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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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1/20「お使いの少年」

吉田さんはテレビ番組の制作スタッフ。
海外ロケでネパールの山岳地帯の村に滞在したときの話です。

クルマも通らない山道を何時間もかけて歩いて登る標高1500mの村。
「ここでビールを飲んだらうまいだろうな」とつぶやいた吉田さんの言葉を聞きつけた村の少年が、「ぼくが買ってくる」と申し出ます。
買ってくるといっても、店は山の麓にしかありません。
吉田さんは遠慮しましたが、少年があまりにも張り切って請け合うので、それならとお金を渡したら、少年は一目散に山を下り、夜になるとビールを背負って帰ってきました。

そして翌日。「また買ってくる」という少年の言葉が嬉しくて、吉田さんはもっとたくさんのお金を預けたのです。
しかし、少年は夜になっても、翌日になっても帰ってきません。
心配する吉田さんですが、村人たちや少年の通う学校の教師は「あれだけのお金を手にしたら帰って来ないよ。逃げたんだ」と言います。
「つい日本の感覚で気軽にお金を渡したことが、あの少年の人生を狂わせたのか」と吉田さんは後悔しました。

ところが3日目の夜、少年は泥まみれの姿で帰ってきたのです。
聞けば「麓の店ではビールが足りなかったので、さらに4つの山を越えた町まで行って買ってきた。でも帰りに転んで3本を割ってしまった」とべそをかきながら、ビール瓶の破片と釣り銭を差し出します。
その瞬間、吉田さんは少年を抱きしめて泣き崩れました。

その涙は、健気な少年への愛おしさと、その少年の心を疑った大人の自分を恥ずかしく情けなく思う涙だったのです。