アフリカのサハラ砂漠にある国「モーリタニア・イスラム共和国」。
今でこそ日本人の大好きなタコの主要な輸出国ですが、実はタコを食べる習慣がないモーリタニアを輸出国に導いたのは日本人でした。
フランスから独立後、国土の85%が砂漠で国を支える産業も乏しく貧しかったモーリタニアでしたが、大西洋に面して広い海岸線を有していました。
そこで1977年、漁業支援のため、国際協力機構と海外漁業協力財団から指導員として派遣されたのが中村正明さんでした。
漁業の設備や技能を持たない国で、たった一人の取組みは、漁師に集まってもらうことさえ大変だったと言います。
試行錯誤の日々、中村さんは海岸の古タイヤに立派なマダコの姿を見て閃きます。タコ壺漁であれば大規模な設備も特別な技能も不要。
しかもこれまで食べていないからこそ、漁場にはタコが豊富にいるに違いない。
気味が悪くて敬遠されてきたタコの漁がいかに魅力的か、に半信半疑の漁師達を粘り強く説得。こうして始まったタコ壺漁は大漁となって大成功し、国の主要産業へと成長したのでした。
深く感謝したモーリタニアは中村さんに国家功労騎士勲章を授与。
その翌年に東日本大震災が起こったときには、多くの人々が「日本への恩返し」と言って義援金を手に日本大使館を訪れてくれました。
物理的な距離は遠くても心の距離は近い国。それがモーリタニアなのです。