今年、福岡でも野生の猿が住宅街に現れるなど問題になりましたが、昭和20年代に、この問題に直面した地域がありました。
猿が田畑を荒らし農作物への被害が相次いだのです。
戦後の厳しい食糧難の時代であったため、猟銃による猿の駆除が許可される深刻な事態へと発展します。
この状況に胸を痛めたのが市長でした。
「野生の猿と人間が共存共栄できる道はないのか」。
そこで閃いたのが猿の餌付けでした。
山の麓のお寺の住職に協力を呼びかけ、市長自らもホラ貝を吹いてはリンゴやサツマイモを置く餌付けが開始されます。
しかし、猿は警戒してなかなか食べてくれません。
しかも市は財政難で、その対策に職員の削減に取り組んでいた市長は、公金で猿に餌を与えることを強く非難されます。
それでも市長は「餌付けに成功すれば観光資源になり市の財政を潤す」と訴え諦めませんでした。
そしてついに猿がサツマイモを食べ、ホラ貝で集まるようになったのです。
こうして昭和28年に誕生したのが、野生の猿と人間が触れあう観光名所、高崎山自然動物園でした。
アイデアと行動力で戦後の大分を復興に導いた上田市長。
来年は申年ですが、身近な野生動物といかに暮らしていくのか、私達の知恵と行動力を山の猿達が見守っていることでしょう。