今年の夏も痛ましい水の事故が相次ぐ中、海で溺れた男性が20時間も流されながら助かり話題になりました。
彼を生還に導いたのは、今、日本が世界に発信する水難事故対策「ウイテマテ」。名付け親は兵庫県赤穂市消防本部の消防職員で、救急救命士の木村隆彦(きむら・たかひこ)さんです。
水難事故の度に「救助隊が到着するまで、あと少し浮いていてくれれば命を救えた」と悔しい思いをしていた木村さんは、衣服を着た状態で水難事故にあったとき、そのまま浮いて救助を待つ「着衣泳(ちゃくいえい)」の有効性に着目して研究会を発足。
さらに国立長岡技術科学大学大学院に入学し研究に取り組んで3年余り。
ついに昨年12月、「着衣泳」の有効性を世界で初めて科学的に立証したとして工学博士の学位を授与されたのです。
息子と同じ世代の学生達と肩を並べ、海上の実験では自ら太平洋に浮かんだことも。
体力的にも経済的にも重い負担の中、「協力してくれる同僚や家族のためにも絶対にやり遂げる」と乗り越えました。
国際学会で木村さんが「着衣泳」の訳語として発表した「UITEMATE」は、今や国際語として世界に広がり、日本でも知名度がアップ。
水難事故死ゼロを目指して、木村さんの懸命の取り組みが続いています。