12月15日のゲストは、引き続き大黒摩季さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは先週に引き続き大黒摩季さん。 #大黒摩季

先週も錚々たるメンバーが参加して8年ぶりにリリースされたニューアルバム『MUSIC MUSCLE』のお話しを中心に、パワフルに楽しくお送りしましたが今週はさらに深く、大黒摩季の音楽の裏側を覗いてみたいと思います。

今週は私たちが知ることができない、一つの楽曲がゼロから完成するまでの課程を聞くことができました。これって結構貴重ですよ。


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今日はドライブミュージックも『MUSIC MUSCLE』からまさにぴったり『CRASH & RUSH』をチョイス。しかも、とってもかっこいいカリフォルニアの思い出を披露してくれました。

「アガりますよね。これ若い頃に初めて行ったアメリカ一人旅の道のりで、カリフォルニアのドライブロードで行ったところを全部書いているんですね。レンタカーを借りて、その頃はブライアンアダムスが「♪I need somebody」とか流行ってましたねえ。エアロもボンジョビもきてましたね。途中途中でフリーウェイで流しながら。
あの頃マスタングを借りてオープンカーで髪ぼうぼうになりながら、髪は縛ったほうがいいですね。前見えなくなります、帽子も2秒で飛びます(笑)。それで私はビバリーヒルズホテル、ホテル・カリフォルニアのところに行って『ホテル・カリフォルニア』を流しながら、いいなあと思って楽しみにしてたら、工事中で!ブルーシートで真ブルーだったんです(笑)。これはもう一回来いってことかな?みたいな。そう思うしかなかったね悲しくて」

嬉し悲しのアメリカ一人旅。

さて、今日はその待望のアルバム『MUSIC MUSCLE』から、一つの曲をグッとさらに深掘りして、大黒摩季の音世界を紐解いていきましょう。

今回のアルバムは2枚組のボリュームで、これぞ大黒節のアガる「FIGHTING MUSCLE」、大人の癒し、いえ赦しの「RESTING MUSCLE」の2枚に別れたこのアルバム。

そんなアルバムから一曲、ピックアップしてくれたのはアルバムの中でもとりわけゆったりと大人の雰囲気の「Naturally feat. DIMENSION & KENNY from SPiCYSOL 」。

だけどこれ元気サイドの「FIGHTING MUSCLE」の方の7曲目に収められています。

「『FIGHTING MUSCLE』濃過ぎて途中で疲れてきたみたいな話になって(笑) ちょっと休憩しよう、外出よう一瞬、やっぱ海だ!て話になって」

なんとそこから曲作りがスタート。

ここではゼロから楽曲が出来上がる過程を聞くことができました。

「まず、海系サウンドをつくろうってことで、DIMENTIONの小野塚晃くんに『横でピアノ弾いてプリプロ(仮録音、準備)しようよ』っていって。
『曲は?』『今から』『本当にか!」『ほんとにね』みたいな。とりあえずイントロとか弾いてもらって『いいねソレソレソレ』みたいな感じでやってて。それで、晃くんが、もちょもちょやってる間に女子社員と『ねえ、海に行くなら誰と行きたい?』なんて女子トークしてて

この女子トーク、実は大切な歌詞作りの準備です。

「『どうするどうする年上?年下?』具体的にみんなでしてた。すると『やっぱり大事にされたいし、でもクドイの嫌だしやっぱちょっと年下かな?』なんて楽しい妄想トークしてて。 今回オリンピック決まったし千葉チームと最近仲良くしてるから一宮でも行っとく?そういう感じで楽しみながらまず歌詞をブワーッと打っちゃった」


歌詞があらかた見えたところで再び楽曲作りです。

「『晃くんこういうことだから風景』って歌詞渡して、『わかったAORだね?』『海寄りのAORね』。それでホントに古き良き80年台のAORだね。70年代じゃなくて 『George Benson とか出てきてもいいよ』なんていいながら。 ちょこちょこオーダーが入りつつ」


こうして80年代風AORサウンドと歌詞が見えてきました。
さらに意外な場所で今回のフィーチャリングメンバーと出会います。

「仲間たちと波乗り行ってたら、SPiCYSOLのKENNYとAKUNが来てたのね。あたしその時初対面。ぶっちゃけ光永亮太だけども、亮太と DJ TSUYOSHIくんが連れてきたのよ。そん時レゲエのWATARUくんもいて、WATARU、最近私のライフセーバーなんですけど(笑)。でWATARUが『姐さん、今度新譜出るんでもらってもらってもいいですか』って持ってきて、そしたらSPiCYSOLの二人も『ぜひ聞いてくださいよ!』って言ってきて。
で、帰り。じゃあもらったCD聞こうかって。渋滞が激しかったんですよ。で、WATARU、SPiCYSOL、WATARU、WATARU、SPiCYSOL、SPiCYSOLみたいな9回しくらいみんなのを聞いたんですよ(笑)。
そこで『あー』と 年下いた!それでスタジオで『あたしKENNYを呼びたい』海声をそのまま呼んだほうがわかりやすいよ。つて」

でも多くのアーティストとつながりのある大黒さん。例えば海といえば、付き合いも長いSkoop On SomebodyのボーカリストTAKEさんなんかピッタリのような。

「そうも言われたんだけど、TAKEは同い年だから。さっきの女子会の規格から外れるんで!
年下で初初しい声がいいね。TAKEに包まれたいときもあるんですけど今回はKENNYだと。
そしたらKENNYがすごい喜んでくれて『行きますー』って言ってくれて」

そこで新たなボーカルを決めると、また作曲の小野塚晃さんにさらに追加オーダーです。

「『晃くんすみません...』って『 急激に2番で転調してもいいですか?』『えーーーー!』って(笑)。『戻ったときにも戻りやすいやつで、EフラットメジャーからAフラットメジャー、4度かなあ』なんていいながら『もう、相変わらずムチャ振りだねえ』とかいいながら。
また晃くんの転調の仕方がね、徐々にしないでパックリねえ2拍で転調しちゃったんだねえ。帰り道はまたスルーっと私のキーに戻っていくんだけど。 やっぱりね匠がやるとね秀逸ですよねそういうところ」


さてそうやってやっと出来上がった楽曲とKENNYさんを従えてレコーディングです。
メンバーそれぞれが超テクニックの集団であるDIMENSIONですが、ここでは余白を活かしたゆったりとした演奏がちょっと意外です。

「『弾かないで』って言ったから。たくさん弾かないで、音でフロウしたいからってね。 あの人達ぐらいになるとスーパー引き算ができるから。私も最近やっと出来るになったんですけど『歌わない伝える』歌わないところをつくるっていうね」

大人の引き算の美学です。このあたりはさらに具体的にお聞きしました。

「イントロの『ヒョーン』ところもあるんですね、そこも最初はピルピル吹いてたのね。だから『ううん。こんなにピルピル吹く人が海岸にいたら気持ち悪いでしょ』つって(笑)遠くから聞こえてこようよって。 ちゃんとリバーブ品のいいやつかけるからってね。

わたしたちそういう一言で、あのレベルの人達はああせいこうせい言わなくて良くなるんですよ。その後はもう放っときで。『そろそろどうだい爺さん?』っていくと『おう、婆さん良くできだぞ』ってかんじで『聞いてみ?』『お。ここの余計なところは痺れるねえ』リフがダブってるんだけどね。『すみません、ツインギターをこの曲で連れてくる予算はないんですけど...』『でも、そこはお愛想でしょ!』っていって。『ここはkatsuo(勝田一樹)には譲らんよ」とかいって増崎さんがオブリ(裏メロディ)を入れて、そしたらあそこは阿吽だからその前後にkatsuoちゃんが絡んできたり。
で、晃くんのエレピは最初から二人に演らせるつもりでほとんど余計なことをしてないという」

レコーディングの風景が浮かぶよう。一流のプロの阿吽の呼吸で高度な演奏から予算の管理まで(!)

一方、歌うKENNYさんにとってはなかなかハードルが高かったようです。

「ちょっと大変だったね。まだ経験してない2拍3連、4拍3連っていうその3連のリズムの中抜きとかね。(一節歌ってみせる)こんなふうに隙間がベッタリしないで、波が弾けてる感じに聞こえると思うんですね。」

ここでその微妙な違いについて大黒さんが実際に歌って比較をしてくれました。

「KENNYは『おしりが引き締まります』って言ってましたね(笑)。だけど、あの子は天才的でシャープに『われは隙間を入れたぞえ』みたいにならないんですね。体の中に自分のリズムがあるからま、あるいリズムがあるからちゃんと隙間で休んでいるのにスラーがかかってて(音と音がなめらかに繋がっている)うん、コイツやっぱ天才と思いましたね。

幼いハスキーがたまらない好物でしてね。あの子に『夢中になれば時は止まるよ』って言ってほしかったの。あの声で」

大人の時が止まらないのはそのものに夢中になってなくて散漫で、あれもイライラこれもイライラ、いろんな前後周りを気にしすぎてるから。仕事だって夢中になれば楽しいのに。苦痛にしてしまってるのはその散漫な気持ちだと思うんですよ。

それをあたしに言われると説教臭くなっちゃうのでKENNYに言わせたかったの。そういうのを海で言われると、ハイすみませんてなるんじゃないですか」


そうしてついに楽曲は完成しました。
DIMENTIONが奏でるちょっと懐かしくて爽やかな潮風も感じそうなAORサウンドに乗せて、大黒摩季さんのボーカルとKENNYさんの甘くはスキーな声が心地よい極上のメロウ・チューンができあがりました。
一つの曲がゼロから出来上がるまでこんなにドラマティックなドラマが色々あるとは。改めて聞くとまた全く違う感慨が浮かびそうですね。

そういうつもりで次聞いてごらん。そしたら溶けるから。かさついたハートにうるおいをだね」

そういって、大黒さんご満悦の笑顔です。

そんな一つ一つ労力と思いのこもった楽曲が27曲も詰まったアルバムを携えてのライブも、とても楽しみです。


MAKI OHGURO MUSIC MUSCLE TOUR 2019
5月6日(祝月)福岡県福岡市民会館 大ホール
開場:17:00 / 開演:17:30
5月18日(土)広島県広島上野学園ホール
開場:17:00 / 開演:17:30


とりあえず水分とウィダーinゼリーなんか持ってきた方がいいかもしれませんねバテますよ(笑)。テニスコートに行くくらいの気持ちで。着替え持っていったほうがいいような気がします」

2週に渡ってお届けした大黒摩季さんの音解。

多くの人の心に残るパワフルで力強い楽曲やメッセージ。そこにはプロの音楽家としての多くの技術と支える多くのミュージシャンとの信頼関係と努力、そしてなにより強い思いがすべて集まってできることがよくわかりました。

スタジオの大黒さんは、楽しいお話をたっぷり交えながら私たちをリラックスさせて、気がつくと語るべき音楽についてスッと私たちの心に届けてくれまいた。素敵な笑顔と細やかな気遣い。本当に素敵な方でした。

「また呼んでください!」

最後にそう笑顔で言ってくれた大黒摩季さん。
次にお迎えする日がまた楽しみになりました。

  

大黒摩季 公式 WEB SITE (外部リンク)
次週、12月22日は、中村中さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。