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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/14「巨匠の趣味」

ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番『新世界より』。その第4楽章は荘厳なオープニングのメロディでよく知られていますが、この曲は蒸気機関車が走り出すときのイメージを描写したものだといわれています。

巨匠ドヴォルザークは、1日最低でも40小節を作曲することを自分に課していましたが、同時に、彼にはもうひとつの日課がありました。
それは最寄りの駅に出かけて汽車を見ること。ドヴォルザークはじつは筋金入りの鉄道マニアだったのです。

時刻表を暗記し、すべての列車の番号をメモ。
鉄道模型を手作りしたり、機関車の運転士と知り合いになると「天にも昇る心地だった」と日記に書いたり。
とにかく、音楽以外の関心はすべて鉄道だったようです。
彼はいかにも音楽家らしく、走る列車が奏でる走行音をも楽しんでいました。

彼がある日列車に乗っているとき、いつもと微妙に違う走行音が聞こえました。車掌にその旨を伝えたところ、車両から故障が見つかりました。
ドヴォルザークの研ぎすまされた音感が、列車事故を未然に防いだのです。
そんな彼が友人にため息交じりに語った言葉・・・。
それは「本物の機関車が手に入るのだったら、これまで自分が作った曲のすべてと取り替えてもいいのに・・・」

現在、音楽の都ウィーンとドヴォルザークの祖国チェコの首都プラハを結ぶ特急列車は「アントニン・ドヴォルザーク号」という名前です。
もし、ドヴォルザークが生きていてこのことを知ったら、きっと天にも昇る心地だったことでしょう。