのフリーウェイに1人運転してる。それから平原に陽が沈んでいくところからスタートするんです。でずーっと走っていくと対向車線の車が走ってくる、上に星が出てくる。そういうことを考えながら作っていったんです。
イントロのところにグワーッとシンセが入ってくるんですけどそれは『広さ』を表そうと思ってて、それから、 だんだんと対向する車とかとのライトが流れ星のように過ぎ去っていくっていう、そういう感じをどうやって出そうかっていう風に考えて作ってます。 」
そしてこの曲は後奏がながーいんですよね。その長さにも人生を感じさせてくれますね。
「この先はなんだろう。山あり谷ありかもしれない、喜び悲しみあるかも知れない。他の車の行く先っていうのは分からない。それを俯瞰でで見るように、でそれがずぅっと地平線に消えていく。っていうかんじをどうしたら出せるかなと思いながら作ってたんです」
なるほど。
アレンジャーというのは原曲があってそれをどういう風に聞かせるか見せるかっていう、それこそ原作者とそれを、表舞台に出すための制作者、監督、そういうことなんでしょうか?
「結局ある意味、演出をしてるのかもしれませんね。
シンガーソングライターの方が曲を作って肉付けと言うか、それは世の中の人にどういう風な感じで聞かせるか、届けて行くという。だから演出、というか宅配便みたいなもんかもしれませんね(笑)。 僕らが入らないと品物っていうか製品にはならないのでね」
そう笑ってすこーし考えて一言。
「うん。でもいい曲っていうのは本当は弾き語りでもいいんですけどね。でも全曲弾き語りじゃつまんないでしょ(笑)」
ここでこはまさんがシモンズの「ひとつぶの涙」をリクエスト。
スタジオに可憐なシモンズのナンバーが流れる中、こんな裏話を披露してくれました。
「うーん。若かったですね。やっぱりまだ大学生だったと思うんですけど。十代じゃないと書けませんよこんな恥ずかしい歌詞(笑)。まあでも歌うシモンズが高校生だったので、自分でどこまで乙女チックになるか 必死で乙女チックに書きました(笑)」
すかさずこはまさんが歌詞の一節を読み上げます。
「こーれは、今だったら歌詞をぶん投げますね(爆笑)」
大照れ笑いの瀬尾さんですが、ちょっと楽しそうですね。
そして、このアルバムの中から瀬尾さんも自らの楽曲を紐解くべく一曲チョイス。
Hi-Fi Setの名曲「中央フリーウェイ」です。
もともと荒井由実(松任谷由実)さんの曲です。
「そうですね。リリースされて数カ月後ですか。新しいHi-Fi Setのアルバムに入れようってことで録音して、僕も困っちゃってね。 だってユーミンが録音してるのに、またハイ・ファイ・セットでどうしようかなって思って。だけどハイ・ファイ・セットの方はコーラスなので もうちょっと都会的な感じにしようかなって思って。
けどまぁ、元々中央高速の歌ですからね(笑)『中央フリーウェイ』とか言ってますけども、中央高速ですから(笑)。
だけどまあこれは僕の想像ですけども、これ松任谷正隆が荒井由実を家まで送って行く時の歌でしょう? 八王子まで助手席に乗ってる彼女の気持ちでしょこれ(笑)」
瀬尾さんじゃないと言えません!
「でね。どうやってこれをロマンチックに盛り上げるのかなーと思って。一応フリーウェイなんで、頭の中では日本ではないフリーウェイ。ちょっと都会的で ニューヨーク、うーん、どちらかというとロスアンジェルスのほうかな。そういうイメージをしながら、歌詞では色々ビール工場だとか競馬場とか言ってますけど、僕の中では全然違うところでイメージしつつ。
アメリカのもっと高いビルがあって、その中を網の目のように走っているフリーウェイ、ちょっとおしゃれな車に乗って恋人同士というイメージなんですけど。何度もやってるとどうしても松任谷とユーミンが頭に出てきちゃって『んんんーー』みたいな(笑)それでなるだけハリウッド俳優のイメージにして。それでサックスとかちょっと入れて」
間奏のサクスフォンがすごく都会的。
「ちょっとお洒落にしてみようかなっていうのを一生懸命努力しました。中央高速じゃない、中央高速じゃないと思いながら(笑)」
このコーラスワークってのはどうだったんですか?
山本潤子さんの声とコーラスをどう活かそうと考えられたんですか?
「そうですね。それはすごく考えたのと、僕は大学時代から山本潤子さんが大好きだったので、山本潤子さんの声をどうやって活かすかって言うね。それでやっぱり彼女はソフィスティケイトされた洗練された感じの声の持ち主なので だからそれはすごく思いました。やっぱり僕は、あの本当に、あの彼女がね本当に好きだったので(笑)声がね声。ま、ユーミンのも良いですけど、こっちもまた違う感じで聴いてくださると嬉しいですね」
なんだか溢れ出る愛情を注ぎ込んだ成果がこの作品なんですね。声にね。
瀬尾一三さんが手がける音世界は、映像的で絵画的。その秘密がちょっと解き明かすことができたような気がします。
今回のアルバム、そんな瀬尾さんの歴史が詰まった一枚。是非一度聞いてほしいですね。
そして、もひとつ。
中島みゆきさんのライブ・アルバム
『中島みゆき ライブ・アルバム-歌旅・縁会・一会-』が去年、12月にリリースされています。
特典DVD を含む全ての音源を、瀬尾一三さんの立ち会いの下、
ロサンゼルスの巨匠エンジニア、スティーブン・マーカッセンによるマスタリングで仕上げられています。
「DVD とブルーレイでは出てるんですけど、 CD としては出ていないので。映像だとなかなかテレビの前から離れられないじゃないですか。今回は CD なので車の中でも好きな時に聴けるって目的でCDにしてみました」
中島みゆきファンのこはまさん、何十年かぶりにコンサートで歌った『時代』とかもすごいですしね、『世情』もねー。と興奮冷めやらず。
このライブの演出も瀬尾さんが手がけています。
「ライブでしかやれないことってのもありますので、ライブはやっぱり楽しいですよね」
そう笑う瀬尾さん。
今日は日本のポップス史を支え続けたプロフェッショナルとしての、数々のお話をお聞きしたのですが、随所に感じるのは音楽について語るときの無邪気な笑顔です。楽しそうに語り、ユーモアもたくさんでよく笑います。お話を聞いている方もついつい身を乗り出して目を輝かせてしまうような。やっぱりその根底には音楽への深い愛があればこそってことなんでしょうね。
これからも瀬尾一三さんが手がけていく音世界に楽しませてもらえそうです。
ありがとうございました!
「時代を創った名曲たち 2」?瀬尾一三作品集 SUPER digest? (外部リンク)
次週、2月9日は日食なつこさんをお迎えします。どうぞお楽しみに。