かつて名古屋と金沢を結んで260?余りを走行していたバス路線がありました。
旧国鉄バス名金線(めいきんせん)で、バス停の数が150を超えるという当時日本一の長距離路線でした。
その沿道を桜で彩りたいと願ったのがバスの車掌だった佐藤良二(さとう・りょうじ)さんです。
実は沿道には、御母衣(みぼろ)ダム建設の際に水没した村から桜の老木が移植され、見事な生命力で花を咲かせていました。
その姿に感銘を受けた佐藤さんは「太平洋と日本海を桜でつなごう」と思い立つのです。
以来、仕事のかたわら自費でコツコツと桜の木を植え続けた佐藤さん。
やがて応援する仲間も加わって12年の歳月が流れ、名古屋から金沢まで植えられた桜は2,000本に上るといわれます。
しかし佐藤さんは病に倒れ昭和52年、47歳の若さで亡くなるのです。
第1号の桜が植えられた現在のJR東海バス名古屋支店にある記念碑には佐藤さんの生前の言葉が刻まれています。
「この地球の上に、天の川のような美しい花の星座をつくりたい。
花を見る心がひとつになって、人々が仲良く暮らせるように」。
佐藤さんの花の星座は「さくら道(みち)」と呼ばれ、その志を継いで始められた、名古屋城から兼六園まで桜を楽しみながら駆け抜ける「さくら道国際ネイチャーラン」が今年も4月に開催されます。