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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/7「夭折の少女詩人」

「まっかい まっかい ばらの花 目に入ってゐるうちに 目つぶつて 母ちゃんに見せに行こ」

これは、天才女流詩人と謳われた海達公子(かいたつきみこ)の作品です。

大正5年生まれ。熊本県荒尾市で育った海達公子は、小学校2年生のとき文芸雑誌『赤い鳥』に投稿した詩が北原白秋の目にとまり、絶賛されます。
その後、新聞や雑誌に次々と詩を発表し、少女詩人として一世を風靡。
少女らしい素直な言葉が豊かな情景を描き出す作風に惚れ込んだ北原白秋は、彼女の将来を期待し、弟子のように可愛がりました。
やがて高等女学校に進学した公子は、その才能を詩から短歌へ向かわせます。

このころ、彼女の家庭は生活が苦しく、差し押さえで家を追い出されたり、また実の父から暴力をふるわれたりと、複雑な環境でしたが、学校での公子は成績抜群でスポーツも万能。級長として皆の世話をし、また皆から愛される明るい生徒でした。

ところが昭和8年、晴れの卒業式の直後に彼女は突然の病で倒れ、心臓マヒを起こして帰らぬ人となったのです。
16歳というあまりにも短い人生を終えた公子が残したのは、五千編の詩と三百首の短歌。
しかし、いま彼女の名を知っている人はあまりいません。
でも、彼女が命を燃やして短い青春を過ごしたふるさと・荒尾の人たちは、駅前広場、公園、神社の境内、学校の校庭・・・町のあちこち10数カ所に海達公子の文学碑を建て、彼女を偲び、その名を後世に語り継いでいます。