3月31日のゲストは斉藤和義さんです。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。今週のお相手はちんです。

今日のゲストは斉藤和義さん。 #斉藤和義

今年はデビュー25周年イヤー。
もう説明は不要、数多くのヒット曲とともにバンドでもギター1本でも揺るぎない音楽を送り続ける歌うたい。移ろいやすい昨今でもその姿勢は少しも変わること無くマイペース。

そんな斉藤和義さんがいつものようにフラリと登場して、一曲目のドライビングミュージックに選んでくれたのは、なんとYMOの「FIRE CRACKER」。

そして少し楽しげにその曲について話してくれました。

今日の音解は、25年を越えてもなお少年のような好奇心で音楽に取り組む斉藤和義さんのちょっといいお話。

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→http://bit.ly/SAITOU_oa
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


「僕もドンピシャのリアルタイムですからね。(YMOの登場は)『何だこれは』って衝撃がみんなすごくて。シンセサイザーで作っているっていうのも含めて、うちらの世代全員アルバムも聞いてたんじゃないかっていうくらいですからね」

そういえばエリック・クラプトンもYMO(Behind the Mask)をカバーしていて、その当時世界中で大変な人気でした。斉藤和義少年にもちょっとこの時代の音楽はしっかり根を下ろしていたんでしょうか。

それにつけてもピコピコしたサウンドをバックに聞く斉藤和義さんのお話ってちょっとシュール。なんて思っていたのですが、これが今回の新しいアルバムにしっかりつながってくるのですね。

今月14日に通算19枚目のオリジナルアルバムは『Toys Blood Music』。

藤原さくらさんがゲストコーラスとして参加した『Good Luck Baby』や、鈴木雅之さんに提供した『純愛』のセルフカバーを含む、今回も1人多重録音で制作されたいつも以上にすばらしい11曲が収録されています。

そして、それ以上に耳に飛び込んでくるのは今までとはずいぶん違うサウンドです。

「そうですね。今までにない作り方をしてみたいなと思って80年代のドラムマシンだったりシンセサイザーだったり、そういうのを駆使して作ったんですね

今回はTR-808やLINN DRUMといったテクノを中心に80年代を席巻した懐かしいデジタル機材が多数使われています。今までにもブルース進行のシンプルな打ち込みのリズムがクールでカッコいい「MUSIC」とか「I Love Me」などありましたが、全編に渡って聞くことができるのは今回がはじめて。

今回のアルバムで重要なキーワードは「MIDI」。

現在のデジタル音楽の源流となる技術で、異なる電子楽器をつないで同期して一斉に演奏することができる仕組み。1981年に策定され、80,90年代のYMOや数々の音楽はこのMIDIの登場によってはじめてレコーディングやライブが可能になり時代を席巻したのです。ちなみにちょっと懐かしい言葉かも。
「TR-808を頂いたんですね。MIDIをどうやってやってるんだろうと思ったんですが、今回エンジニアと『あ、こうやるんだ』とわかって、いろんな楽器をつないでみたり、新たに買い込んでつないだりして一斉に演奏させたりしたら楽しくて楽しくて」

え。今ですか。というとンフフと笑う斎藤さん。
まったくのイチから試行錯誤することによって新鮮なアプローチを獲得しました。

「なんかギター持って作り出すと、自分の手癖だったり、またこのコードになっちゃった、とかあるんですけど今回は偶発性がすごくあって、やらしてみたらなんか変な音になっちゃった、とかそんなとこから膨らますとかね 。気がついたら、あ、もうこれで全部やっちゃおうと思って」

確かにYMOが在籍したアルファレコードあたりで80年代ロックバンドなども一斉に取り組んで、今にして思えば寄り道だけどすごく楽しい時代を思い出します。

「シーナ&ロケット、南佳孝とか機械とポップス、ロックの融合というか影響も受けましたし。すごく面白かったですね」

新しいおもちゃを手に入れて(でも結構昔のおもちゃかもしれませんが)楽んでできたのがこのアルバムってことなんでしょうね。

そんなアルバムの中から1曲ピックアップしてくれたのが「オモチャの国」。
辛口の社会批判を折り込みながらまさに今回のアルバムの象徴のようなサウンドです。

「1980年に発売されたLINN DRUMってやつなんですけど、実際の生音を録音初めてのドラムマシンで。人が叩いた音がボタンを押すとバスドラムだとかスネアとか鳴るっていう名機中の名機ですよね。

最初借りてみたんですよね。マニアックな話になっちゃうけどその初代のやつと2代目があって、それにどうも個体差があってグルーブも違うらしくて色々試してみたんですね。独特の揺れもあって意外と人っぽいんですよ。デジタルなのに。

それで808とかリンドラムとか割と最近の2000年代ぐらいのドラムマシンと3台同時に出したりして、自分の生ドラムも加えてみたりして、このレコーディング中に買い揃えたりしたマシンも総動員したのがこの曲かもしれませんね」

デジタルなのにアナログ。ヴィンテージなデジタル機材の面白さに目覚めちゃったんですね。

「そうですね結構揺れたりするし、その上に生で自分でギター弾いたりたりするもんだから結局は人間がやったのとは違うんだけど、機械と一緒にやる独特のグルーブも出してみたりして それがまた楽しかったですね」

近年になるにつれどんどん一人多重録音になっていく斉藤和義さんとデジタルの作業的な相性は確かに良さそうです。

そういえばなぜ一人多重録音が増えているんでしょう。

「元々は最初にアルバムの3、4枚目ぐらいから始めたんですけど、スタジオミュージシャンとだとすごいうまいんですけど『そんなにうまくなくてもいいのになぁ』みたいなのがあって、自分の頭の中にあるのはもっと適当な感じなんだけどなって思って。もともと色々自分でできたりもするので、デモなんかは全部自分で作ってみて、これでいいんだけどなーって増えちゃったんですね」

最初は懐かしのデジタル機材と斉藤さんとの組み合わせにオヤ?と思ったものですが、こうやって聴いていくとむしろ自然な成り行きだったんだなあと思います。

ギターもヴィンテージならデジタルだってヴィンテージ。
そしてまたイチからいろいろ試行錯誤して、音楽を始めた初期の楽しさをまた取り戻しもしたのかもしれませんね。結果できあがったのは、とてもフレッシュなそれでいて斉藤和義そのもののアルバムになりました。

「家でもねさらに機材が増えて。いっぱい繋いで中もう、一人でテクノごっこしちゃってますしね。最近はギターよりシンセのサイトばかり見てたりして(笑)」

斎藤さん本当に楽しそうです。

ここまでお話を聞けばアルバムタイトル「Toys Blood Music」の意味もすんなりと納得。

「電子楽器はおもっちゃっぽくも感じたし、でもちょっと血が通ってる感じもあったしそんな意味合いでつけましたね」

この楽しくて新鮮なアルバムを携えてのライブ、一体どうなるのかまったく想像もつきません。

「ほんとにねえ、これはどうやって再現しようか色々やってるところなんですけどね」

『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2018 "Toys Blood Music"』

5月3日(木・祝)、4日(金・祝)福岡サンパレスホテル&ホール
開場 16:00 / 開演 17:00

KAZUYOSHI SAITO OFFICIAL WEB SITE (外部リンク)


今回のアルバムはとりわけ楽しかったようで、一貫して笑顔で楽しそうに機材の話などする斉藤和義さんはロック少年と少しも変わらない、そんな所に音楽ファンはグッときてしまうわけですね。私もそうです。本当に楽しかった。

最後にみなさんにメッセージをお願いします。

「そうですね福岡はライブじゃなくても来たいですからね。飯も美味しいし。お姉さんの言葉もカワイイっすねえ。フフ」

  


次回4月7日はSINSKEさんをお迎えします。どうぞお楽しみに。