4/12「被災地に笑顔広げるパン缶」
栃木県那須に、ちょっと珍しい「パンの缶詰」を製造している会社があります。
きっかけは、1995年の阪神・淡路大震災のとき。
パン工場の社長は、被災した人々の惨状を見て、いてもたってもいられなくなり、トラックにパンを積んで、栃木県を出発します。
ところが、震災の影響で交通はストップ。
パンは無添加だったため、やっとの思いで辿り着いたときには、半分以上にカビが生えていました。
せっかく運んできても食べることができない。
しかも、被災地で配られている乾パンは、お年寄りには固すぎる。
「保存ができて、しかも焼きたての美味しいパンを届けられたら、どんなに喜ばれるだろう」
社長の胸には、そんな思いがこみ上げてきました。
保存性と美味しさを同時に求める研究は困難を極めましたが、およそ1年後、ついに念願の「パンの缶詰」が誕生しました。
缶は、缶切りがなくても簡単に開けることができ、中からパンの甘い香りが漂います。
しかも、開けた後の缶の切り口が、丸くなるようにできているので、中身を取り出すと水などを入れるコップとしても利用できます。
発売当初は、商品の珍しさが先行していましたが、その評価は、新潟中越地震をきっかけに急変します。
避難した人たち、とくにお年寄りに、柔らかくておいしいと大好評。
「あれば便利なユニーク商品」ではなく、「なくてはならない商品」として認められ、社長はその後、海外にも義援物資として送り続けています。
イランでは、震災で家族を失った子供たちに配られ、久しぶりに笑顔が戻ったと報じられました。
「パンで被災地に笑顔を広げたい」という思いで、社長はきょうも、パンの缶詰を作っています。
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