毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手はこはまもとこです。
今回のゲストは一昨年、昨年と過去4回登場していただいたすっかりおなじみのマリンバ奏者のSINSKEさん。
いつも軽やかでにこやかなSINSKEさん、愛用のマレット(マリンバ用のバチ)を片手に登場です。 #SINSKE
今日もまずはドライビングミュージックから。
SINSKEさんがチョイスしたのは、クールなクラブジャズ St. Germainの『so flute』です。
ちょっと不思議なパーカッシブなフルートの音色がカッコいいナンバー。
ですが、SINSKEさんの音楽に小さくはない影響を与えたそうです。
この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→ FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)
「ヨーロッパのジャズユニットなんですが、生楽器とエレクトリックを融合させているクラブミュージックといわれるジャンルなんですけど、この曲はフルートに言葉を吹き込みながら吹いているのでああいう響きになるんですね。」
尺八や世界最古の楽器といわれるのがパンフルートのようにも聞こえる不思議な音色です。
「あのフルートの音って息をたくさん吹き込むことによってああいう効果を作っているんですね。
僕が留学してる時に、よくこの曲でヨーロッパの高速道路を走っていたんですけど、その頃はまだマリンバをどういう風に皆に伝えていくことと、新しい音楽とマリンバの融合ってことを考えていたので、このフルートの斬新な演奏方法に出会って、『この音なんだろうな』って思わせてくれる上に、楽曲の中にさらに踊れるようなベースが入ってきて、こんな音楽をいつか作れるようにならないかなって思ったんですね。 そんなところで僕が最初にマリンバとポップスの融合という事に挑戦するきっかけになった作品でもあるんです」
現在のSINSKEさんの新しい音楽へのチャレンジを続けるキッカケになった曲だったんですね。
さて、5オクターブのマリンバを自在に操り、唯一無二の世界観でメロディを奏でるマリンバ奏者、
SINSKEさん、昨年8月にデビュー15周年を迎えました。
そして去年の12月にデビュー15周年記念アルバム「Prays Ave Maria」をリリースしました。
そのアルバムは全曲が「Ave Maria」。
世界中に歴史も国も超えて存在する「Ave Maria」の作品から厳選してマリンバで演奏した意欲的な作品です。
「この15年間模索してきたのはマリンバの魅力っていうのを一番表現できる曲は何かっていうところだったんですね。それがアヴェ・マリアだったということなんです」
そもそも「アヴェ・マリア」という曲がたくさんあるのはご存知でしたか?
「アヴェ・マリア」とはラテン語でお祈りの言葉に曲をつけたもの。故に古今東西の様々な手になるアヴェ・マリアが世界中に存在しているのですね。
合唱をしていたこはまさんは、たくさんのアヴェ・マリアを歌って来たそうですが、それにしてもこんなにいろんな種類があったとは驚きだったそう。
それにして、そのアヴェ・マリアをなぜマリンバで表現しようと思ったのでしょうか?
「マリンバていうのは基本のポジションっていうのがあるんですけども、実はそれが賛美歌の並び、それからアヴェ・マリアの4声の開離(1オクターブを超えたハーモニーの配置)にぴったりなんですよね。マリンバって一番基本ポジションが賛美歌のポジションなんですね。4声帯の4本の和声というのはまさに合唱だったり アヴェマリアの配置と同じ配置なので、そこから奏でる4本のバランスっていうのは、マリンバそのものにぴったりなんですね。 」
偶然か必然か、もとよりマリンバには教会音楽のようなものともともと奇妙な符合があったとは。もう少し深くその配置というのを解説してくれました。
「ちょっと難しい話になってしまうんですが、『開離』という形で「ドソミド」5度、5度で両手に収まって、そこからメロディが隣の音に和声とともに移っていくという鳴ってるマリンバのソロの曲なんてかなりそういう音の配置になっている作品が多いんですね。それもなんか運命のような気がしますね」
そんなマリンバとアヴェ・マリアの運命的な符合、相性の良さと共に実はSINSKEさんのルーツにもそんな音楽があったことに気づいたそうです。
「もともと僕の祖父母がクリスチャンで毎週教会に行って働いたりしていたので、おばあちゃん子だった僕もそれについて行っていたんですね。だから自宅でご飯食べる時もいつもお祈りをして、聖書を読んで、たまには歌うこともあった。ミッション系の幼稚園に通って、後にボーイスカウトにも入って毎週教会に通ってましたんで、それこそいっぱいあるアヴェ・マリアを聞いて、もちろんその時は多分何のアヴェ・マリアかなんて意識してないと思うんですけど、聖歌と共にアヴェ・マリアに触れる機会もあったんですね。今まで自分にとっては、母に教わったピアノが一番の自分のルーツだと思っていたんですが、今回15周年を迎えて『ああ、教会音楽が自分のルーツだったんだな』っていうことに気づいたんです。それがすごく大きな気づきだったと言うか、スッと腑に落ちたと言うか。なんかちょっと引っかかってきたことでもあったんですけど、それがしっかり自分の体の中に染み込んできたという感じですね」
ありとあらゆる意味でSINSKEさんが「アヴェ・マリア」に取り組むのは運命のようなものだったんですね。
アルバムでは同じ「アヴェ・マリア」をモチーフに世界中にこれだけ多彩な表現があることに驚かされます。
俗に「3大アヴェ・マリア」と呼ばれる有名なシューベルト、グノー、カッチーニのアヴェ・マリア。可愛らしいアヴェ・マリアは実はモーツァルトによるもの。シャルル・アズナブールにタンゴの革命児ピアソラの作品も。
「たくさんの作品があって、泣く泣く落としたものもありましたね。その中でもまずは『マリンバっていい音』ということが大事だったんですよね。
次に『全部アヴェ・マリア』っていう驚き。 いろんな要素があっていいと思っていて『このアヴェ・マリア全然知らないけど綺麗』っていう驚きでもいいし、そういうどんな人にアルバムを渡しても、耳を塞ぐ前に何らかの感想がちゃんと返ってくるような作品、というのは一番気をつけてました。
だから無名な曲でも素敵なものは入れましたしあたりにはすごく苦心しながらバランスと言うか、アヴェ・マリアのファンのマニアな方にも届けたいし、何も知らないけどかけてみたらきれいな曲だったっていうところもすごく大事にしたいっていうところが一番苦心した部分ですよね」
そんな苦心の末にできあがったアルバムは、とても美しくマリンバの澄んだ音色に身を委ねるように楽しめる一枚となりました。
「やっぱりどうしてもゆったりとした少し暗いものが多いので、ちょっと悲しいアルバムになりそうだなというところを、どうやって綺麗だなって方向に持っていくかっていうところを含めてかなり考えましたね。曲の並びも順番もそういう苦心して考えましたので、まずはアルバムを手にとってCDで最初から聞いてほしいですね」
アルバムには盟友とも言える尺八の藤原道山さん、ピアノの広田圭美さん、ヴォーカルに谷本綾香さん、パーカッションにnotchさん、そしてマリンバ奏者服部恵さんが参加しています。
そして、3月に福岡で行われるコンサートでは広田圭美さん(ピアノ)、服部恵さん(マリンバ)そして藤原道山さんをスペシャルゲストに迎えての編成で行われる予定です。
SINSKEデビュー15周年記念マリンバコンサート「Prays AveMaria」
2019年 3月 14日(木)福岡シンフォニーホール
開場 18:30/開演 19:00
「まずはアルバムで聞いていただいて、そしてこのコンサートではあのアルバムで鳴ってる音があのシンフォニーホールでどんな響きになって上から降りてくるんだろうねって、それ一番気にしてるのは僕なんですけど(笑)。 客席で聞きたい!っていう思いはすごくありますよねも無理なんですけどね(笑)」
服部さんと2つのマリンバの共演も楽しみですね。
「今回はマリンバデュオって見た目も含めてサウンドも2倍あるわけですから、マリンバの魅力が2倍に広がっていくようなイメージを持っていただけると壮大なスケールが想像していただけるんじゃないでしょうか」
もうひとつ注目は、今回はA席については学生さんは無料なんですね(S席は1,500円)。ここにもSINSKEさんの若い人たちへの思いが込められていました。
「もともとマリンバを始めたきっかけというのは、最高の音を聞いて感動したからなんですね。それがなかったらきっとマリンバを始めていなかったと思うんです。だから少しでもこの機会に、この最高のコンサートホールで、最高になるであろうマリンバの音を聞いていただきたいということです。学生の方にはもうふるっていらしていただきたいと思ってますので、是非是非よろしくお願いいたします。」
本当に隅々までSINSKEさんの思いがあふれる今回のコンサートもぜひ生でみたいです。
そんなところで今回は時間切れ。
まだまだ続くSINSKEさんの音解。次回もお迎えしてさらにSINSKEさんの音世界を紐解いていただきましょう。
どうぞお楽しみに。
SINSKE OFFICIAL WEB SITE (外部リンク)
次回1月 26日は引き続きSINSKEさんをお迎えしてお送りします。どうぞお楽しみに。