こんにちは 監修の阿久根です。
第4章と第5章は玄洋社が軸となる物語です。
第4章の執筆担当は、ここで玄洋社の記事をアップしてくれています高野龍也さん。
「玄洋社の章をやりたい」
と最初に高野さんが言ったので、お任せしまして...
ところが、この玄洋社の描き方が非常に難しかったりするんです。
玄洋社は、どうも日本の右翼組織の始まりみたいな位置づけがありまして、内容にもデリケートな部分があるんですけど、
それよりも、福岡の経済界としては、ざっくりと、ぼんやりと―――
なにやら危険な組織
と、思われている現状を、なんとかしたいという願いがあり、
玄洋社の名誉をなんとか回復させてほしいとの依頼もあったのでございます。
あー
幕末に、《新選組》というメジャーな組織ありまして、
ありゃー過激な集団で、粛清という名の下に組員同士で殺し合ったりなんかしちゃってますが、
玄洋社みたいな怪しさや怖さを巷間はちっとも感じておりません。
なぜなら、それらをドラマチックに描いた著作が多くあるから。
土佐勤皇党の暗殺も、桜田門外の事件も...政治や思想関連の殺人であるに関わらず、
それからちょっとあとの維新後に誕生した玄洋社という組織は、
歴史オタクが感じるロマンもないまま、ただ怖がられているという状態です。
なんで、赤穂浪士が主人の仇として、善政を布いていた吉良の首をとったのが美談で、
なんで、来島が、政府に異を唱えて、爆弾で大隈重信の脚をとばしたのが怖い事件となるのか...(怖いですけども)
玄洋社がなぜ怖い組織というレッテルを貼られたままでいるのかというと...
それは、よく知らないから、それを元にしたグッドな著作も少ないから、でしょうね。
なので...僕は高野さんに相談して、
ここは、玄洋社総帥、頭山満の苦悩を描いてみましょうと言ってチャレンジしてもらいました。
でも、ただ時事を並べて、これが正しい歴史として描いてもダメです。
そんなこっちゃ誰にも知られないまんまで終わりますわね。
そこは、司馬遼太郎が坂本龍馬を作り込んじゃったばりのエンタメ感が必要なワケで、
より劇的さを盛らなければならないのです。
それで、冒頭の始まりが、西郷隆盛の死を獄中で知って大暴れするというシーンになったワケです。
高野さんに、派手に書いてもらいました。
あと細かな描写は所々僕手伝いましたけど、高野さんの始めてのドラマ執筆はいいドラマになったと思います。
で、
第4章は、頭山の視点で物語が進みます。
また例の様に、前の章と同じシーンがあったりするんですけれどもね...
滔天が頭山を訪ねてくるシーンは、滔天が主役の第3章にもありましたが、
実は、これはまったく同じシーンを別の日に録っているんです。
滔天の時には、滔天目線なのでちょっと緊迫した空気があるんです。
頭山のセリフのタメも若干長めだし、言葉も静かに強い。
これは、滔天がそう感じたというシーンになっているのです。
一方、第4章の同じシーンは少し軽めで、頭山のセリフもすんなりです。
これは、頭山が滔天とのやりとりを楽しんでいるだけなので、こんな風になってます。
頭山目線なので緊張はありません。
頭山にとっては、こんなシーンであったということですね。
実験的ですけど...各章を楽しめるようにいろいろやっているワケです。
それと、頭山が孫文に会いに行く時、干物を持って行きますが、本来なら
「これで一杯やろうと思って」
と言わせたいところを...
頭山が酒を飲まないことから、
「これを二人で食べようと思ってきた」
としていたのですが...
最後の進藤が「飲むか」と言った時、頭山のナマ返事具合が飲めそうなリアクションになってますけどね。
頭山、酒もタバコもやりません。
あ、それと最初に玄洋社の説明を、特別にこの章だけ入れさせてもらいました。
それを知って聴いたほうがいいと思って。
玄洋社という組織の活動資金は炭鉱経営であったということも、博多港が貿易港として成り立っていなかったことも、
時代背景として盛り込んでおいて、実は、北部九州での産業活動に深く関わっていたことも描いておきたかったので、
この章にいろいろと背負わせてしまいました。
高野さん、玄洋社の記事、またお願いいたしますねー。
続いての第5章は、平岡浩太郎の視点で展開する物語です。
放送は12月2日の19:00でございます。
過去放送分のポッドキャストは下よりどうぞ↓
第2章『君は兵をあげたまえ』 主役 梅屋庄吉
作演出 日下部 信
第4章『大アジア主義』 主役 頭山満
作演出 高野龍也/阿久根知昭
監修 阿久根知昭