以前、玄海灘に浮かぶ島=地の島に行ったことがあります。
1日数便しかない船に乗りそこない、島の小学校の校庭にあるベンチに寝転んで、青い空を眺めながら、聞こえる波の音に耳を澄ませていました。
しばらくすると、校庭の隅の方から、「行けー!行けー!」という子ども達の声。
見ると、数人の小さな子ども達に交じって、照れくさそうにこっちへ近づいてくる青年がひとり。どうやら、子ども達にひやかされながら、私に声をかけようとしているようです。
「どちらから来たんですか?」
「福岡です・・。船に乗り遅れて時間をつぶしているんです・・・。」
その島の青年は、次の船の時間まで、島を案内してくれると言いました。
彼は、島の漁師。その日はたまたま漁が休みで、島の子ども達の面倒を見ていたとか・・。
彼が運転する軽トラックに乗ると、子ども達は、後ろから「わぁー!」と言いながら、徒競走のように追いかけて来ました。子ども達の姿が見えなくなると、島で一番夕陽がきれいなスポットに案内してくれました。「ここにペンションを建てるのが夢・・。」と瞳を輝かせ、一言。
その後、彼の家へ行くと、「ちょっと待って・・。家の中、汚れているから・・。」あわてて隣の家に掃除機を借りに行き、超特急のように、にわかそうじ。もてなす準備の整った部屋で、彼が採った魚介類をご馳走してくれました。
夕方、漁を終えた船が島へ帰ってくると、港にみんな駆け寄り、その日の採れ具合をあれこれ話をしていました。
帰る船の時間が近づくと、港にいた人たちが、「また、いつでも来んしゃい」と見送ってくれました。
真っ赤な夕日をバックにシルエットをつくる地の島は、ひとつの家、そこに住む人たちはひとつの家族のような気がしました。
福岡西方沖地震の時も、玄界島の人たちのもとに、いち早く、あたたかい漁師鍋を運んだのも、彼らでした・・。
2005年6月アーカイブ
今日は、父の日。
朝からお父さんたちは、そわそわしていらっしゃるのではないでしょうか?日本で父の日が広まり始めたのは、1950年頃のこと。定着してきたのは、1980年代です。
もともと父の日は、アメリカのワシントン州に住む「ジョン・ブルース・ドット婦人」が、1908年に、母の日ができたことを知り、「父の日がないのはおかしい。」と翌年「父の日をつくってください。」と呼びかけたことがはじまります。ドット婦人の父は、妻に先立たれ、6人の子どもを、男手ひとつで育てあげました。今日のような豊かなアメリカではなく、悲劇の時代と言われていたアメリカだったので、その苦労は大変だったことでしょう。
ドット婦人の働きかけで、父の日の行事は各地へ拡大。1972年、正式に「父の日」がアメリカで祝日となりました。
ドット婦人にとっては「父の日」を広めたことが、苦労をかけた父への大きなプレゼントになったことでしょう。
日本でのインターネットによる、あるアンケートによりますと、「父の日」に欲しいものベスト3は、「自由な時間」「感謝の言葉」「サービス・肩たたき」・・・。「衣類」「何でもOK」「電化製品」に続いては、「感謝の気持ち」「子どもの成長」「一緒の時間」という結果が出ています。
「子供の成長」に関しては、今、アメリカ大リーグで活躍している、ヤンキース・松井秀喜選手の「父の日のプレゼント」の話があります。2003年父の日、4試合連続となる、マルチ安打&打点を記録し、打率をあげ、チームの中で単独トップに躍り出ました。その日松井は、「元気でプレーしているのが、何よりの父へのプレゼントでしょう。」と照れ笑いしていたそうです。日本にいる実の父、そしてチームの父=監督への最高のプレゼントだったかもしれません。いつの時代もお父さんたちが求めているものは、モノより気持ち、触れ合いなのかもしれません。
川で、釣りを楽しませてもらっている人たちが、今、川へ恩返しをしようという動きがあります。
5月は、福岡市の室見川の源流:椎原川で、福岡市の釣り仲間の団体が、川の清掃とヤマメの稚魚の放流。そして、今日(6/12)は、熊本県南阿蘇の白川で、熊本近郊の釣り仲間の団体が、川をきれいにし、ヤマメの稚魚を放流します。
「釣った魚は逃す」、「Catch&Release(キャッチ・アンド・リリース)という言葉があります。この精神で、釣りを楽しむ人たちが、いつでもきれいな川で釣りをしたいと、数年前から、川の清掃を始めました。最初は10人程度の人数で活動していましたが、去年は50?60人参加。様々な人たちの呼びかけでカンパも集まり、およそ5500匹のヤマメの稚魚を放流することができました。ただ、残念なことに、川にごみを捨てる人も多く、自然にもどらないごみを回収したところ、軽トラック一杯分も集まったそうです。そのごみたちは、掃除機、洗濯機、車のタイヤ、自転車から空き缶まで、明らかに、人が捨てたと思われるものばかり。川をきれいにしようと、ごみを拾う人もいれば、捨てる人もいる・・・。
熊本県の白川は、独特の湧き水の川で魚の成長が早く、「大きな魚が釣れる」と、全国的にも有名な川。
その裏には、こういった人たちの地道な活動があったんですね。
川がきれいになると、釣りも楽しくなる。釣りをしない人も、この時期、ホタルが舞うきれいな川に、心癒されますよね。
環境月間でもある6月・・・・・。私たちが住む「地球」という星のために、何かできること、あるはずです・・・。
やさしくされた人に、恩返しをすることを、「ペイ・バック」。
やさしくされた人が、他の誰かに、やさしさのバトンを渡すことを「ペイ・フォワード」といいます・・・。
6月のある雨の日の出来事・・・。
髪の毛にパーマをかけ、美容室からでると、どしゃぶりの雨でした。
傘はありません。
駅までは、走ると5分・・。
「えーい、このまま走っちゃえー」と雨の中に飛び出すと、信号機は赤。
セットしたばかりの髪に手をあてながら、青になるのを待っていると、上品な傘が私の上に開きました。横をみると、長身の女性が「どちらまでですか?良かったら、途中まで入っていきませんか?」と声をかけてくださいました。
そのやさしさを受け取り、駅まで入れてもらうことに・・。
駅の前で、お礼を言い、別れを告げ、コンビニエンスストアへ。
ビニール傘を買い、家路に向かいました。
雨はどしゃぶりのまま・・。
家のそばに着くと、電車の高架下で、初老の男性が雨やどりをしていました。
傘がない様子・・。
私は、その男性のそばへ行き、「よかったら、この傘どうぞ。私の家は、すぐそこですから・・。」と言い、傘を渡しました。
男性は、「すみません。ありがとうございます。」といい、気持ちよく傘を受け取ってくれました。
長身の女性から、私へ、そして、初老の男性へ・・・・。「ペイ・フォワード」・・・。
やさしさのバトンが渡された気がして、何だか心は、雨上がりの澄んだ空のようでした・・。