毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。2018年もどうぞよろしくおねがいします!今週のお相手は香月千鶴です。
新年最初のゲストはACIDMANの中心人物でありボーカル&ギターの大木伸夫さん。
生や死、そして宇宙と連なる私たちへの慈しむような視点と壮大な世界観、大木さんの魂を射抜くような強く優しいボーカルとメロディで独自の音楽を送り続けるACIDMAN。
昨年の11月23日には結成20周年のアニバーサリーイヤーの集大成として、地元・埼玉のさいたまスーパーアリーナを舞台とした一大ロックフェス、「ACIDMAN presents SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI"」をプロデュース。
10-FEET、MAN WITH A MISSION、THE BACK HORN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、The HIATUS、BRAHMAN、RADWIMPS、Dragon Ash、STRAIGHTENERとACIDMANと浅からぬ縁の錚々たるメンバーを迎えて大成功のうちに幕を閉じました。
その話になると大木さん、「もう大盛況でした」とさすがに顔がほころびます。
こうして、さらに前へ。2018年のACIDMANがスタートしたというわけですね。
この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→http://bit.ly/ACIDMAN_onair
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員の方が聞くことができます)
そんな新しい年に向けて昨年12月にNEWアルバム『Λ(ラムダ)』をリリース!
新章のスタートとなるこの作品は20周年記念としてリリースされた『最後の星』『愛を両手に』『ミレニアム』を含む全12曲が収録されています。
大木さんにとってまずこのタイトル「Λ」には強い思い入れがあるようです。
「今回、11枚目のアルバムでタイトルも『Λ(ラムダ)=11』なんですけど、「Λ」には大きな意味があると思っています。ACIDMANの「A」としても使っているモチーフでもありますし、アインシュタインがかつて宇宙の謎を紐解くためのキーポイントとして宇宙定数として導入したものでもあります(後に自身で否定したが近年再注目されている)。
僕はずっと生命や人の生き死に、宇宙の始まりと悲しみとか喜びそして詰まるところ「愛」だというような世界観を描いてきたつもりなんですが、それを今回一番強く描けた実感もあってピッタリだなと思ったんです」
デビュー以来一貫して追求してきたサウンドが歌詞が、思想が最高のアンサンブルによって紡がれている今回のアルバム。今回も宇宙や生命について歌われながら、いつものように一方で人間臭くどこか希望に溢れています。
「なんだろう。音楽って元々根源的なものであったはずで、エンターテイメントではもちろんあるんですけど、元々はもっとスピリチュアルで内面的で精神的なものだったと思ってきまして、そういうことが好きな方にはすごく味わえるアルバムになったかなと思います 」
ちょっと難しいお話をしてはいるんですけど、目の前の大木さんは強い眼差しを向けながらおだやかに楽しげにお話しているんです。淀み無くスルスルスルッと出て来るコトバに気がつくとグイグイと前のめりになっている私たちだったりします。
そんなアルバムの中から大木さんがピックアップしてくれたのはアルバムの最後を飾る「愛を両手に」。
とりわけシンプルな言葉を重ねて情感たっぷり歌われる美しすぎるバラードです。
この曲は大木さんの亡くなったおばあさんを想っての歌。
「自分の祖母が亡くなる数ヶ月前、ベッドの上で自分と意思の疎通ができなくなったその瞬間に「もうばあちゃんとはすごく仲良かったけれどもここでもうお別れなんだな」と思ったんですね。
大往生ではあったし、僕も今まで色んな死に立ち会ってきたのだけど、やはり死は悲しいものです。
そんな時に『ばあちゃん果たして幸せだったかな』というのがすごく思いまして、戦争を体験して大変な時代を経てばあちゃんは幸せだったのかな。心の中ではどんな人生だったと思って死んでいくのかな、そんなことを考えました。
だけどそんな悲しみと同時に、生きるってことはそういうことなのかな。幸せっていうのは結局与えられるものじゃなくて自分で見つけるものなんだろうな。自分で見つけて感じるものなんだろうな。そう思ったんです」
そんな思いで曲を作った大木さん。
さらにこの曲を特別なものにするべく、バンド史上初めて外部プロデューサーを招聘。しかもその方はあの小林武史さんです。なんとなく意外な組み合わせですが、もともと小林さんの作品にボーカリストして招かれたりして交流はあったそう。
「当時小林武史さんと飲み友達だったりして、この曲を もうちょっと神聖なものにしたいと思ってオーダーしたら快諾してくれまして」
全曲から静かに続いて、冒頭のキーボードが「HOLY」なイメージをグッと盛り上げてくれます。
「当初はこの曲が最後だと決まっていなかったんですが、まるでアルバムをイメージしてたかのようなキーボードがすごく利いていて、結局この曲が最後に来ることによって今回のアルバムの答え合わせが出来ると言うか、浄化されていくような感じになりました」
と、この曲の仕上がりには大木さんも大満足だそう。
「宇宙やら壮大な世界を歌ってるんだけど、結局パーソナルに戻って『答えは愛だぜ』みたいなそういう音を鳴らしてくれたのでさすが小林武史と思いましたね」
「さすが一億枚売る男(笑)」
これにはスタジオ思わず爆笑。
そんな素晴らしいアルバムを携えての福岡のライブも間もなく。
「このアルバムを中心に、私たちともに恵まれた環境に生まれ育ったとはいえ、誰しも逃れることのない死という運命を前に、いかにこの瞬間を楽しむか。一分一秒を楽しく大事に生きるんだっていうことをメインにライブをしたいですね」
ACIDMAN LIVE TOUR "Λ(ラムダ)"
4月28日(土) 福岡 : DRUM LOGOS
open 17:30 / start 18:30ACIDMAN | Official Site | (外部リンク)
理知的でクールな眼差しを向けたかと思えば、MVに出演してくれた友人新井浩文さんや石橋蓮司さんのお話は本当に楽しそうで茶目っけたっぷりだったり、大木さんは幾つもの顔を短い間にもくるくると目の前で見せてくれました。
ただ音楽を語るときの大木さんは、求道者のようでちょっと思想家のようでもありました。
そして20周年を超えて年齢を重ねることを楽しんでいるようにも見えました。
最後に「愛を両手に」の歌詞がいつも以上にシンプルで伝わりやすい言葉で書かれていることについて質問すると、これからの大木さんが少し見えてきたような気がしました。
「そうですね。昔はもう少しかっこいいことを目指してけど、今は大事なものというか、本当のものを表現したいんです」
次週1月13日 は片平里菜さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。