2018年7月アーカイブ

2018年7月28日「夢の花」

昭和27年7月、植物学者の大賀博士によって2000年の眠りから目覚めた古代の蓮が花を咲かせ、大賀蓮と名付けられて話題となりましたが、それは多くの人々の思いが結実して咲かせた花でした。

千葉の縄文・弥生時代の遺跡から蓮が発掘されたことを知った博士は、そこにきっと種があると発掘を決意。

戦後の貧しい時代に問題は費用でしたが、私財を投じた博士の熱意に触れた千葉県などの行政機関の協力や民間の寄付が集まりました。
さらに近くで干拓事業に取り組んでいた建設会社の社長が、社員とともに発掘作業に参加。地元の人々や中学校の先生、生徒達も加わります。

しかし湿地帯の発掘現場は困難の連続でした。
泥との戦いに気力・体力を奪われ、日程も予算も使い果たしてしまうのです。
みんなの心を支えたのは、社長の「このせせこましい世の中に夢を掘るのもいいじゃないか」という言葉と費用の援助でした。
それでも種は見つかりません。
博士がもう打ち切ろうと決断したその日、泥の中の女子生徒のふるいにひと粒の小さな種が!
駆けつけた博士の「蓮の実だ!」という言葉に大歓声が湧き上がりました。

夢見る力によって蘇った奇跡の蓮は、戦後を生きる人々の心に夢と希望の花を咲かせたのです。

2018年7月21日「南極猫タケシ」

昭和31年から始まった日本の南極観測。
第一次観測隊では樺太犬22頭が南極に渡って犬ゾリを引いて活躍し、タロとジロの話が後に映画『南極物語』で紹介され、話題になりました。
しかし一方、この観測隊で1匹の猫も南極に渡ったことはほとんど知られていません。

南極に猫を連れて行く計画はなかったのですが、観測隊が港から旅立つときに見送りに来た人が「雄の三毛猫は航海のお守りになるので連れて行ってください」と隊員に渡したのが、産まれたばかりの野良猫だったのです。
皆から歓迎された子猫は、観測隊の隊長の名前をそのまま貰ってタケシと名付けられました。

タケシは皆から可愛がられ、すくすくと成長。
南極の寒さにも強く、夜は寝袋に潜り込んで寝ますが、昼間は外出する隊員の後ろを付いて歩いたり、犬たちと戯れあったり。
隊員のだれの心にも残る思い出は、タケシが何か悪戯をしたとき。
「こらっ、タケシ!」とわざと隊長に聞こえるように叱るのです。
その瞬間が隊長を除く全員の楽しみだったとか。

樺太犬たちは犬ゾリを引っ張る仕事をする南極観測隊の一員でした。
そして南極猫タケシもまた、南極の閉ざされた厳しい世界で長期間集団生活を強いられる観測隊の心を癒すことで皆のストレスを緩和し、チームワークを円滑にした功労者だったのです。

2018年7月14日「世界一過酷な仕事」

きょう7月14日は「求人広告の日」。明治5年のこの日、新聞に日本初の求人広告が掲載されたことによる記念日です。
ちなみにこのときの求人は、母親に代わって赤ちゃんに母乳を与える乳母。明治時代では乳母を雇うことは珍しくなかったのです。

4年前、米国で女性に向けた求人広告がネット上に掲載され、話題を呼びました。
まずその仕事の条件が次のように箇条書きで説明されます。

ひとつ。週135時間の労働。場合によっては夜通しで取り組まなければならない可能性あり。
ひとつ。仕事中は特に休憩時間はない。業務上の必要があれば休日もない。
ひとつ。医学、金融、そして調理のスキルが必要。

ここまで読むと、かなり過酷な仕事だと想像できます。
次に示されたのは報酬についてです。
どんなに高額な給料を提示しているのかと、読んでみると、こう記されていました。

ひとつ。給与の支払いはなし。完全な無償奉仕。
こんなばかばかしい求人広告にだれが応募するものか、と思うのを見越したように、次のような説明文が続きます。
ひとつ。もうすでにこの職業に就いている人が、世界中に10億人いる。
そして最後にその職業の正体が明かされます。
職種は、母親。

そう。これは求人広告の体裁を借りて母の日に向けた感謝のメッセージだったのです。

2018年7月7日「光の橋」

きょう7月7日は七夕。
本来は旧暦7月7日の夜ですが、現在では新暦の7月7日、あるいはひと月遅れの8月7日に七夕祭りが行われています。

七夕といえば天の川を隔てて輝く2つの星。
わし座の1等星アルタイル...すなわち彦星と、こと座の1等星べガ...織姫です。
この2つの星が年に一度だけ天の川を渡って逢うという話は、だれもが知っている七夕伝説。
じつは日本から遠く離れた北欧のフィンランドにも伝説があるのをご存知ですか。

昔々、いつも二人一緒の仲良し夫婦がいましたが、年老いてこの世を去ったあと天に昇ってそれぞれ星となりました。
二つの星はとても遠く離れていましたが、星になっても一緒にいたいと強く願った二人は、夜空を漂う星屑を集めて光の橋を架けることにしました。
来る日も来る日も二人は星屑を集めました。
1年経ち、10年経ち、そして千年の時が過ぎ、ようやく2つの星の間に立派な橋が架かったのです。
そう、二人が一生懸命作ったキラキラと光る橋こそ、天の川。
二人は天の川を渡り、千年の時を超えて再び逢うことができたのです。

これがフィンランドの天の川伝説。
大切な人ともう一度会いたい...。そんな願いを、わたしたちもフィンランドの人たちも、天の川の輝きに託したのかもしれません。

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