雪国にとって、降り積もる雪は厄介な存在ですが、それを新たなエネルギーとして活かした町があります。
冬の間の積雪は2mを超えるという日本有数の豪雪地帯、山形県の舟形町(ふながたまち)です。
その要となったのが町役場の職員、高橋剛(たかはし・つよし)さんでした。
「雪さえなければ、いいところなのに・・・」という町の人々の声を耳にするたびに、高橋さんは「水や空気と同じように、雪にも何か大切な使命があって天から舞い降りてくるのではないか」と考えるようになったといいます。
そんな高橋さんの思いが発端となって、舟形町では雪を積極的に利用する「利雪事業」に取り組み始め、雪を貯蔵する施設を作って、夏に米や蕎麦、ラ・フランスなどを貯蔵。鮮度が保たれ、うま味が高まるなど、農産物の貯蔵に雪が大きく貢献することを証明しました。
平成2年には通産省資源エネルギー庁の「地域エネルギー開発利用モデル事業」の指定を受け、雪のエネルギーを対象とした国内初の調査研究が実施されます。その後、世界初の雪冷房システムを町営の建物に導入。
雪の貯蔵室と建物を配管で結び、送風機で雪の冷気を建物に送り込むというシンプルなシステムで、夏を涼しく快適に過ごせることを実証。
これが「雪の国際会議」で発表され、国連を通じて世界中に紹介されたのです。
雪に悩まされていた小さな町が世界に発信した新たなエネルギー。
「雪にも大切な使命がある」と信じた人々の熱い思いが生み出した、そのエネルギーの大切さに、今、ようやく時代が追いつこうとしています。