初夏の足音が近づき、今年もうみがめの産卵の季節がやってきました。
鹿児島県の屋久島では、毎年この時期になると、うみがめが産卵にくるきれいな砂浜を守ろうと、
20年以上も前から清掃活動や生態調査を行っています。
はじめは村の青年団が小さな小屋で活動していたのですが、やがてその活動は口コミで少しずつ広がり、
いまでは「うみがめ館」という共同宿舎で全国からのボランティアを受け入れています。
うみがめが産卵にやってくるのは、5月から7月。一匹ずつ個体を識別できるタグを付けたり、
産んだ卵を安全な場所に移したりと、ボランティアたちは大忙し。
8月から9月にかけては、孵化した子がめの数を調べ、一匹でも多く海に帰れるようにと砂浜の整備を行います。
ボランティアに来る人は小学生からリタイアした年配の方までさまざま。
中には、登校拒否の児童や人生の分岐点で迷っている人たちもいて、
それでも屋久島の自然に囲まれて共同生活をするうちに、彼らは少しずつ自分を取り戻し、やがて笑顔でうみがめ館を去っていくのだそうです。
館長を務める大牟田一美(おおむたかずよし)さんは、「20数年間、初めは清掃活動を中心に行っていましたが、うみがめの生態記録は自然保護の貴重なデータになり、
何よりもさまざまな人たちの人生と出会えることが一番の楽しみです」とおっしゃいます。
ボランティアは、1日体験コースから、近頃では企業が社員研修の一貫として取り入れているケースもあり、どなたでも参加することができます。
たくさんの善意に支えられ、子がめたちは大きな海に向かって、人生の第一歩を歩き始めるのです。