日本人より日本を深く愛した小泉八雲(こいずみ・やくも)こと、ラフカディオ・ハーン。
その代表作「怪談」は、妻のセツと二人三脚で書き上げられたことで知られています。
セツは日本の文字が読めない夫のために、各地に伝わる幽霊話や伝説を調べますが、
八雲は、本に書かれていることをそのまま読み聞かせてもらうのではなく、
セツが自分なりに読んで解釈したものを八雲に語り聞かせるよう望みました。
そのため、セツは夫が仕事で不在の昼間、懸命に読書をしては、
自分の感性を通して様々な話を語り聞かせたといわれます。
そんなセツを八雲は心から愛し、4人の子供にも恵まれました。
八雲は亡くなる前の数年間、夏休みは静岡県焼津(やいづ)の海辺に家を借りて
一家で過ごしましたが、ある年、東京に残った妻にあてた手紙が残されています。
「小サイ可愛イママサマ
ヨク来タト申シタイ アナタノ可愛イ手紙 今朝参リマシタ
口(くち)デ言エナイホド喜ビマシタ。
私少シ淋シイ 今アナタノ顔ミナイノハ。
マダデスカ。見タイモノデス。」
簡単な漢字とカタカナで書かれた片言の手紙。
そこには妻への想いがあふれています。
セツもまた日本女性の美徳である礼節を重んじながら夫に仕え、愛のある温かく和やかな家庭を築きました。
八雲が愛した日本、それは「セツのいる日本」だったのではないでしょうか。