11月10日のゲストは the pillows 山中さわおさんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは来年の結成30周年に向けてアニバーサリーイヤーに突入。the pillowsの山中さわおさんです。 #thepillows #ピロウズ

カーディガンにプリントT、デニム(愛用はLeeだとか)にサングラスは山中さんのおなじみのスタイル。サングラスはご自身のブランドのオリジナル?でしょうか。そんないつものスタイルでスススっと入ってきた山中さん。

今日はそんなthe pillowsの時にオルタナ、そしてキャリアを重ねた上で再び削ぎ落とされたシンプルなロックンロールへと向かう音楽の秘密を語っていただけるのでは?と期待していたのですが、それは良い意味で裏切られて、かなり興味深い音作りの秘密までお話してくれました。

 

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
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まず山中さんがセレクトした今日のドライビングミュージックは、ロス出身の5人組バンド、Grouploveの「Spun」から。これとても気持ちいいですね。

「日本の音楽だと歌詞に『車』って入ってるものを選んでしまうことが多くて単純すぎるので一旦置いといて(笑)。音楽的に考えると僕はドライブミュージックというと、やっぱりエイトビートのトツタツトタタってビートが気持ちいいですし、ローファイサウンドかハイファイかでいえば車の中だとエンジン音もあるのでハイファイサウンドの方が気持ちいいですかね」

この曲との出会いは?

「音楽が詳しい友達に教えてもらいました。あっはっはっはっは。
いろいろ僕のまわりに音楽を教えてくれる友達がいるので。この曲以外もね、本当にいい曲ばっかりでかなり好きなアーティストですね。ライブ行ったことないんですけどライブも見てみたい」

肩の力が抜けて良い空気感。音楽と同じく山中さんのお話もハイファイな感じで心地よいですね。

そんなthe pllowsも30周年です。

「そうなんです。なんか1年間ぐらいお誕生会を前倒しでおねだりする、というビジネスが流行ってるようで(笑)、それに乗っかっております」

30周年に向けて、過去にどのミュージシャンもやったことがないプロジェクトが始動するんだという噂も聞きましたが?

「そうなんですけど、まだ言うとなと言われていますんで、もやっとした受け答えになるんですけども。 直接的な音楽のことではないんだけども、ちょっとアニバーサリーならではの大きな遊びを一つやろうと思ってます」

情報解禁を心待ちにしておきましょう!

まずは記念の第1弾として、この9月に前作『NOOK IN THE BRAIN』より1年6か月ぶりに発売された通算22枚目のNEWアルバム『REBROADCAST』をリリースしました。

『ニンゲンドモ』『眩しい闇のメロディー』『BOON BOON ROCK』など全10曲を収録。初回限定盤には『ニンゲンドモ』のPVの他、アメリカツアーの映像が収録されています。

アルバムはキャッチーな「Rebroadcast」からスタートします。

「僕らのアルバムの曲名は必ずそのツアーの曲名になるんですね。
で前作、『NOOK IN THE BRAIN』の一曲目がちょっと変拍子のような曲だったので、今度は出るなりポップでキャッチーでイエーイ、ロックンロール楽しいぞ!みたいなそういう登場にしようかなと思って一曲目にしました」

バラエティに富んだピロウズらしいロックが並んでいますが、8曲目「Starry fandango」ではピコピコのファミコンのようなサウンドから始まります。ここにも今回のアルバムらしい仕掛けがあるようです。

「もともとこの音はトランペットでやりたかったんですね。ところがこの曲が持ってるキーというのが合わなくて、デモレコーディングで実際にトランペットで鳴らした時に出したい高い音が出なかったんですね。それで1オクターブ下の音にしてしまうと『パッパッパラ(↑)』ってやりたいのが、なんか『ブッブッブブー(↓)』って、ああやっぱちょっと違うやって(笑)。それでシンセでやってもなんかしっくりこなくて、結局、採用になったのは17,8年前のアルバムで『Thank you, my twilight』って曲がございまして、それで使った電子音なんですね。で『REBROADCAST』ってタイトルは再放送という意味なので、じゃあ、あえてまんま使っても結果的にはいいかっていうことで。その頃を知ってるファンにとっては『おお懐かしい!またこの音来るんだ』っていうそんな作りになっております。」

今回のアルバムは随所に、そんな自身の過去のアルバムで用いた音楽的トリックや、気に入っていたフレーズなどを確信犯的に使ったナンバーもたっぷりで、ファンにはたまらない一枚です。山中さん自身もアルバムとしての手応えもとてもあったようです。

「ありましたね。バランスがとっても良かったかなと。うん。常に僕は曲を作るときはポップでキャッチーな楽曲を作りたいと思ってるんですけども、そこに乗せる歌詞については割合、今回は曲調の割にはシリアスなテーマが多くて。20年、25年ぐらい応援してくれてるような人は『今度のアルバムすごいいいね』みたいなことを言っていただけるんで、なんか僕はシリアスな歌詞を書いた方がみんなにとってはしっくりくるんだなあってことを、なるほどと思いながら。まあロックンロール楽しいぜイエーイももちろん好きなんだけど、そうじゃない時には、本人にはわからない力を発揮してるのかなあ、なんて自己分析もあり、そんなところも含めて曲順も含めとてもバランスの良いアルバムができたなと思います」

そんな歌詞のお話も聞きながら、ここで香月さんアルバムを聞いていてちょっと気になった質問を。

山中さんは午前3時によく世の中を動き回ってるんですか

「そうなんですね。一曲目の『REBROADCAST』と『ニンゲンドモ』に「午前3時」が出てくるんですが、それいわれまで気づいてなかったんですね(笑)」

え!意識して使っているのかとばかり思ってました。

「普通そうですよね。ぼんやりしてました(笑)まあ 普通に自分の活動時間なのでフツーに出てしまってたっていうのと、音楽的には『REBROADCAST』の中の『♪うずくまってる午前3時』ってこの歌詞のリズムじゃないと気持ち良くないんですよね。『1時』じゃリズムが固い、『2時』だと字数が足りない、「3時」じゃないと英語の音節のように歌えて気持ちよくないんですね。 あ、『10時』はいいですね、でも場面が変わっちゃいますねダメですね(笑)」

そんな一曲ごとに語るべきポイントと思いが溢れているこのアルバムの中から、山中さん自ら一曲ピックアップして解説していただきました。その曲は、腰の座ったギターサウンドもかっこいいソリッドなロックナンバー3曲目の「ニンゲンドモ」です。

ところが一聴してシンプルなこの楽曲こそ、the pillowsらしいロックサウンドの真髄が隠されているのでした

「僕は今までのキャリアで99%、曲を先に書いて詞を後からその乗せるというスタイルでソングライティングしてきたんですけども、この曲は珍しく歌詞を先に書いたんですね。それ、僕にとってはとても珍しいことなんです。それと並行してこの曲のギターのリフを考えていて。なんとなく僕の中では、本来シンセサイザーでやりそうなフレーズをギターで弾けたらどうなるだろう、と思って。コンピューターゲームのような『テレテッテレテッテッテー』っていうフレーズをあえてギターでやってみました。結果、歌が始まったらその曲の前半はほぼギタリストは何もしないんですね。鳴ってるのはドラムとベースと僕の低音の響きだけで作ってるんですけど、本当の本当にそれだけにすると、スカスカになっちゃうんですね。なのでこの曲では実は聴感上みんなの意識に残らないギターをうっすら入れてるんです。そんな風にみんなが聴感上意識してない音を、隠し味みたいにたくさんうっすら足していくんです 」

つまりフレーズでの工夫とともに、サウンドとして細かな部分に「意識に残らないギター」まで細かな工夫を施してあるわけですね。

「そういうのは結構大事で、割と勢いのあるロックロールみたいな曲も、僕ら一発でせーのでやってるのではなくて、すごい細く緻密に作っていくんですね。僕らの世代のバンドって『やっぱロックンロール一発録りっしょ!』みたいな感じでいやってると思われるんですけど、実はめちゃめちゃ細かくデリケートに組み立てていくんですね(笑)」

ちょっと意外。そこには山中さんなりの、30年サヴァイブし続けるロックバンドとしての2010年台なりのロックのあり方が見え隠れします。さらに言葉を続けます。

「それは結構CDを作る上では重要で、特に近頃はどちらかと言うとスピーカーで大きな音量で聞くというよりは、イヤホンやヘッドホンなどでリスニングする人が増えている印象があって、僕自身もそうなので、そのヘッドホンで聞いた時に楽しめる工夫が必要だなと思って作っていますね」

時代ごとに聞く環境を意識しながら常にサウンドの工夫をしているということですね。

「流行って意味の音楽では時代には合わせないんですけど、僕らの音楽を聴く人の状況のことはやっぱり気にしますね

ここまでで、すでに「せーの!」ではないロックサウンドの裏側を垣間見ることができましたが、実はこの曲1曲の中にはまだまだ秘密がたくさん隠されています。

たとえば、このナンバーの軸となるギターの音色でさえ。

「ギターなどを録り方もですね、みんなが聞いてる音では録ってないんですね。迫力のある『ジャカジャーン』って音をそのまま録るよりは、結構丸めの音とかもうちょっと柔らかい音で録るんですね。それをミックスで、イコライザーを何種類か使って耳に痛いポイント、3kHzぐらいが耳に痛いのでカットして、でも4kHzはあげると気持ちいいんですね。その撮った音に対して4kHz、8kHzをグッとついてやると結果的に汚い音ではないけどすごく分離の良い本来のロックンロール的な「ジャカジャーン」の印象を残しつつ、とてもそのドラムとベースと歌のバランスが良い音になります。だから実際レコーディングで演奏してる時間ってのはそんなにかからないんですけど、音決めに時間がかかるんですよね。だからね。せーの!でロックンロール!じゃ全然ないっていう(笑) すごく神経質に作ってるっていう、しかも何回もやり直す派っていう(笑)レコーディングに関しては男らしさ一切ないっす!

そう笑う山中さん。ライブで感じる「あの音」をヘッドフォンでも同様に鳴らすには、細かい細かい細部への詰めと工夫があればこそ、なのかもしれません。

実は実際にその曲を聞きながら、スタジオでは実際にLRの音を抜いて聴き比べて見るなんてことも実際にやったりしてたんですが、香月さんも納得。隠し味があると気づかないけども、無くなってみるとその物足りなさがハッキリわかるんですね。みなさんもぜひ。

そして、アルバムの発売に続いて、この秋から30周年記念の第2弾として、『REBROADCAST TOUR』がスタートします。

REBROADCAST TOUR

2019年02月11日 (月・祝)
広島 CLUB QUATTRO

open 17:15 / start 18:00
   
2019年02月17日 (日)
福岡 DRUM LOGOS

  open 17:15 / start 18:00



「新曲など『REBROADCAST』からもちろん全部やるんですが同じ頃に、アニメーションの「フリクリ」のサウンドトラックも出てるんですね、その中にもう新曲は2 曲入ってまして、アメリカツアーではやってきたんですけど、国内はまだやってないので披露したいと思います」

the pillowsがアメリカで受け入れられる契機となった伝説のアニメ「フリクリ」への参加。この度18年の時を越えて劇場版『フリクリ オルタナ』、『フリクリ プログレ』として復活。このタイミングはなにかの運命めいたところも感じられますね。

そんな新曲も聞ける今回のライブ、ファンならずともぜひ観てみたいではないですか。

そんなわけで、楽しくも本当に意外なお話がいっぱいだった今回の音解。

「なんか専門的な話をラジオをすると嫌われるかと思ってたのであんまりしたことなかったんですけど、楽しかったですね」

と山中さんにもご満足いただいたようです。 始終笑顔で余裕を持って想像もつかないような色んなお話をしてくれました。お話の随所に今の活動に充実感と自信を感じられ、そのお話には説得力が溢れいましたね。


最後にリスナーの皆さんに山中さんから一言です。

「はい。来年30周年ということでもっと頑張りたいなと思ってるんですが。こんな長いことやってる僕らがまたちょっとすごく自信持って自慢のアルバムができたので、その『REBROADCAST』を聞いていただいて、是非ライブに遊びに来て下さい」

山中さん、ありがとうございました!

the pillows official web site (外部リンク)

  

次週、11月17日は沖仁さんをお迎えします。どうぞお楽しみに!