2013年11月アーカイブ

11/24「最愛の夫とともに」

「彼女は決して美しくはありません。しかし、ハンサム、美しい行いをする人だということを、私は知っています」

同志社大学を創始した明治の教育者、新島襄(にいじま・じょう)がアメリカ留学時代の恩人に手紙で婚約を報告した際の言葉です。

婚約者の八重(やえ)は会津藩出身で、明治新政府軍との戦いでは銃を持って奮戦した男勝りでした。
いつも凛として勇気ある決断力や行動力をもつ八重を、襄は「ハンサム」という言葉で讃えたのです。
夫婦のあり方にも西洋の新しい価値観を求めた襄の期待に応え、夫を「襄」と呼び捨て、人力車に肩を並べて同乗する八重に、人々は好奇の目を向け「悪妻」と噂しますが、八重が臆することはありませんでした。

ところが病弱だった襄は47歳の若さで亡くなり、結婚生活はわずか14年で終わりを迎えます。
しかし、それからの八重はさらにハンサムでした。

襄の亡くなった年に日本赤十字社の正社員となり、日清日露戦争で看護婦として救護活動に奉仕し民間の女性として初めて勲章を受章。
茶道(ちゃどう)に取り組んで女性の職業として開拓するなど、人生の後半も精力的に活躍しています。

「ハンサム」な生き方を貫いた八重。
86歳で亡くなるまで、八重はいつも最愛の夫とともに歩み続けたのです。

11/17「アインシュタインのお辞儀」

大正11年のきょう11月17日、一人の世界的VIPが来日しました。
それは相対性理論を提唱したアインシュタイン。

彼は東京駅で身動きもできないほどの群衆に迎えられ、熱狂的な歓迎を受けました。
アインシュタインの日本滞在はなんと43日間。
来日前から日本という国に憧れを抱いていた彼は、東北から九州まで各地を回り、相対性理論の講演をしながら大勢の日本人とふれあい、日本の自然や伝統文化を楽しみました。

日本滞在中のアインシュタインは、町歩きや旅の列車の中でも、相手が挨拶をすると、その人が子供だろうがきちんと脱帽し、日本式に足を揃えて丁寧に礼をしました。
ホテルに出入りする際も、ボーイさんに対し心のこもった顔で帽子をとり、脱いだスリッパを自分で揃え、荷物も自分で担いだそうです。
このような彼の分け隔てなく相手に敬意を払う態度は、彼の人柄そのものだったのです。

ある日、奈良を訪れたアインシュタインが奈良公園で鹿に餌をやろうとしたときのこと。
奈良公園の鹿は人に近づく時に首を縦に振る習性がありますが、これを見た彼は、「日本では鹿さえも礼儀正しくお辞儀をするのか」と感心し、鹿に向かって帽子をとり、丁寧にお辞儀を返したそうです。

11/10「カマボコ板の言葉」

ある大手電気メーカーが新しい工場を作ったときの話です。
その工場は最新鋭の設備を備えていたので、世界中から大勢の人が視察に訪れました。

しかし、その工場にはひとつ問題がありました。
それはトイレの落書き。
会社の恥だからと、工場長が落書きをしないようにという注意書きを工場に張り出しました。

ところが、落書きは一向に収まりません。
それならば、と今度は社長直々に落書きを止めるよう全従業員に通達しました。
それでも事態は変わりません。
「落書きをするな」という落書きまで出る始末です。

ところが数か月後、ある日を境に落書きをする者がいなくなりました。
トイレの壁にはカマボコ板が掛けられていて、そこにはこう書かれていました。

「落書きをしないで下さい。ここは私の神聖な職場です」

書いたのは、パートで来てもらっているトイレ掃除のおばさんです。
工場長の呼びかけでも社長命令でも言うことを聞かなかった従業員たち。
でも、自分たちが働く同じ工場で、同じようにトイレで一生懸命働くおばさんの胸の内を知って初めて、彼らはトイレに落書きすることの愚かしさを思い知ったのです。

きょう11月10日は、語呂合わせで「いいトイレ」 ・・・トイレの日です。

11/3「林さんのハンカチ」

11月3日・・・きょうはハンカチーフの日。
正方形のハンカチを世界に広めたマリー・アントワネットの誕生日にちなんだ記念日です。

ハンカチは汗を拭いたり手を拭いたりする小さな布切れではありますが、ちょっとお世話になった人に、その人の負担にならずにさりげなく感謝の気持ちを伝える小さな贈り物としても使われています。

林さんは二人の娘を持つ父親。
数年前、下の娘さんが就職すると、彼女は初めての給料で家族全員にそれぞれのイニシャルが織り込まれたハンカチをプレゼントしてくれました。
そのまっ白いハンカチはあまりにも清楚で凛としていたので、汚れを拭く目的のために使うのはもったいなくて、父親である林さんはリボンのついた箱ごとずっと引出しにしまったままにしていました。

それから数年後。
上の娘さんが結婚することになりました。

結婚式当日、林さんは引出しの中にしまったままのハンカチを初めて取り出しました。
花嫁の父として、モーニングのポケットにそのハンカチを忍ばせていったのです。 その理由は、嬉し涙を拭くためなら、大切なハンカチを遠慮なく使うことが出来そうな気がしたからです。

林さんの溢れる気持ちを一番近くで受け止めてくれた 一枚のハンカチです。

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