今年も藤の花が季節を迎えていますが、ひとりの男性の熱意から生まれた藤の名所があります。
始まりは35年ほど前のことでした。
大阪の泉南市に住む梶本昌弘さんは、妻の幸代さんが生け花用に買ってきた1本の藤の苗が捨てられそうになっているのを不憫に思い、自宅の庭に植えるのです。
その後、小学校校長を定年退職した昌弘さんは藤の生命力に魅了され、剪定から肥料やり、害虫駆除など世話に没頭します。
その熱意に応えるように藤はたくさんの花をつけ、道行く人が足を止めるほどになると、昌弘さんは庭を開放して花見客にお茶などを振る舞い、いつしか「平成の花咲かじいさん」と呼ばれるようになるのです。
生まれ育ったふる里に感謝し「地域の藤にしたい」と、熱く語っていたという昌弘さん。ところが、肺がんのため79歳で亡くなります。
すると、生前、昌弘さんの呼びかけで結成された藤保存会の人々がボランティアで藤の花守となり、昌弘さんの思いを引き継ぎます。
それから7年。今では1本の藤の木から、なんと4万を越える花の房が見事に咲き誇る藤の名所となったのです。
ひとりの思いから始まった昌弘さんの藤の庭。
そこには今年も、花守達に迎えられて、たくさんの花見客が集っています。