毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。
今日のゲストはNakamuraEmiさん。 #NakamuraEmi
いつだって不器用なくらい自分と向き合って格闘する歌詞と、Hip-Hopに影響を受けたフロウのような独特の歌としなやかなサウンドで魅了するNakamuraEmiさん。
「こんにちわー」といっていつもの表情をくしゃくしゃする笑顔でやってきたEmiさんは、やっぱりいつものようにまわり360°に気遣いをしつつ腰が低くて一所懸命、そしてはにかむようによく笑います。そのキャラクターに関わる人すべてが彼女のファンになる、そんな素敵な方なんですよ。
この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→ FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)
NakamuraEmiさんといえば、今年3月に、およそ1年ぶりのメジャー3ndアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』をリリースしました。
「理想の日本の女性になりたい」そんな思いを込めてつけられたタイトルもVol.5。まだ目標は達成できてません?
「そろそろ違うテーマで歌えたらいいんですけど(笑)まだまだだなあと思っていて。いつになるやらわからないですね」
と笑顔。
でも、アルバムごとに音楽的な洗練はもちろん、テーマも自分自身との内なる戦いから世代や社会へとより視点が広がり確実に成長しています。
そんな中で今回のテーマは「コミュニケーション」。
「機械とかロボットなんて技術が進んでいく中で、自分も頼りっぱなしの毎日なんですけど、それがなかった時代を思い返すと、今はよりコミュニケーション、五感を大事にしていきたいなと思って作りました」
NakamuraEmiの自分を鼓舞しつつ周囲への強いファイティングポーズとアグレッシブなサウンドがアガる「かかってこいよ」、学生時代をモチーフに美しい痛みを感じる「教室」、ある意味新境地のメロウで心地よい「波を待つのさ」など。社会と自分自身へ向けた強いメッセージに、女性らしいしなやかさもさらに増してバラエティに富んだナンバーが揃っています。
「一年かけて いろいろ感じたことが集まったのが今回のアルバムなんで、ナチュラルな自分が詰まっているなと思います」
そんな中で1曲めNakamuraEmiのサウンドらしいなあと思うのがTVアニメ「笑ゥせぇるすまんNEW 」のテーマソングとして既に発表されていた楽曲「Don't(Album mix)」。
普通なにかのテーマソングやタイアップの場合は、アルバムになるとそういった制約や入れなきゃいけないサウンドや声を削ぎ落としてシンプルにアレンジし直して収録されることはよくあるのですが、今回はシングルには入っていない喪黒福造の声やスクラッチなど「足してる」という。
「普通とは逆なんですが、シングル発売の日に喪黒福造さんから『NakamuraEmiさんおめでとうございます』ってサプライズコメントいただいて嬉しくって。なんとか『ホッホッホ』を入れたくて。シングルには入ってません!(笑)」
だけど、削ぎ落としたサウンドに様々なサウンドや遊び心を加える足し引きの技こそNakamuraEmiの音世界。そういう意味ではとっても「らしい」ですよね。
続いての「N」はパラアスリートの中西麻耶選手とお会いしてできた曲です。
「中西選手は右足を切断されてからパラアスリート選手になったんですが、その中西選手にある番組でインタビューして一曲書いてもらえませんか?というお話いただいたのがきっかけです。
最初は障害を持っていることに気遣ったりしてたんですけど、中西選手はそんなことをとっくに超えている方で。右足を切断したということよりも、左利きの話をするようにお話する(そんな気持ちにしてくれる)。『障害』というものを特別なものではなく当たり前のこととしてくれた方なんです」
障害に負けずに頑張る人への応援歌を作ろうと思ったけど、(自分よりずっと立派に生きてると思う人に恥ずかしくて)とても自分はできないよ。と気づいたというEmiさんらしい誠実な歌。
「なにができるんだろうって。大きなことはできないけれど、駅で声をかけたり、当たり前に増えていくかなーとか思いを込めて作った曲です」
そんな、今のNakamuraEmiが詰まっているこのアルバムの中から、音世界を紐解く1曲を選んでもらいました。
4曲目の「新聞」です。
静謐でささやくように歌いだされるこの曲は、抑制されたサウンドと合間に様々な生活音や囁きを交えながら匂い立つような日常と今回のテーマ「コミュニケーション」がより色濃く感じられます。
「現在と昔、どうだったかなっていうのを照らし合わせた歌詞がいっぱい入ってるんです」
得意の日常の音もふんだんに取り込まれていかにもNakamuraEmi的。いつも印象的で効果的ですね。
「デモテープからアレンジするときに、何度も録音してこういう音あったらいいねとか。ライブではなくレコーディングならではのこういう音がいいねといって、ポストの音ならカワムラさんの家のポストの音をボイスメモで撮って入れてみたりして(笑)何度も検討したりしますね」
そんな耳をすませばわかるようなポイントだけでなく、この曲にはなんともこだわりの秘密が。
「ちょっとマニアックなんですけど、途中で昔のマイク、1950年代のリボンマイクと言うマイクから、同じくクラシックなんですけどちょっと新しい1960年代のマイクに切り変わってるんです!」
えええ。現在と昔ってことですね。
それにしてもマイクの音で時代の違いを表現ってすごいマニアック。
「実はこっそりあって(笑)、どこで切り替えるかみんなですごい悩みながらやったんですけどね。私にとってはすごい古いマイクでレコーディングした感覚とちょっと新しいマイクで録った感覚と、この『新聞』って曲(のテーマ)と照らし合わせるとすごい思い出深いですね」
確かに。でも耳を澄ますと変わるところってわかります?
「ヒントは後半です!(笑)」
わかんない!
でも、そんなマイクのこだわりや、この曲にふんだんに盛り込まれている生活音など無数に込められた工夫や遊び心がNakamuraEmiさんの音楽には本当に多いですね。
「そうですねプロデューサーのカワムラヒロシさん、デビュー前からお世話になっているエンジニアの兼重哲哉さんと、今回のアルバムでは音を足すより隙間がある中で、皆さんがどう感じ取ってもらえるかをメインに考えて。その上でパソコンの音だったりだとか付け足し方をしていたんですね」
「このマイクのことも。本当に私たちだけの意味と言うか。そういうこだわりですけど、この曲に対しての思いというその手間というか一つ心を込めるという意味で、いろんなことをこっそりやってますね」
音づくりの完成度やキャラクターづくりはもとより、作り手の楽曲への思いを込めるためのひと手間、魂を込める作業でもあるのかもしれませんね。今回のアルバムにもそんな一手間がふんだんに込められています。ぜひご一聴を。
今回も一所懸命、そして笑顔いっぱいでお話してくれたEmiさん。
一人の女性としてアーティストとしてとても充実してるのかなあ。なんて思いつつ、また次回お会いできるのが早くも楽しみになりました。
福岡のライブは終わったばかりですが、また次回楽しみにしたいところですね。
「福岡には今はバンドで来れるようにもなって、すごく嬉しいなと思っています。でも、これからもっと皆さんとコミュニケーションを取れるように、いっぱいライブで来れるように頑張りますのでよろしくお願いいたします 」
ありがとうございました!
NakamuraEmi公式サイト (外部リンク)
次回6月2日は藤原道山さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。