コンシェルジュは前回に引き続き、絵本司書、読書アドバイザーの
安藤宣子さんです。今回安藤さんには、次世代に残したい絵本、しかも
「平成生まれ」の絵本を、世代別にご紹介頂きます。
皆さんご存知「ぐりとぐら」(1963年)や「いないいないばあ」(1967年)など
昭和の名作は残っていますが、今回はあえて平成生まれの名作絵本をご紹介します。
赤ちゃんむけ「次世代に残したい名作」
「あかちゃんたいそう」 鈴木まもるさん作
ねこさんと、ほっぺとほっぺ、すりすりすり。ここちよいリズムの言葉とともに、
体を動かして遊べる、親子で楽しむスキンシップ絵本。
オノマトペなど、擬音で赤ちゃんを喜ばせる絵本は多いですが、この本は
親子のスキンシップを大切にする絵本です。
安藤さんが聞いた話によると、赤ちゃんは生まれてすぐは視力が0.01以下、
生後三か月くらいで、ようやくぼんやり見える0.03くらいになるそうです。
なので原色を使った本や、線がはっきりした本が分かりやすい、と言われていますが
この絵本を生後5か月の赤ちゃんに見せたところ、絵本の最後に描かれた
動物と赤ちゃんの絵を見て、赤ちゃんを認識してそこをペロペロと舐め出した、
と言う事があったそうです。
続いて幼児向け
「しんごうきピコリ」 ザ・キャビンカンパニー作
信号が青に変わったら、車はどうする?パトカーが信号機の色を見ながら話をします。
ところが、信号機が「ピコリ」と、突然ピンク色に変わってしまいます。
すると、車はさかだちをしなければいけません。信号機がどんどんめずらしい色に
変わるたび、車たちにはいろんなことが起こります。
ピコリは何色光るのでしょう? 信号機のルールのお話かと思いきや、ふしぎな信号機の
ピコリに、パトカーと車たちがふりまわされる楽しい絵本。
作者の「ザ・キャビンカンパニー」は大分出身在住のご夫婦。
九州に拠点を置いて活動しています。なんとアトリエは廃校なんだそうです。
「とんでもない」 鈴木のりたけさん作
「ぼくはどこにでもいるふつうの子」という男の子のつぶやきから、お話はスタート。
よろいのようなりっぱな皮があって、サイはかっこいいなぁというと「とんでもない」と
サイが答えて...ウサギやキリンなど、次々に悩みをうちあけて・・・。
隣の芝は青く見える、の要素をユーモアを交えて取り入れています。
ご覧の通り、絵も綺麗!
さて、続いて「次世代に残したい名作絵本」小学生編
「みずとは なんじゃ?」 かこさとしさん作 鈴木まもるさん絵
かこさとしさんがお亡くなりになった後に出版された絵本。絵は先ほどの
「あかちゃんたいそう」の作者鈴木まもるさん。かこさんが絵本が書けなくなって
しまった時に、かこさんの大ファンだった鈴木まもるさんに 続きを書く白羽の矢が
立ったそうです。
かこさんがあとがきで「大きな子供向けの科学絵本は、専門の方に任せて
自分は小さな小さな子供たちに 水とはどういうものか、と言う事を伝えたい、と
いう思いで書かれています。
「おかあさんのいのり」 武鹿悦子さん作
戦後70年で出版された絵本です。わたしのあかちゃん、その手がどうか銃など
にぎりませんように。世界中のこどもたちから平和をうばわないで...。
母の子への愛情は万国共通。戦後70年、平和への願いをこめておくる絵本。
戦争を取り上げた絵本は、昔は暗くてなんか怖い、と言うイメージでしたが、この本は
パステルカラーでとても明るい色使いの本。子供だけでなく、お母さんにもオススメです。
そして中学生に向けた「次世代に残したい名作絵本」
「ことばのかたち」 おーなり由子さん作
もしも言葉に形があったならば、人を傷つける言葉は鋭い形で、本当に相手を
傷つけてしまう・・・言葉の哲学書みたいな絵本です。
物語り、と言うより詩集のような絵本です。
いかがでしたか?11月30日は「絵本の日」です。
絵本の日をきっかけに 是非絵本に触れてみて下さい。