2019年10月アーカイブ

アメリカのグレート・スモーキー山脈国立公園は、世界遺産にも登録され、アメリカで最も入園者の多い自然豊かな広大な公園ですが、この夏、公園の事務所に小包が届けられました。

入っていたのはハート型の小石と手紙。
カリーナという少女から公園の自然保護官にあてたもので、手紙には公園の自然の美しさ、なかでも滝が素晴らしく、記念に小石を持ち帰ってしまったことを「ごめんなさい」と謝罪し、「元の場所に返していただけますか」と書かれていたのです。

感激した保護官達は、住所のない少女の手紙と小石の写真をフェイスブックに投稿しました。
「石を返してくださってありがとう。もしすべての訪問者が1個ずつ石を持ち帰ったら、1年で1100万個もの石が公園からなくなってしまうのです」と感謝を伝え、公園の石はサンショウウオなど多くの生物の住処でもあると説明して、自然をそのままにしておく大切さを、ぜひ他の人達にも教えてあげて下さいと語りかけたのです。
この投稿は、たくさんの「いいね!」とともに多くの人々にシェアされました。

アメリカの国立公園には「写真以外は何もとらない。足跡以外は何も残さない」というルールがあるのだとか。
紅葉を訪ねる秋、私達もこの心掛けをシェアしたいものですね。

2019年10月19日「森を守る人」

屋久島に自生する屋久杉は木材として高く評価され、戦後の復興期には次々に伐採されていきました。
これに疑問を持ったのが木こりの高田久夫さん。
「こんなに切り倒していくと、やがて森がなくなってしまう」
そう思っても自分は木を切り出すことが生業。それを止めることはできません。

そこで目を付けたのは土埋木。
森には切り倒したまま運び出せない木や台風で倒れた木が昔からたくさん放置されていて、「土に埋まった木」土埋木と呼ばれていました。
土埋木は材木としての価値はあるものの山から運び出すのが困難で、誰も手をつけません。
しかし高田さんは難儀しながら木こりとしての知恵と技量で運び出していったのです。
さらに彼はその跡に杉の苗を植えていきました。

高田さんの行動は周りの仲間にしてみれば余計なこと。
そんなことをするより杉を1本でも多く伐採する方が手っ取り早くお金になる...そんな時代でした。
それでも彼は屋久杉の森で黙々と土埋木を山から運び出し、森の復活を夢見て苗木を植えていったのです。

やがて屋久杉の伐採が全面的に禁止され、平成5年に世界遺産となった屋久島。
それを見届けた高田さんは平成25年に亡くなりましたが、屋久島の森を守った伝説の木こりとして いまも語り継がれています。

2019年10月12日「走って、停まる!」

来年の東京オリンピックの競技にスケートボードが初めて採用されます。
これを受けてワールドスケート連盟では、スケートボードより歴史が古いローラースケートも、近い将来オリンピック競技に採用されることを期待しています。

ローラースケートの発明者はジョン・ジョセフ・マーリン。
1759年に靴底に車輪を取り付けて地面を滑走するスケート靴を発明します。
が、一般に広まったのはマーリンの発明から100年後のこと。
なぜ空白の100年があったのか?
それはマーリン自身に原因があったのです。

マーリンはロンドンで開かれた舞踏会の会場でスケートをお披露目することにしました。
舞踏会が佳境に入るころ、彼はおもむろにバイオリンを弾き始め、人々の視線を集めます。
そして演奏を続けながらスケート靴で会場をすいーっと滑り出したのです。
何が起こったのかとどよめく観衆。得意満面なマーリン。
しかし彼はバイオリンを弾きながら滑ることに精一杯で、停まり方を考えていませんでした。
舞踏会場を真っ直ぐ突っ切ると、そのまま壁にかかった鏡に激突。
大音響とともに鏡は割れ、マーリンは大怪我を負う始末だったのです。

こうしてブレーキ機能がついたものが開発されるまでの100年間、マーリンのローラースケートはだれからも見向きされなかったのでした。

2019年10月5日「ビールジョッキは左手で」

いま全国12の都市でラグビーWカップが熱戦中です。
ラグビーは、ボールを持つ相手に激しくタックルして格闘するスポーツですが、試合終了後は「ノーサイド」となってお互いの健闘を讃え合うことを旨とします。

その延長線にある伝統行事が「アフターマッチファンクション」。
試合後に行なわれる両チームの親睦会です。
選手たちがシャワーや着替えを終えスタジアム内のミーティングルームに集合。両チームの選手たちが一堂に会して乾杯し、歓談します。
そこでは、ついさっきまで闘争心むき出しで戦った相手に向かって「きみのタックルは最高に痛かったぞ」などと言いながら試合を振り返ったりして親睦を深めるのです。

このアフターマッチファンクションにはラグビー界独特のルールがあります。
それは、ビールが入ったグラスやジョッキを持つのは左手であることです。
その理由は、相手と握手する右手を空けておくため。
グラスを持った手は濡れていたり冷たかったりします。
そんな手で握手をするのはとても失礼だという考え方なのです。
だから、握手する方の右手でビールを持ってはいけない。
これがラグビー界では世界共通のエチケット。

もし日常の中でビールジョッキを左手で持つ人を見かけたら、それは左利きの人か、そうでなければラガーマンかもしれません。

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