運河の街として知られる北海道の小樽市の小樽運河のそばに、かつて「消防犬」として小樽の人々に愛された犬、文公(ぶんこう)の銅像が建てられています。
火事の焼け跡で鳴いていたところを消防士達に助けられ、消防本部で大切に育てられた文公。
火災が多かった小樽市では昭和2年に本格的に消防制度が整備され、消防自動車が導入されるなど近代化されます。文公は火災出動のベルが鳴ると一番に消防車に飛び乗り、火災現場ではホースをくわえて消防士のもとへ走り、吠えて野次馬を追い払うなど大活躍したといわれます。
出動回数は千回にも上り、昭和13年に24歳で死亡したときには、消防本部で署員達が参列して葬儀が行われ、市民から届けられたたくさんの花や大好物だったキャラメルを供えて別れを惜しみました。
当時はその活躍が新聞やラジオなどで紹介され、全国的にも有名な存在だった文公ですが、時の流れとともに人々の記憶から薄れていきます。
しかし、小樽の人々は忘れなかったのです。
平成10年には文公の絵本が出版され、平成18年、文公の死から68年もの歳月が過ぎていましたが、元、消防団副団長の木下氏が文公の銅像を作ろうと募金を呼び掛けると、わずか半年ほどで資金が集まり銅像が建てられたのです。
小樽の人々が復活させた文公の雄姿は、観光客も足を止める街の名所となっています。