ダンスの衣装の件で、今、いろいろと資料を漁っていますが...
中国ってですね、現在、漢民族のホカに少数民族が55集団いて、物語の舞台になった2200
年代のころにはもっともっといたんですよね。
ヒロインの姜琰も少数民族の出だったりします。
設定では、秦より更に西の方から来た女性なので、ウイグルとかアフガニスタンなどの地域の影響があるダンスを踊り、
そして、漢民族に気に入られるため、それに合わせた舞も踊れるようになっているというイメージです。
漢民族と、僻地の少数民族ではどのような差があるかというと、それはスカートとスボンの差。
それには中華思想が関係してまして...
あのー...まず中華思想の話をしますね。
中華っつーのは、「私たちが文明の中心」という意味です。
中華は『中心で華やか』ですからね。
なので中華(漢民族)の周りはみんな蛮族の国という扱いをします。
だから、その中華側が記録に残した周りの異民族の名称は差別的な呼称になってます。
匈奴(きょうど)とか、鮮卑(せんぴ)とか、南蛮とか...
とにかく、やたらケモノヘンやムシヘンが付けられて人間扱いしてません。
日本や朝鮮はまとめて『東夷』って呼ばれて、更に、日本人は【倭人(わじん)】とも言われてます。
魏志倭人伝に出てくる呼び方ですけどね、これも実は「まつろわぬ人々」という意味でございます。
で、文化の中心である漢民族はズボンを履きたがらないんです。
なぜかというと、僻地の野蛮な民族たちは、馬に乗るんでパンツルックなワケです。
あれと一緒になりたくないから、ズボン系は履きたくないんです。
だからエリート意識のある中華の王族はスカート系になるんですよ。
「我々は尊い人間である」
ってことなんです。
まー現代でスカート履いてる男性は、そことは関係ないんですけどね、
昔はそうだったんです。
でも、漢民族であっても軍人は馬に乗ったり船に乗ったりしますから、そこはパンツルックになるんですよ。
だから、どんな王朝でも、文官と武官といたら、蛮族のカッコをしていない文官の方が地位は上になったりするんです。
ですから、武官が散々暴れて、国を治めるなり相手を滅ぼすなりしたら、あとはもう武官は用無しなので、
文官が政治を牛耳って、武官は低い地位のままで終わってしまいます。
実は、これは――
「武官は、胡服を着るから野蛮だ」
という認識なんですね。
胡服というのは、匈奴(モンゴル人)の服ことです。
つまり馬に乗るパンツルックをさします。
女性がよく着るチャイナドレスも胡服ですけどね。
あれも腰から下にスリットが入っているのは、馬に乗りやすいようにされたものなんです。
チャイナドレスは、元々、満州民族の民族衣装から発展したもので、清の時代によく流通するようになるんです。
清は、漢民族ではなく、満州民族が統治した時代だったから、馬に乗りやすいようにできた女性のドレスといっても、
野蛮人扱いはなかったワケです。
で...
この物語の舞台となった時代は、もちろんチャイナドレスはありません。
胡服(パンツルック)を着ているのは、漢民族ではない異民族か武人です。
姜琰は、この時代の芸人という時点で、ヨソから流れてきた人物でしょう。
この時代は、貴族たちの大きな国が近隣の小さな部族や、王族を滅ぼし、飲み込みながら国を拡大していたので、
敗れた国の民族はその国の奴隷になるか、更に僻地へ逃れるしかありませんでした。
敗れた貴族や部族の姫たちは、美人であれば洩れなく後宮へと入れられたので、大きな国の王が持つ後宮内は、
そりゃーもうバラエティに富んだ、あらゆる種類の美人と、いろんな民族の空気があったと思います。
まあ...そこでは、滅ぼされた自分の民族の復権を画策して、王の子を身ごもって実権を握ろうと、
女の戦いが繰り広げられるんですけどね。
大奥のドラマみたく...
あッ!いかん、ドレスから話が逸れた。
えー...ちゅーワケで、姜琰は、市場でダンスを踊るときは、民族系のダンスを踊り、
王の前では、雅(みやび)た漢民族の舞を披露するんです。
つまり、
市場の大道芸ダンスでは胡服(パンツルック)。
魏王の御前では、スカート系で色っぽく舞う(なぜなら王の抱きたい気持ちをそそんなきゃいけないから)。
ということになります。
王の前の群舞は、雅調の舞だとは思いますが、魏の国は多くの民族を吸収しているので、
その群舞の中に、アレンジとして胡服のダンサーが入ってもいいと僕は考えています。
西域系とか南方系のダンスとかね。
ま...そういう風に、今、ダンスを面白くするために、無理のない大義名分を探している状況です。
上にダラダラ書いたのは、舞台のダンスに多様性を持たせる言い訳みたいなモンですが、
やっぱ、お客さんの期待を裏切らず、「こんなもんだろう」的イメージは裏切りたいですからね。
えー...
ぼちぼちやっております。
作演出 阿久根知昭
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