毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。
今日のゲストは女王蜂のアヴちゃん。 #女王蜂
アグレッシブで扇情的なサウンドとライブ、アヴちゃんが書く魂を削るような生々しくもう美しい歌詞と聞く人すべての心を揺さぶらざるを得ないボーカル。
謎めいていてそれでいて多くの人に寄り添う唯一無二のロックバンド女王蜂。
その生き様や社会や周囲に対する思いは多く語られますが、その音楽について自ら語ることは極めて稀ではないでしょうか。今日はそんなアヴちゃんに自身の音楽についてたっぷり語っていただきました。
この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→ FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)
まずドライブミュージックに選んでいただいたのは宇多田ヒカルさんの「traveling」から。
「カラオケの18番なんて絶対ブチ上げる自信がある!(歌えば)カラオケボックスにアリーナが存在する」と笑顔で語る大好きな一曲だそう。
実は宇多田ヒカルさんはアヴちゃんに強い影響を与えるアーティストの一人。
確かにこの曲は、華麗でPOPでありながら、古語的な情緒あふれる日本語使いやきらびやかさとウラハラに全体に漂う切なさや虚無感など、女王蜂の音楽との共通性をたくさん見ることができます。
「何もないっていうことを書くってすごい大事なことだと思ってます、結局無に帰すという。それをさらっと書くことですね。なんか切ないっていうところでやめておくっていうのも大事なことだと思う」
そんな女王蜂、先月25日におよそ2年ぶりのニューシングル『HALF』をリリースしました。
TVアニメ『東京喰種トーキョーグール:re』のテーマ曲として話題の楽曲ですが、いわゆるタイアップ曲とは随分異なるようです。
まず原作の石田スイ先生とは仲良しだそう。
「原作のあとがきに『女王蜂を聞いている』って書いてくださって、それを観てお誘いしたら福岡のライブに来てくださって。そしたらライブ中に私たちの似顔絵入りの色紙を描いてプレゼントしてくださったんですね。大好き!って思って、ちょっとお話ししてこの人のことすごい好きだわって思って。 打ち上げ来ませんかって勇気振り絞ってナンパしたんです(笑)。
打ち上げの後もホテルの自分の部屋で部屋のみをしていろんなことを話しましたね。
一緒に飲んで話して語り合って自分の底というか大事にしてることをお互い話し合ってその情熱を閉じ込めることが出来たとは思います」
その結果、出来上がった楽曲は内容に沿うというよりは、同じ方向に向かっているような女王蜂らしい楽曲になりました。
「気に入ってる楽曲になりましたね。作品の根底にあるものと同じ血が流れてるんじゃないかなって思っています」
さて、そんな女王蜂の音楽についてさらに深く紐解くべく、アヴちゃんに1曲選んでもらいました。
ピックアップしたナンバーは、最近の代表曲でもあり人気曲の「金星」です。
怒りや無常観、情念とそれ故に求める愛といったモチーフが多い女王蜂が、ストレートなダンスビートに乗せて高揚感と共に色々な事を乗り越えて明日に期待しよう、と奮い立たせる1曲です。
「この曲からちょっと変わったなと思います。クラブやライブハウスに遊びに行くような人間なんですけども。いつも一人で行ってわーっと踊って、明日もお仕事頑張って!という感じだったんですけどね。
この曲をかき始めたぐらいからお客さんの横顔だったりとか風景ですね、そこに何が見えるんだろう、日常生活でこの曲が流れたら嬉しいんじゃないかなあ、とか考えるようになりました」
自分の内面に向き合ってきたアヴちゃんが、自分を取り囲む世界や関わる人達の事を思って音楽に向かい合うように変化した転機の一曲。
「そうですね、(嬢王蜂が)続くと思わなかったんですよね最初は。始めた頃が楽器を初めて1年位でデビューしちゃって(!)、どんどんどんどんお客さんが知ってくれて 期待値が上がってくんだけど、自分達には武器がないじゃないですか。でも、無理矢理血を吐いて、身を削ってやってきたんですけど。それも今、あの時に走ってたからこそ今がある。そんな風に思えるようになったのがこの「金星」あたりからかなと思います」
アヴちゃん自身「戯曲を1本書くような気持ちで書いていた」という初期から、より肩の力を抜いて広い視野で書くようになった「金星」。お話を聞いていて、アヴちゃんと音楽の独特の関わり方があることがわかってきました。
その一つはアヴちゃんのお話によく登場する言葉「武器」。
自分の大切な表現でもあり自分たちが周囲と戦い、道を切り開くためのツールでもある音楽。単に情緒的でも単に理性的でもない、それらがないまぜとなって今の女王蜂の独特の音楽ができあがっています。
「楽曲が生まれた背景としてなんですけど、レコード会社の人から戦える曲はたくさんあるんだけど、また潮目が変わるような曲が欲しい言われた時に、今第一線で戦っているバンドの皆さんの音楽をたくさん聞いて。いろんなバンドがあるんだなあとか、ダンスやシティーポップやオシャレな音楽なんかも聞いて、だけどやっぱり自分が実用的にずっと聞けるものじゃないと意味ないなあと思って」
そこでアヴちゃんのもっとも心揺さぶられる瞬間を、この楽曲の軸にすることで楽曲に命が吹き込まれました。
「クラブに行って、踊り疲れて外に出ると朝焼けに紛れて金星が見えたらアガるなあって。歌詞もロマンティックかつ、ちょっと切なさもありますよね」
これって、恋愛の歌のようでいてこれは、自分自身に向かって呼びかけているような気もします。
「そうですね。そんな風に表裏一体なところを私は書いていけばいいのかしら、とか思い出した頃の曲ですね」
女王蜂といえばファルセットの使い方にも特徴があります。これまでは二面性を表現する内向きで劇的な手法として使われることが多かったのですが、この曲ではまた違いますね。
「アンドロギュノス的、両性具有的なんですけど、ファルセットで天を突き抜けるような開放感を感じてもらえたら。『自由』って言葉も不自由だったりするんですけど、音楽って開放してくれるところもあると思うのでなんかそこらは大事にしたいところです」
実はバラしちゃうと、アヴちゃんは音楽の話をするのがやっぱり苦手なんです。
音楽は楽曲を聴いてもらって感じてもらうことが正解。それをあえて造り手が細かに説明するのはかっこ悪い。そんなシャイでスタイルとしてのこだわりがあるようです。
だけど、今回は精一杯番組のために語ってくれて、とても感激したことを記しておきます。
だからアヴちゃんが実は「金星」の聞き所について、結局ホントに言いたいことってこれだけなんですね。
「多幸感!それが一番の音楽!」
福岡のライブは残念ながら終わったばかりですが、DRUM LOGOSで行われたライブはかつての攻撃的で挑発的なステージから、無数のジュリ扇(女王蜂ライブの定番応援グッズ)舞い踊る会場で激しくも優しく、そして多幸感溢れるステージで魅せてくれました。
今回の音解は女王蜂の音楽を知るきっかけの一つになれたかなって思っていますが、いかがだったでしょうか。ちん。は女王蜂のファンでもありかなり強引に色々お話をぶつけてしまって、そんな質問にも一所懸命応えてくれたアヴちゃんに深く感謝です。
最後にアヴちゃんからみなさんへ。
「今とても好きなことを、好きな人たちに聞いていただける、という素敵なゾーンに入っています。好きになったら色々調べていただいて、まあギョッとしたりヤベえって思ったりもするかもしれませんが、実際ぎょっとするしヤバイので是非ともライブなんかに遊びに来ていただけると嬉しく思います。ライブハウスで待ってます!」
ライブハウスでお会いしましょう。
女王蜂 公式サイト (外部リンク)
次回5月26日はNakamuraEmi をお迎えします。どうぞお楽しみに。