毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。今週のお相手はちんです。
今日のゲストは阿部真央さん。 #阿部真央
大分で生まれて高校卒業後に上京してデビューしたのが2009年。以来、パワフルな歌と同世代を中心に圧倒的に共感を呼ぶソングライティング。山あり谷あり、自分の生き方をそのままに投影した音楽は高い支持を受け続けて今年で10年。
上は最新作「YOU」のジャケットです。
恋愛ソングの達人らしいシンプルでオシャレなビジュアル。に見えて、実は左の女性も右の男性も阿部真央さん。ジャケットを開くと真ん中から男女に別れた服を着た内股にしている阿部真央さんがすまし顔でポーズを決めています。
また阿部真央にやられた!
ユーモアがあって挑発的、それでいてみんなが望む表現も決して忘れない。
10年目の阿部真央さんはそのまんまの人でした。
この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→http://bit.ly/ABEMAO_oa
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)
阿部真央さんがチョイスしたドライビングミュージックはOASISの代表曲の一つ「lyla」。
「歌もかっこいいんだけど、圧倒的なボーカルのカリスマ性ですね。なんか自分の声が入るべき位置が生まれながらにわかってる人だなんて。歌い方も、ぶっきらぼうで棒読みみたいな感じでだって聞いたことあるし。てっきり入り込んで歌ってるもんだと思ったから、歌詞見ながら簡単にこんな素晴らしい歌を歌っちゃうんだって」
と一気に話してハッとして「ちょっと。ファンの人に怒られちゃう!」と笑う真央さん。
ロックが大好き、そしてボーカリストの表現力や技術の話になると夢中になってしまうようですね。
3月7日に発売されたおよそ1年ぶりとなる8枚目のニューアルバム『YOU』です。
去年12月に配信シングルとしてリリースされた『K.I.S.S.I.N.G.』、山本彩さんに楽曲提供をした『喝采』のセルフカバーなどを含む全11曲が収録されています。
「今回はそう、昨年の「babe」は出産を経験してからのアルバムだったので、そことは打って変わって、母親とよりは一人の27歳の女性のひとつの恋模様みたいな、恋愛温度の高い一枚ですね。
タイトルの「YOU」。それはある程度楽曲が出揃った時に『私これ一人の人のことしか歌ってないな』って気づいたんです。なので私の中の「YOU」に向けたっていう意味を込めて。あとはこのアルバムが聞いてくださる皆さんのお手元に届いた時にその方の中にいる思い人である「YOU」に思って聞いてもらったら嬉しいなっていう気持ちも込めて」
心境の変化はありましたか?
「ありましたね。産後すぐの母親としてホルモンに支配されてる時期(©坂本美雨だそう)からやっと私の人生に戻ってきて、そういうテンションだったんだと思うんですよね。恋をしたりだとか。人生の岐路に立って今後どうするっていうことを一度向き合い始める年齢だと思うんですよね27歳って」
前作に当たる母性に溢れて人生としっかり向き合った傑作「Babe.」は、彼女に今作に連なる試練も与えていたようです。
「やっぱり前作『Babe.』はヘビーな内容のテーマのアルバムだったと思うので、ファンの間でも賛否両論があったんですね。その経験もあって、チャレンジすることにあんまり抵抗がなくなったんです。何言われてもいいやって気持ちがちょっとあったし、周囲の反応とかそんな恐れはなくなったんですね。そこはすごく大切な変遷だったのかな」
そして出来上がったアルバムは、吹っ切れた陽性のトーンと大人の自由な恋愛ソングにあふれています。
先行シングルで弾けるようなポップナンバー「K.I.S.S.I.N.G.」に始まるファンならば「待ってました!」と言いたくなるような「ザ・阿部真央」な3曲から、新境地とも言える中盤への流れは見事です。
「意識しました。書き終わった時に「これは恋が始まって終わるまでの話なんだな」って思ったのでそのままの順序で行きたいと思ったのと、あとこれは本当に思うんですけど頭の三曲がその後の中盤戦を聴かせるための序章だなと。M5から6の流れは絶対につなげたいと細かく思ってました」
そのM5、5曲目「immorality(Arranged by 岡崎体育)」は岡崎体育さんとのコラボです。
「私が岡崎体育さんの大ファンなんですね。楽曲のセンスとか面白い曲が人気だけど私は彼のビートが好きなんです。この曲を書いた時に岡崎さんにトラックを作ってもらえたら最高だなと思って、お願いしたら快諾していただいたんです」
そして、愛のアルバムを締めるにふさわしい美しいナンバー「朝日が昇る頃に」で見事に締める。かと見せかけて、コミカルで陽気にサバサバした「27歳の私と出がらし男」で終わります。
さっきまで見事なドレスで妖艶な悲恋の主人公だったはずが、急にのびのびジャージにヨレヨレTシャツを着てすっぴんのサッパリした顔であくびしてるようなナンバー。
これぞ阿部真央。
「ありませんか?清々しさが先にくる失恋ってあるじゃないですか『なんか良かったちょっと終わって』みたいな。それに似てる(笑)」
そんなアルバムから1曲だけピックアップしてくれたナンバーは、先程もお話してくれた「M5からM6」の6曲目。「傘」です。
「打ち込みと生音の融合を目指しつつ、大人なクラブミュージックと言うか少し昔の「今夜はブギー・バック」みたいな大人の人が入るノれるような楽曲」とその曲の狙いを説明してくれました。
同時にこのナンバーでは今まで行ったことない発声の仕方がポイントです。
「語尾をふわっとちょっと抜くっていうか、『かぁ(↑)』って裏声みたいに(歌ってみせる)、サカナクションの山口さんとか吉澤嘉代子ちゃんみたいに、岡崎体育さんもそうですね
(実際に岡崎体育のミュージックビデオの一節を歌う)
もうちょっと喉をベントさせずにふわっとさせるというか。私、人の歌唱法を見て真似するのが大好きなんでそれを目指してやったという。抜く感じがカッコイイなって」
この楽曲の独特の軽さはそんな歌唱法の絶妙のコントロールにもあるようです。
最初のOASISの話を思い出します。
歌うという事に関して完璧にコントロールしたい。ただその話しぶりはどのゲストの方とも違います。まるでギターやベースの話をするように「声」のお話をする。そして、そんな話をしているときの真央さんは溢れるように言葉が溢れ出してとても楽しそうです。
阿部真央さんにとってはすべては自己表現するためのすばしい道具。そんな風にも思いました。
そして、そんな表現を一気に爆発させるのがライブということになるでしょうか。
阿部真央ライブハウスツアー2018"Closer"
4月20日(金) 福岡DRUM LOGOS
開場18:00/開演19:00
※阿部真央オフィシャルサイト (外部リンク)
「最近はホール規模が多かったんですけど、今回は約7年ぶりのライブハウスツアーで何よりもライブハウスならではの良さを感じてもらえるライブにしたくって。来年10周年に向けてファンの方ともう1回グッと近づいておきたいなと思っての今回なので、福岡でも楽しんでもらえればって思います」
阿部真央の人懐っこくてカジュアルでいて実は考え抜かれた音楽とその人柄に魅了された今回の音解。阿部さんは忙しい中でも疲れも見せず肩の力が抜けていて、よく笑い、あけっぴろげで細やかに気遣いもしてくれます。まるで友達同士のような雰囲気でちょっと踏み込んだ質問にも誠実に答えてくれるのです。
そして、終わって思ったんですけど、阿部真央の音楽の秘密を上手に引き出してほくそ笑んだつもりだったんですが、実はこちらが彼女の術中にハマっていたような気もします。
また阿部真央にやられた!のかも?
次の登場を心待ちにしておきますね。
次回3月31日は斉藤和義さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。