2019年11月23日「愛しのカノン」
19世紀のヨーロッパで伝説的なヴァイオリニストが活躍しました。
その名はニコロ・パガニーニ。
18歳からオーケストラの楽団員として活動した後、27歳でフリーの演奏家になります。
自ら次々と作曲しながらヨーロッパ各地で演奏会を開きますが、これが一大センセーションを巻き起こしました。
彼の演奏は人間業とは思えない超絶技巧のテクニックを駆使した華麗な音色。ヨーロッパ中が熱狂したのです。
ひとたびステージに立てば圧倒的なカリスマ性で聴衆を魅了したパガニーニですが、趣味にしていたのはじつはギャンブル。
ある演奏会の前日、彼はその趣味で大負けしてヴァイオリンを巻き上げられてしまいます。
困り果てたパガニーニ。すると、彼のファンだという男が自分のヴァイオリンを手に申し出ました。
「これは私の宝物です。でもまだ一度も人前で演奏されていません。この演奏会であなたが弾いて、私に聴かせてください。」
こうして演奏会を無事に終えたパガニーニに、ファンの男は今度はこう申し出たのです。
「私を感激させてくれたお礼にこのヴァイオリンを差し上げます。」
パガニーニはそのヴァイオリンに「カノン」という名前を付けて、生涯大切に使いました。
カノンはいまパガニーニの生まれ故郷イタリア・ジェノバの博物館に大切に保存されています。
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