毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。
今日のゲストは小坂忠さん。 #小坂忠
1966年にグループサウンズの「ザ・フローラル」メンバーとしてデビュー。
以降も伝説の「はっぴいえんど」の前身となる「エイプリルフール」やソロアーティストとして、日本のR&B、ゴスペル、ポップスの礎を築いて、今も走り続ける小坂さん。
そんな音楽界の重鎮は、軽やかにやってきました。
自らピックアップしたドライブミュージック、ビル・ウィザースの『ラブリー・デイ』を聴きつつ、よく通る低い声で「ワクワクするでしょ。朝気分が悪くてもこれかけるとね、上がるんですよ」と微笑む小坂さん。
とても素敵な大人の音解の始まりでした。
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そんな小坂さん。今年3月にビルボードライブで、R&Bをいち早く取り入れた代表作にして70年代ロックの名盤中の名盤『HORO』の全曲再現ライブが行われました。
そして、そのライブをまるごと収録したライブ盤『HORO 2018 Special Live』が8月にリリースされました。
「去年、ちょっと大病患ってそれで入院生活してたんだけども、元気になって歌えるんだったら何歌おうかなと色々考えてたわけ。それで僕のボーカルスタイルの原点っていうのが、やっぱこのアルバムなんですよ。だからもう一度このアルバムで僕の原点に帰る、そういうライブをやりたいなということで」
1975年に発表された『HORO』は、細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆のティン・パン・アレーのメンバーに加え矢野顕子、吉田美奈子、山下達郎、大貫妙子、ストリングス&ホーン・アレンジ矢野誠が参加して当時の邦楽シーンに衝撃をもたらした作品です。
今回収録された『HORO 2018 Special Live』は鈴木茂、小原礼、Dr.kyOn、屋敷豪太、斎藤有太、Aisaといった再び豪華なアーティストでオリジナルのアルバム通り曲順もそのままに再現されました。
「多分他の方もそうだと思うんだけど、75年に出してからあのアルバム通りにやったライブなんてないんですよ」
今は音楽もシャッフルできる時代。
「昔のアナログ盤っていうのはA面が終わったらB面にひっくり返さないといけない。そういうブレイクの時間もあったし、ああいうのが大事だったんですけどね」そう言って少し複雑な表情で微笑みました。
小坂さんのMCも楽しいこのアルバム。そんなお話しを聞いて改めて耳を傾けると1曲目から順番にやる意味も理解できますね。
「初めての試みだったけど、でもやって面白かったですよ。 でも、A面最初の「HORO」なんかをね、僕が出てくるタイミングをイントロにプラスしたりとか。 だからアルバム完全に再現じゃなくて、ま、ライブにアレンジしてってかんじですね」
小坂忠さんの華々しいいつくつもの活躍と作品の中でも「HORO」は特別な作品。
かつて「HORO」は2010年に16chのマルチトラックが発見され、ボーカルだけをレコーディングし直した『HORO2010』としても発売されました。
「75年の元のテープが出てきたのね。それを聞いてたら歌いたくなっちゃって。 後でメンバーにも送ったんですけども、みんなからヒンシュクでした。なんだよ一人だけズルいなって(笑)」
そして今回の再現ライブは鈴木茂さんがバンマスとして指揮をとり素晴らしいメンバーが集まりました。
「病院に入っている時に、茂こういう風にやってくんないって電話したんですよ。すぐ彼、OKしてくれて。今回、ティンパンの生き残りは茂だけなんですけど、やっぱりみんないいミュージシャンで。例えば屋敷豪太くんのドラムとかやっぱり彼のビート感ですね。みんな気持ちいミュージシャンです。家族みたいな仲間なんですけど」
と、嬉しそうに笑います。
そして、そんなアルバムの中でも小坂忠さんの代表作中の代表作「しらけちまうぜ」について、小坂さんに改めて今回の聞き所を話していただきました。すると意外なエピソードが。
「これはもともと『しらけちまうぜ』って曲じゃなかったんですよ。 今聞いてもらってるのは曲が細野くん(細野晴臣)で詞が松本くん(松本隆)なんだけど、でも最初はね、詞も曲も細野くんだったの」
え!そうだったんですか?
「うん。でその時のタイトルは『ビビディバビディブー』(笑)。
曲がいい感じだったんで、レコード会社はコレをシングルにしたいと。だけどシングルにするのに『ビビディバビディブー』はなあ(笑)ってことになってね。それで、じゃあ詞をなんとかしようかってことで松本に白羽の矢が立ったんですよ。それでできたのがこの『しらけちまうぜ』です」
『ビビディバビディブー』だったら果たして歴史に残ったかどうか。思わず笑ってしまいました。
「松本も大したもんでしょ。最初からこうなってた、みたいな詞を書いてね。しかも『しらけちまうぜ』なんてフレーズ。おしゃれなやつですよ」と小坂さんも笑います。
さらに現在歌うにあたってもうひとつ驚きの変更点を披露してくれました。
「もうひとつ深掘りをするとね。これ75年の『HORO』ではキーがFなんですよ。でもこのライブアルバムではGで歌ってるの」
ということはキーが上がっているんですか?一般的には歳とともにキーは落ちるなんて言われますが、そのわけは?
「ふふ。ギター弾きやすいから(爆笑)単純な理由なんだけどね。」とニヤリと笑って「僕ね幸いなことにキーが落ちないんですよ。 だから昔より高いキーで歌えるの」
素晴らしい喉。実際今回のアルバムでは驚くような伸びやかな小坂さんのボーカルを確認することができます。
「ま、というのがこれのききどころかな。(爆笑)」
その後もこの名曲は今に至るまで多くの人にカバーされ続けています。
「まあ、歌ってて気持ちいいですよね」
今回の『HORO 2018 Special Live』で聞ける「しらけちまうぜ」は、現在第一線のミュージシャンにより見事に今の空気に似合うバージョンになっています。
「でね、11月の26日にね、ティンパンと一緒にやったんですよ」
先日、11月26日には一夜限りのプレミアムコンサートとして、今回の再現ライブに参加したメンバーに加え、尾崎亜美、さかいゆう 、高橋幸宏、田島貴男、Char 、BEGIN 、槇原敬之、矢野顕子 、後藤次利、吉田美奈子そして荒井由実(!)などなど列挙しきれぬほどの、世代を超えた新旧の一流アーティストが揃いました。
「ま、みなさんこの『HORO』ってアルバムで刺激を受けたミュージシャンって感じで参加してくれたんですけどね。僕が18の時に音楽で仕事を始めて。その時ってね、自分の二世代上の人たちと一緒の音楽ができるって想像つかなかったの。だけども今それができるんですよ。だからホントに変わったと思う」
だけど、そんな時代を切り開いたのは他でもない小坂さんの世代のアーティストさんなのでは。
そういうと、ひたすら照れ笑いをすする小坂さんでした。
一つのアルバム、一つの曲。
それが時代を越えて大きく再び花開いた感のある今回のライブとアルバム。
小坂さんのお話しを聞いた上で改めてまた聞くと、歴史とその上での古さどころか、まさに今の音楽としての新鮮な驚きがありますね。
今回お迎えした小坂さんは「いい声」でそんなエピソードの数々を時折思い出しつつ、時に子供のような無邪気な笑顔でたっぷりにユーモアを交えながらいろんなお話しをしてくれました。
まさに生き様をそのままぶつけたようなライブとアルバムを経て、来年はどんな年にしたいですか?
「これからどうなっていくんですかね。だけどね、歌える限りは歌っていきたいと思ってますんで、来年もがんばりますよ」と、嬉しいお答えをしてくれました。
最後にリスナーの皆さんへメッセージ。
「どこかで見かけたら聴きにきてくださいね」
そうやってにっこり笑った小坂さん。
その顔は今も走り続けている最前線の充実感に溢れているような気がします。ですよね?
chu kosaka web site ? 小坂忠のオフィシャルサイト(外部リンク)
次週、12月8日は大黒摩季さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。