12月29日のゲストは、THE BAWDIESのROYさんでした。

  • 投稿日:
  • by

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちんです。

今年最後を締めくくるゲストはTHE BAWDIESのROYさん。 #THE_BAWDIES #thebawdies

結成15周年、およびメジャーデビュー10周年目。
メンバーのほとんどは小学校からの幼馴染。最後に入ったTAXMANさんは高校生からの付き合い。しかもバンドではなくバスケットボール部仲間で、バンドとして結成してからは不動のメンバーで15年。音楽はブレること無く英語詞のロックンロールバンド。

どれもこれも個性的なバンドのワイルドな唯一無二のボーカリストは、柔らかにスタジオにやってきました。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


そんなROYさんがピックアップしたドライブミュージックは、いきなりテンション上がるソウルフルなCHRIS FARLOWE & THE THUNDERBERDSの「Air Travel」から

「いやなんかもう僕はドライブ行くときはこの曲聴きたくなるんですね。
1960年ぐらいにミックジャガーがプロデュースしたりして少しづつ名を上げてきたシンガーなんですが 60年台中期くらいになってくるとブラックミュージックがやっぱイギリスの方で流行ってくるんですね。それでブラックミュージックの影響を受けた俗にいう『クロっぽい』て言われるシンガーたちが、少しづつスモール・フェイセズとかスティーヴ・ウィンウッドとかアニマルズとかまあ色んなシンガーがいる中で、もっとも黒っぽい、もっとも本物っぽいんじゃないかって言われてた一人がこのCHRIS FARLOWEなんですね」

のっけからこの調子。ROYさんはこのあたりの音楽に関しては熱心なコレクターでもあります。

「まあ僕も彼らと同じように、当時のアメリカのブラックミュージックなんかを聞いてこうなりたいっていう憧れからシンガーをやってたりするので、『同士』と言うか。僕の一つのお手本ですね

そんなTHE BAWDIESは、デビュー10周年目、結成15周年目を迎えた今年は、4月にインディーズ時代の楽曲から、書き下ろしの新曲まで、バンドの軌跡を完全収録した、初のベスト盤『THIS IS THE BEST』をリリースしました。

「初めてベスト盤になったことによって改めて実感するというか、こんな曲書いてたんだなあという気持ちもありますし、自分たちが第一線ででしっかり音楽を届けられるような位置で10年間走り続けてこられたっていうのは自信につながるというか。
僕ら日本のポピュラーミュージックの中でよくあるスタイルの音楽では無いですからね。

本当に単純に全て英詞だったりということもありますし、根付いているかと言われるとそうではない音楽がロックンロールだと思うので、そういうものだけを武器に10年間やってこれたっていうのは、がんばったなと思いますね」

言葉にある通り 確かに同じくロックンロールを奏でるバンドが決して順風満帆ではない中で、THE BAWDIESのロックンロールだけがメジャーの世界で10年間途切れること無く続けてきたことは奇跡のようにも思います。

だけどそれは決して偶然ではない。そこにはたくさんの苦労や考えや秘密があるのでは。

そこで直球の質問を投げてみました。
THE BAWDIESだけがブレずに自分たちの音楽を追求し続けて、なおかついメジャーで活躍し続けてられているのはなぜだと思いますか?

「そうですね。僕らは本当に50年代60年代のルーツミュージックに憧れていますし、なりたいっていう思いが強いですね。ただ、こういう音楽は閉鎖的にになってしまう可能性があるんですね。知らない人には全く届かないってこともあるんで。僕らはあの音楽を『そのまま届ける』のでなくて、『あの熱量を継承しながら現代の音楽として伝えなければ』若い人たちが伝わっていかないと思うんですね。逆にそういった若い人たちにも、現在の音楽として伝えながらも、しっかりあの時代のロックンロールを好きな人達にも納得してもらうもの届けるってことやっぱ一番に考えてるってとこは大きいかなと思いますね」

過去への最大の愛と敬意を払いながら、あくまで今の音楽にしなければ意味はない。そしてROYさんには自分が感動して始めたソウルフルなロックンロールの熱量を、後の人々に伝えていきたいという強い意志、あるいは使命感のようなものを持っていることがよく分かります。

今回の『THIS IS THE BEST』はほぼ時系列通りに並んでいて、改めて聞くとまっすぐ一本道のようでいて、実は模索繰り返しつつ、幅広い音楽性を獲得することで常にフレッシュであることがわかると思います。

そして、来年1月17日の日本武道館公演がツアーファイナルとなる、全国47都道府県ツアーを開催中、そしてニューシングルも発売しました。本当に大忙しの一年でした。

「そうですもう今年は周年を祝おうということで、一年中お祭り騒ぎで行きましょう!ということだったので楽しかったですね」

音楽だけ聴くとストイックなイメージのTHE BAWDIESですが、ライブを初めて観るとみなさんきっと驚くはず。まさにお祭り騒ぎで楽しいMCに客席と一体となって騒ぐ極上のエンターテイメント空間です。 かなりギャップありますよね?

そういうと相合を崩して笑顔のROYさん「ちょっと真面目になっちゃうんですけどね」とライブについての考え方話し始めました。そして日本で英語詞のロックを貫くバンドに共通のよく言われる大きな疑問についても明快な答えをくれました。

「『ロックンロールを伝える時に、なんで英詞なんですか?』ってよく聞かれるんですね。
それは僕らが衝撃を受けたロックンロールってアメリカの音楽なんですよね。あの衝撃をそのまま皆に伝えたいって気持ちがやっぱり強いんですね。
もうひとつ、ロックンロールかつての歌詞を見てみても大したこと言ってないんですよ『あの子かわいいぜ』とか『たまんねえぜ』みたいな(笑)でも彼らから外されるエネルギー、メッセージってそこじゃないと思うんですよね。ブラックミュージックのやっぱり凄まじいバックボーンがあって、そこからみんなが楽しんで、みんなで前に進んで行こう!ってそういうエネルギーが宿ってる、その熱量を伝えたい。そして、みんなで転がって一体感、っていうあの熱量って日本でいうと、お祭りに近いと思うんですよね。
日本の皆さんって、やっぱり歌詞を大切にされると思うんです。すごいそれって重要なことで。でも逆にそれがいっぱいあるがゆえに感じたままに体が動いてしまうっていう文化が、少し忘れられがちだなとも思うんです。

でも思い出してください日本の皆さんと。お祭りがあるじゃないですか。ワッショイと言ってるあのグルーヴ、思わず口から出てしまう、そして体が動き出してしまう、ロックってそこじゃないかなって。

言葉が入りすぎてしまって、頭を経由して体が動き出すこの瞬発力を緩めたくないというのがあって。実は英語だろうが日本語だろうが関係ねーよ、とにかく感じたから体が勝手に動き出しちまうよっていうあの 祭りの喜びをロックンロールで思い出してくださいっていうのが僕らのメッセージなんです

どうです?
日本のバンドが英語で歌う理由を、ライブに対する考え方をここまで理路整然とお話してくれた方にはあまり出会ったことはありません。

そして、その音楽自体が持っている熱量や自分たちが受けた衝撃を日本の観客に伝えるためには馴染みもあるはずの「お祭り」の考えるよりまず体が動く感覚を思い出してほしいと。
さすが15年以上前から取り組んできたバンド。最近の「踊れるロック」より一段深く解釈して実践していることがよくわかります。そして、ステージのTHE BAWDIESはいつだって最高に楽しそうだということも重要ですね。


そんなTHE BAWDIESの音楽をさらに深く紐解くために、12月に発売されたばかりのニューシングル「HAPPY RAYS」について解説してもらいました。

「今回のタイミングとしましては、ベストアルバム出してそこでまぁ一回そのボウディーズの歴史をまとめて、そして新たなスタートを切って新章の始まりみたいなところがあるので、 チャレンジをしたいっていうところもあったんですね」

その言葉通り、またTHE BAWDIESの新しい一面を垣間見させれる、優しくてハッピーで多幸感あふれるナンバーとなっています。

「やっぱり、分かりやすく言うと今回初めてストリングスが入ってますね。そこが大きいんじゃないかなって思います。実はこの楽曲、前回の『NEW』ていうアルバムがあってその制作期間中に書いてたんですよ。でもあまりにもいいメロディーだと僕は感じたので『NEW』で出さなかったんですよ(笑)。取っといて、ここぞというタイミング出してやろうと思っていて。 で今回は新たな一歩目を切るというところでリリースしました」

今回のナンバーは確かに今までとは根本的に新しい点がいくつもあるように思います。
わかりやすいところでは、今回THE BAWDIESとしてははじめてのウェディングソングができたんじゃないかと。意外とこういうタイプはなかったような。

「僕らその楽曲の、それこそブラックミュージックの激しさとか強さみたいなものを出すことが多いんですけども、こういう優しい曲を書くときはブラックミュージック、ソウル、リズム&ブルースと言うよりもどっちというとブリティッシュ・ビートを意識することが多いですね。

こだわりとしては「UKロック」ではなくて「ブリティッシュ・ビート」(笑)。そのスタイルを継承していくものを作りたいって言う意識は強かったですね」

こうやって聞いていくとROYさんにとって「継承」が活動の非常に重要なテーマであることが感じられます。

「で種明かしになっちゃうんですが、ある晴れた朝にThe Whoの「Kids Are Alright」を聞いていたら無性に曲が書きたくなって。 イメージにあったのは、THE BAWDIESという鉄板にThe Whoの生肉を載せて、焼きながら Elvis Costello のスパイスをかけてというのが今回のテーマだったんです」

おう、大変な種明かし。そういえばそんな気も...
そしてここからが今回の目に見えないTHE BAWDIESの大きなチャレンジでした。

「特に今回さらにやっぱ、ブリティッシュ・ビートを日本のポップスとしてみんなに届けるって事がやっぱり必要かなと思っていて、僕ら自身が日本のポップスのど真ん中にある音楽をやってるかといったら全くそうではない。でも、しっかりそのど真ん中の人たちに届かせるために今回どうしようかって考えた時に、今までは同じアーティスト目線で一緒にできる人たちにプロデュースをお願いしてたりして日本のJ-POPシーンに外からから攻め込むみたいなことをやって来たんですね。それを今回は、逆にあえて日本のポップスシーンのど真ん中で活動している人と手を組むっての面白いんじゃないかなと言うことで、いきものがかりなどをプロデュースしてる本間さん(本間昭光)と手を組ませてもらったんですけど、 やっぱりねコード進行の一つの使い方とかで、あ、こんなに変わるのかっていう。違うんですよねえ」

決してマニアの音楽に留まらないために重ねてきた様々な工夫。今回はついにど真ん中に飛び込んでみたわけですね。そしてそれはバンドにとって新しい扉を開くことになりました。

「本当に本間さんに今回お世話になったなったのはストリングスですよね。曲を作った時に僕の頭の中でストリングスをつけたいって思ってたんですけど、自分たち自身がストリングスを組、やっぱそのプロフェッショナルである本間さんにお願いして、この楽曲にこういう形に乗せてみようかみたいなことを言ってくださって、どんどんどんどん形が変化していったんですね」

自分たち以外の力を借りながら、バンド自身も新しい刺激と学習を加えていく。それだけで、音楽はグッと変わっていくものなんですね。

そんな積み重ねでまた新しいTHE BAWDIESの魅力が一つ花開きました。
なるほど。ここまで一つの曲に自分たちのメッセージや愛のみならず、どうやってこの国の音楽シーンに勝負し続けることができるのかを考えに考えていることに驚きです。そして、だからいつまでも第一線でフレッシュであり続けることができるんですね。

福岡でのライブはすでに大盛況のうちに終了しましたが、このあとは3度めとなる武道館のライブが控えています。


日本武道館「Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019」
2019年1月17日(木)
※THE BAWDIES OFFICIAL WEB (外部リンク)

THE BAWDIESにとって日本武道館とは、特別な思い入れがあるように思います。

「そうなんですよ。僕らにとって66年にビートルズがやってきて初めて日本でロックの歴史が始まった聖地なのですよね。僕らはその日本でロックンロールを根付かせたいと思ってるわけなんで、そんなバンドにとって、あそこに立てる喜びは格別。その喜びの音を味わっていただきたいなと思います」

それは上のポスターのビジュアルでもわかりますね。よく見ると細部の細部までビートルズ来日時の有名な写真の完コピです。初回限定盤では遊び心たっぷりの上と同じハッピ付きCDもラインナップされていましたね。


ちなみにスタジオでのROYさんはステージのワイルドな声とは打って変わってマイルドで少し跳ねるようなトーンで、何を尋ねても瞬時に明確な答えをあふれるような愛情を交えて答えてくれます。そしてその口からは、自分たちの音楽をブレること無く第一線で続けてこれたことが、強い意志と続けるための努力と工夫のたまもので成し遂げられたことを、明快に語ってくれました。

最後にROYさんからみなさんに、かなり愉快なメッセージを。

「今年一年ですね、結成15周年目そして、メジャーで10周年目ということで活動させていただいたんですけど、実はですね、来年2019年が満結成15周年、メジャーで満10周年なので実は来年が周年なんですね(笑)。なので2年連続で周年をやるというちょっと詐欺めいた活動なんですが(笑)、2019年こそお祭り騒ぎで行きたい。だから日本武道館は周年のスタートなんです」

そう、THE BAWDIESのロックンロール=お祭りは来年も続く。
こんなにうれしいことってあります?

  

今年も一年、音解をご愛聴いただきありがとうございました。
来年も素晴らしいアーティストのお話しをお届けします。どうぞよろしくおねがいします。

よいお年を。

  

次週、来年1月5日は、上妻宏光さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。