世界で愛読されている「夜間飛行」や「星の王子様」の著者、サンテグジュペリが亡くなったのは、第二次世界大戦の最中の1944年7月31日。
フランス空軍に志願して偵察機に乗務していた彼は、この日、任務で出撃し地中海で消息を絶ったのです。
その死は長く謎とされていましたが、生誕100周年にあたる2000年に捜索が行われ、海中に残る墜落機の残骸の中に当時の搭乗機が確認され、その後引き揚げられました。
しかし、なぜ墜落したのか、その謎が解き明かされたのは8年後のことでした。
元ドイツ空軍パイロットで88歳のホルスト・リッパート氏が「自分が撃墜した」と証言したのです。
あの日、敵機を発見し撃墜したリッパート氏は、数日後に、サンテグジュペリが操縦していたことを知り愕然とします。
「あの操縦士が彼ではないことをずっと願い続けてきた。彼の作品は誰もが読んで、みんな大好きだった」。
実は当時、サンテグジュペリ行方不明を知ったドイツ空軍も捜索を行ったといわれています。
大空を愛する心で結ばれていた人々を敵味方に隔てた戦争。
撃墜から64年間、苦しみ続けたリッパート氏の勇気ある告白を、サンテグジュペリは空の彼方から翼を振って称えていることでしょう。