「男女の姿をデザインしたトイレのマーク」など、絵で情報を伝えるピクトグラムは案内表示として欠かせませんが、世界で広く使われる契機となったのは1964年の東京オリンピックでした。
様々な国から選手団を始め多くの外国人を迎えることになって、誰にでも分かる表記が必要になったのです。
競技種目については早くに作られましたが、忘れられていたのが施設に関する表示でした。
開会式まで数ヶ月と迫る中、東京オリンピックのアートディレクター勝見勝氏が呼び集めたのが若手デザイナー11名。
多忙なデザイナー達は、それぞれの仕事を終えて夜集まり、ひとつのテーマに全員が一斉に絵を描いて議論するという方法で39種類ものピクトグラムを完成させたのです。
そのひとつがトイレのあのデザインでした。
デザイナーの必死の努力の結晶であるピクトグラム。
ところが、勝見氏は「社会に還元すべき」という考えのもと、デザインの著作権を放棄するよう提案したのです。
デザイナー達は誰も反対することなく、進んで著作権放棄の署名を行ったと言われます。
誰にでも分かるデザインを、誰もが使えるように。
デザイナーの志は世界を巡り、2020年の東京オリンピックでも活かされます。どんなピクトグラムが世界の人々を迎えるのか。楽しみですね。