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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/21「島唄になった気象予報官」

沖縄県の石垣島に『岩崎節』という島唄が伝わっています。
「岩崎」とは、岩崎卓爾(たくじ)。明治31年、台風観測の最前線基地として石垣島に作られたばかりの測候所に赴任した気象観測技官です。

当時の石垣島には天気予報という概念はなく、古くからの言い伝えで海の天気を占って漁に出たり、日照りが続くと雨乞いをして畑を耕すという暮らしをしていました。
本土からやってきた卓爾が、そういう島の風習を否定し、天気予報の重要性を説いて回ったので、島民たちは猛反発。「神聖な雨乞いを冒涜された」と怒った島民たちが測候所に押しかけ、卓爾を縛り上げて村に連行するという騒ぎもありました。

それでも卓爾はめげることなく気象観測、とくに台風の研究に没頭します。
その姿に島民たちは次第にほだされ、卓爾の飾らない人柄を慕うようになっていきました。
何より、卓爾の台風に関する予報のおかげで漁師たちの遭難事故が目に見えて減っていったことに、島民たちは感謝したのです。

大正9年。卓爾が島に来て20年目を祝う会が島の有志の呼びかけで催されました。その会費は1円という当時としてはかなり高い金額でしたが、500名もの島民たちが会場となった測候所の庭に集まりました。
中には、30キロ以上も離れた島はずれから「卓爾さまのためなら」と馬に乗って駆けつけた古老もいたそうです。

昭和12年、享年68歳で石垣島の土となった岩崎卓爾。
石垣島に捧げた彼の半生が彼を偲ぶ島人たちの間で島唄となり、いまも語り継がれているのです。