毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。
今日のゲストはNothing's Carved In Stoneの村松拓さん。
エモーショナルなギター・サウンドと綿密なサウンドで魅了しつづけ、コンスタントにアルバム制作と精力的にライヴ活動を展開して今年10周年。
「まあすごい前向きなバンドなんで、みんな集まって曲作りましょうとか、もしくはツアーに回りましょうかってなことをずーっと続けてるバンドなんです」
そんな風にスラっと笑顔で語ってしまう村松さんですが、決して簡単なことではありません。
今日は10年のキャリアを重ねてもなお前進し、深化している音世界について伺うことができました。
この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→ FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)
まずは村松さんセレクトしたドライビングミュージック、ファウンテインズ・オブ・ウェインの『リーヴ・ザ・バイカー』でスタート。
「ファウンテインズ・オブ・ウェインものすごい大好きで最初からずっと聞いているんです」
今のNothing's Carved In Stoneのサウンドの時にテクニックの集大成のような変則的なナンバーがあっても、根底にはやっぱりストレートなロックへの愛も感じられますもんね。
「原点はロックですから。 みんな本当にロックがあるから、集まっていろんなジャンルの音楽を横断しても収まるんですね。ちょっと熱がこもってると言うかね哀愁があったりするのは、いいとこなんじゃないかなと思って」
ファウンテインズ・オブ・ウェインの十八番である独特の切なさは確かにNothing's Carved In Stoneの音楽の中にも感じられますねえ。
さて、アルバムごとに変化しながら走り続けたNothing's Carved In Stoneの10年。
御本人はどのように思っているのでしょうか。
「なんだろう。すごい駆け足でやったと思うんです。あっという間で。 普通のバンドだったら9枚とか10枚とかアルバム出して、もう解散してもいいくらいですが(笑) この間ツアーもたくさん回ってますし曲は100以上作ってて、普通のバンドが20年ぐらいかけて経験すること10年に凝縮して経験したなって感じがあるんです。酸いも甘いも味わって、自分たちの身ももたくさん削ったと思うし、感謝すべき人たちも沢山出会えて、色々変化もあったけど成長してきたなっていうふうに思います」
そんな10周年のNothing's Carved In Stone、およそ1年2カ月ぶりの9枚目のオリジナルアルバム『Mirror Ocean』をリリースしました。
今までのNothing's Carved In Stoneの世界をさらに推し進めるような大きな世界観のアルバムです。
「エモさみたいなのは今回かなり凝縮されていて、自分たちはギターが作るグッドメロディーとその中にあるエモさとメンバーのプレイアビリティと激しさ、冷たさみたいなところが持ち味だと思っているんですが、例えばそこらがギュッって(タイトルチューンである)『Mirror Ocean』には詰まっています。
あと大陸的でUSオルタナ、これも俺たちのルーツなんですけど、本当にジャンルレスですけどちゃんとNothing's Carved In Stoneの音でまとまっているパワーのあるアルバムができたと思ってます」
そんなアルバムから代表的なナンバーを1曲選んでもらいました。
雄大でアンビエントな雰囲気もあるシンプルで美しいナンバー「シナプスの砂浜」。ちょっと意外な選曲?と思いきや、この曲にはみっちりと工夫が仕込まれていました。
「まず音の話からさせてもらいたいんですが、すごくシンプルな曲なんですが構成がちょっとね。普通の曲よりは変わっているんです。 A メロ(歌い出し)の「合わせ鏡♪」から、サビに行くまでのメロディーがあるんですけど、そこのメロディーがのってる部分の、例えば普通だとCのコードを2小節弾いて、その後 Em7(Eマイナーセブンス)を2小節やって1セット、それを4回繰り返したらサビに行きますよ。みたいな構成が一番作りやすいんですよ。
それをしないでCのコードが2小節、Em7が1小節、をひとくくりにしてそれを4回繰り返して、その後にDのメジャーのコードを1小節だけいくみたいな変則的な進行になっているんです。でも、これAメロ聞いてもわからないんですよ」
マニアック!実際に聞いてみても私なんかだとぜーんぜんわからないんです。
「そうそうそう。それをいかにメロディーとブレークとか打ち込みのセンスとかで、どうやって聞こえないようにするかみたいなこだわりがあって (笑)」
聞こえ心地はシンプルでスムースな中にもこんな隠れた工夫があって、気づかなくても結果、楽曲の細かなニュアンスを高度に表現しているんですね。
「あとはでっかい音で密閉されたところで聞いてほしいんですけど、打ち込みの音がかなりはいってます。そして、『Strangers In Heaven』(2014年リリースの6thフル・アルバム)の「キマイラの夜」という曲があるんですけど、その歌をサンプリングして、打ち込みの音に入れてくれてるんですよ」
ええええ、これも気づかないですねえ。
「実はマニピュレーターって打ち込みをやってくれる仲間に、これこれこういう音っていくつもいくつも指定してこれで完璧だよっていう形でお願いしたんですけど、上がってきたらさらにそんな事を足してくれて。もう5人目のメンバーみたいな形でアイディアをくれたもので。そのおかげで世界観が完璧になったんですよ」
メンバーのみならず全員でいろんな工夫やアイディアを込めたのがこの曲であり、このアルバムということなんですね。
変則的でカッコイイ楽曲を超絶テクニックとボーカルで圧倒する音楽から、シンプルで美しい音楽へと深化。と思いきや、実は気づかれないレベルまで突き詰めて高度に進化しているとは。実は一番実験的な楽曲なのかも。
「変態ですね(笑)」
変態です!でも最高です。
そんな素晴らしいアルバムを発売したNothing's Carved In Stone。ライブもぜひ見たいところ。
実は福岡でのワンマンライブは先日終わったばかり。
ちなみに、アルバムの好調ぶりをそのままに本当にめちゃめちゃカッコイイステージでした。
見逃したみなさんに朗報です。
今度はTHE BACK HORNの福岡ライブに対バンとして、また福岡にやってきてくれますよ。
THE BACK HORN 20th Anniversary「KYO-MEI対バンツアー」〜情景泥棒〜<福岡公演>
出演:THE BACK HORN / Nothing's Carved In Stone
2018年5月13日(日)福岡DRUM LOGOS
open16:15 / start17:00
「僕が日本一敬愛するボーカリスト山田将司さんの対バンなんで、僕はとてもとても嬉しいしめちゃくちゃ気合が入っているのでぜひ見ていただきたいです」
さらに今年は10月にバンド初の武道館公演も控えています。
初めての武道館はちょっと意外な気もしますね。
Nothing's Carved In Stone 10th Anniversary Live at BUDOKAN
2018年10月7日(日)日本武道館
開場 16:30 開演 17:30
「10周年でもなければ、武道館でやらしてもらうこともなかったかなっていう印象なんですけど、ファンの人達と周りの人達をちょっと喜ばせたいなっていうのもあって今回武道館でやらせてもらうことになりましたね。はい 」
村松さんが加入した頃、周りは全員年上で知名度も技量もスーパー級のメンバーぞろい。その中で日々着実に実力と存在感を増して今や唯一無二のボーカリストとなった村松さん、その成長がそのままバンドの変化につながっている、そんな物語も想像できそうなのですが、目の前の村松さんは堂々としてフロントマンとしての自信にあふれています。
的確に自分たちの音楽について解説してくれる村松さんは、本当に楽しそうでNothing's Carved In Stoneが今まさに充実期にあるんだなあと思わせてくれました。
「今年は10周年ライブをやったり面白いことをやってですね、たくさんファンの方と楽しんで行きたいと思ってますね。武道館もちょっと遠いですけど10周年ということで多分ナッシングスの中で一度しかない時だと思いますんで一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです」
そういって笑う村松さん。
本当にありがとうございました。
Nothing's Carved In Stone Official Website (外部リンク)
次回5月19日は女王蜂 をお迎えします。どうぞお楽しみに。