平成25年、福岡に残されていた女性化学者、黒田チカの研究資料が「化学遺産」に認定されました。
大正2年に29歳で東北大学化学科に入学し、日本初の女子帝国大学生となった女性です。
佐賀に生まれたチカは東京の女子高等師範学校に学び母校の助教授となりますが、東北大学が女性の入学を認めると、文部省が「前例これなきことにて頗る重大なる事件」と難色を示す中、3名の女子合格者のひとりとなったのです。
大学卒業後は、植物の色素の研究で数々の成果を挙げるなど化学者の道を邁進し、還暦を過ぎて取り組んだタマネギの色素ケルセチンの研究では、血圧降下作用を発見して特許を得ると高血圧治療薬を誕生させています。
「天然のものは正直ですから、真をもって一生懸命で向かったら必ず門を開きます。どんなに難しいことも悲観せず、困難に遭えば遭うだけ張り合いがあると考え、ますます勇気と真心で向かうのが最善の道であることは、化学に限らず、すべてに通じるものと思います」と語ったチカ。
生涯独身だったチカは甥を養子に迎え、昭和43年11月、家族に看取られ84歳で福岡で亡くなりました。
そして、日本初の女子大生誕生から100年の平成25年。
チカの貴重な研究資料や遺品は、遺族によって東北大学へと寄贈されたのです。