北海道札幌市の盤渓(ばんけい)小学校。
20年前のある日、登校途中の子どもたちが、生まれたばかりの捨て犬を見つけ、学校に持っていって保護したことから、この物語が始まります。
引き取り手がない中、この子犬を保健所に送るか、学校で世話をするかを巡って、大騒ぎ。
職員会議で協議を重ねた結果、全校児童が責任をもって犬の世話をするという条件で、学校で飼うことが決まったのです。
学校犬の誕生。子犬は「クロ」と名付けられました。
休み時間になると、クロは子どもたちと元気に校庭を走り回ります。
学校が嫌だと引きこもっていた子も、クロがいるので学校が好きになりました。
みんなの輪から離れて一人寂しそうにしている子がいれば、クロはそれを察してその子のそばにずっと寄り添っていることもありました。
また、クロは学校行事にも参加。
遠足で山に登るとき、クロはいつも一番後ろの子といっしょに歩き、みんなから遅れそうになったら、その子を鼻でつついたり、尻尾を振ったりして励ますのです。
春になって、6年生が学校を去ると、今度は新一年生がクロの新しい友だち。
クロの世話は上級生から下級生にきちんと受け継がれました。
そんな幸せな日々が10年間続き、クロは1999年の春、老衰のために静かに息を引き取りました。
いま、盤渓小学校の玄関には、銅像となったクロが子どもたちを見守るように建っています。
「ある日、学校に来て、その日からともに親しみ、みんなに愛され、多くの子どもの心を支えた黒い犬」
??銅像の脇の石碑にはそう書かれています