9月22日のゲストは Aimerさんです。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちん。です。

今日のゲストは Aimerさん。 #Aimer

国内外問わず熱狂的なファンも多いAimerさん。
一度聞けば誰もが魅了するその声、人間の喜怒哀楽を赤裸々に、時に優しく描かれる詩世界、そして2011年のデビュー以降も一貫して支え続けるagehaspringsはじめとするコンポーザー陣の楽曲の魅力。

加えてデビュー以降、極めて限られた機会しかその姿を確認することはできません。ミステリアス。
そんなわけでこのブログも美しいジャケットでご紹介。

どんな方なんだろう?と期待と不安の入り混じったスタジオに登場したAimerさんはにこやか。当たり前ですけど放送中もそうでない時も楽しそうに音楽の話を語り、よく笑う。一方で音楽にかける情熱と深い考えには常人ならざるアーティストの姿を目のあたりにすることになりました。

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


今日のドライブミュージックは意外な選曲、アゲアゲの大ヒットナンバー、マーク・ロンソンの「Uptown Funk ft. Bruno Mars」。

「今年の夏に入ったファンクラブツアーでカバーした曲です。アンコールで、 しかも若干のフリつきで(笑)。ファンクラブツアーはずっと着席のみだったんですが、今回ははじめてのスタンディングだったので皆さんと一緒に盛り上がる瞬間が欲しいなと思って。ここぞとばかりに気持ちを持ち上げてくれる一曲をカバーしようと思ってこの曲を選びました」

ブルーノマーズは普段もよく聞いていて、来日公演も間近で観たそう。感想は大満足で自分も『少しでも近づけるようにがんばろう』と思ったとか。

そう、Aimerさんはすっごく真面目。というよりは、こと音楽に関わることに関しては本当にまっすぐだなと思うことが何度もありました。

そんなAimerさんの最新盤は今月5日に発売されたばかりの7周年を飾る15枚目のトリプルA面シングル「Black Bird / Tiny Dancers /思い出は奇麗で」です。

映画『累-かさね-』の主題歌となる『Black Bird』、アップテンポな『Tiny Dancers』、そして、今年6月の父の日に合わせて発表された『思い出は綺麗で』の3曲。

それぞれ違うタイプのナンバーですが一つの共通するテーマがあるそうです。

「それぞれの主人公がそれぞれに、小さな頃の思い出とか夢とかを支えにして今生きている、っていうのがテーマになっています。 色とか温度とかベクトは違うんですけど、そこは共通のものにしたいなと思いながら歌詞を書いていきました」

ちんは娘の父への温かくて切ない優しい優しい想いに溢れた「思い出は綺麗で」のMV(ミュージックビデオ)を観て思わず涙。この曲は2013年に発表された「今日から思い出」の楽曲とMVとつながっている印象です。

「この曲はMVも想定に入れて作り始めた曲で、もともと『今日から思い出(2013)』で、ただただ悲しい曲を作ってしまったものですから(笑)MVの方もアニメーションなんですけど悲しい内容になってしまって。結構ファンの方から『このMV悲しいですね』っていう声を頂いていて、気にもなっていたんです。今回の『思い出は綺麗で』で同じシリーズとしてある意味続編のようなMVを作って過去の『今日から思い出』のストーリーを救ってあげたい、という思いもありました

私達にしてみれば、どちらも素晴らしい楽曲なのですけど、2つの作品にはそんな経緯と思いがあったんですね。同時に2013年から現在までの間のAimerさんの内面の成長を感じるようなお話でもあります。

「『今日から思い出』の時は本当に反響がすごくて「どうしてこんなに救いようがないんだ」って(笑)。 今回はこの新しいミュージックビデオであのときの物語が救われたなと思います」

よかった、よかった。皆さんも2つのMVを見比べてみてはどうでしょう?

そして、このシングルの中でとりわけ注目されているのは映画主題歌でもある「Black Bird」でしょう。

この楽曲についてはAimerさん自身により深く紐解いていただきました。

最初は、映画サイドからオファーがあり、台本や原作を読み込んだ上で、作品の核と歌いたいものを考えながら詞を書いたと言います。

映画『累-かさね-』は土屋太鳳と芳根京子さんのダブル主演で、キスすると顔が入れ替わる不思議な口紅を手にした、女優である対象的な累とニナの美醜や優越感と劣等感、光と影といった人間の業、対立する概念を描いたもの。Aimerさんの「Black Bird」は映画の最後にすべてを包んでまとめるような役割で、見事に映画と一体となって全体の余韻を担っています。

「私もエンドロールで高まった気持ちが自分の声が、映画館で流れてきた瞬間にはちきれて、すごくボロボロと泣いてしまったんです。それくらい、やっぱりすごくエンドロールで流れるのを想像して作ったんですけど、それでもやっぱり自分で感動しちゃうものがありましたね」

映画を観て思うのは、この映画のテーマ自身が、デビュー以来、Aimerさんが取り組んできたテーマそのものではないですか?

「本当にその通りで、自分自身も特に歌詞を書く時には相反する、悲しみと喜びや嬉しさ悲しさとか、どちらか一方じゃなくてどちらも描きたいっていうのは自分のこだわり でもあったので、とてもシンパシーを感じました」

それはタイトルの「Black Bird」の意味にも現れています。

「一言で言っちゃうと簡単になってしまうんですけども、ある意味「劣等感」のようなもので。誰の心にもやっぱり他の誰かと比較して、誰かを羨んだりとか愛されたいって願う気持ち、そういうドロドロしたような部分が黒い鳥みたいに潜んでるんじゃないかなって言う部分からつけました」

また歌唱では類稀なるAimerさんの強いボーカルが聞く人の感情を揺さぶります。
そんな歌い方にも細かなこだわりがありました。

「そうですね。全体的なことでまずいえば、この曲のキーを決めるときにもう少し高くすることもできたんですけど、あえて低く。なんでかって言うとサビのパートでは言葉が詰まっていて、まくしたてるような形なんですけど、そこをあえてちょっと余裕があるキーにすることで、一つ一つの言葉が伝わることの方を優先して今回は作りました。」

キー一つにもそんな考えが。
もとより特徴あると言われるAimerさんの声ですが、ただ感情に任せたものではもちろんなく、息の成分の多い低い声と、透明感の高い高い声。その間に何段階かあって、まるで感情を乗せる繊細な楽器を扱うように使い分け、非常にコントロールされている印象があります。その印象は次のような説明にもハッキリ示されています。

「この曲ではミステリアスで不穏な雰囲気の楽曲なのでそれに合うような声色にしたいなと思って。ドスの効いたというか、ちょっと情念を込められるような声を意識しました。そして激しい曲なので言葉尻のアクセントをはっきりして意味をしっかり込めたいなんて思いもあったし、(二人の女性の映画なので)女性の艶やかさみたいなものを表現したいなと思って。なるべく男性の荒々しさというよりも、艶やかでいながら激しいっていう『うまい塩梅』で表現したいなと思って歌ってます」

ギターやドラムのように細かいテクニックをあまり語られないボーカリストですが、実は一音一音まで細かなこだわりとプロならではの繊細なコントロールの積み重ねだということがよくわかりますね。

ここでちょっと意地悪な質問かな?と思いつつ。
Aimerさんは自分の声のなかで「嫌いな声」ってあるんですか?

「すっごくあります。 簡単に言うならば「響いてない声」ががすごく嫌いで。んでも、まぁ、そんなに聞いてないよってよく言われるんですけど(笑)。 そのぐらい多分普通に聞いていたら分からないぐらいの微細な違いなんですけど、自分にとっては全然別人ぐらいの声の違いに聞こえる部分があります」

そういうやり直しって多いんですか?

「多いんですよ(ニッコリ)」

そんなこだわりを知って聞くと「Black Bird」がまた違う魅力を持って迫ってきますね。

色々なお話をしている間にすっかりお時間が来てしまいました。
楚々として落ち着いた雰囲気ではあるけれど、時々垣間見える素のAimerさんは、音楽、歌を心から愛していて、茶目っ気もあって素直に感情を示す魅力的な方です。相手の気持ちをどんどん前のめりにする、そんなところも数多くのアーティストからのラブコールが絶えない理由の一つかもしれませんね。

今回のシングルについてリスナーのみなさんへこんなメッセージいただきました。

「今日紐解いた内容を元にもう1回私のシングルを楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。今日は本当にありがとうございます」


来週も引き続きAimerさんをお迎えして、さらにAimerの音世界を紐解いていきましょう。

次回はAimerさんのライブについてもたっぷり伺いたいと思います。
そんなライブ、福岡、広島でも行われます。

『Aimer Hall Tour 18/19 "soleil et pluie"』

福岡公演は、11月3日(土)『福岡サンパレスホテル&ホール』、
広島公演が、翌11月4日(日)『広島文化学園HBGホール』


詳しくはAimerさんのWEBでご確認を。
Aimer Official Web Site (外部リンク)

次回も楽しみです。

 

次週、9月29日も引き続きAimerさんをお迎えしてお送りします。