毎回、様々な職業の方にお越しいただき、お話しをお伺いしております、
西日本シティ銀行「教えてコンシェルジュ」。
今回は、老舗旅館の3代目、にお越しいただきお話をお伺いしてきました。
コンシェルジュは・・・佐賀県嬉野温泉の老舗旅館「和多屋別荘」の
代表取締役 小原嘉元さんと、経営企画室室長の緒方伸太郎さんにお越しいただきました。
小原さんが代表を務める「和多屋別荘」さんがあるのは、佐賀県嬉野市の嬉野温泉。
江戸時代から宿場町として 人々に親しまれてきた「嬉野温泉」。
和多屋別荘は、その頃長崎街道を往来していた島津家薩摩藩が、
旅の途中に休息していた上使屋に端を発しています。
和多屋別荘さんの大きな特徴はその広大な敷地。なんと!嬉野川が敷地の中を流れて
いるんです。
敷地の中を流れる嬉野川。この広大な敷地の中に、和多屋別荘は佇んでいます。
和多屋別荘さん→http://www.wataya.co.jp/index.html
小原さんは、代々伝わる老舗旅館の3代目として、1年前から「和多屋別荘」の経営を
されています。
3代目として生まれて・・・
小原さん「国内にあるほとんどの老舗旅館はだいたいそうだと
思うんですが、旅館の敷地の中に自分の家があります。
だから小さい頃は、旅館も自分の持ち物の様に 遊びまわっていたんです。
大きな温泉があるでしょ?レストランもあるでしょ?ゲームセンターもあるでしょ、
テニスコート、プールもあった。ここを自由に遊びまわっていたんです。
なので、お客さんの為の施設なんですけど、自分のもの、と言う、今考えれば
ちょっとズレた感覚になってしまうんです。」
ご自分の親が「旅館の社長」だったこともあり、家族そろってご飯を食べる、と言うことが
ほぼなかったそうです。確かにそうですよね。旅館が休み、なんて聞いた事がないですから。
そして・・・そのままご家族が経営する「和多屋別荘」に入社するわけです。
恥ずかしながら、と小原さんはお話を続けて下さいました。
小原さん「会社が傾きかけた時があったんです。その時の
コンサルタントの方が、まず会社を立て直すには、身内の僕や姉を外すことだと
おっしゃったんです。そして、僕と姉は旅館の経営から1回外されたんです。
これは聖域に手を下すことですよね。経営者の身内を切るんですから。
でもこれがうまく行った。僕たちが居なくなったことで、社員も気が引き締まって、
旅館が見事に再生したんです。」
10年間で見えたもの
会社の経営から外れた小原さんは、別の会社を立ち上げました。
それは「旅館再生のコンサルティング会社」でした。
実は、小原さんの様に、全国の老舗と言われる旅館、特に2代目、3代目と続いている
経営者は、同じような悩みを抱えていたそうです。
小原さん「再生を目指している会社は、痛みを伴う改革が
必要なんです。その1つの方法が、身内を一旦経営から外す事。
身内は、会社の事を考える前に、家族の事を考えてしまいます。だから、まずはその
考えを無くして、会社を第一に考えるようにしなければいけないんです。
そうなると、僕とか姉のような存在の方が出てくる。しかしながら、自分は同じような
経験をしていますから、もっと深くアドバイスできるわけです。」
様々な旅館を、様々な面でコンサルティングをしてきて、ある思いが出てきたそうです。
小原さん「色んな面で、やはり思いが届かない部分も出てきます。
そこで、自分の思うような旅館を作りたくなったのです。本丸が欲しくなったというか。
コンサルティングをしながら旅館経営と言う、2足のわらじを履くのは難しいと思い、
タイミング的にも、自分が生まれ育った旅館があったんです。そこで、1年まえに
和多屋別荘に帰ってきました」
和多屋別荘に戻った小原さんは、どんな所から改革に着手したんでしょうか?
小原さん「まず、広大な敷地に、デッドスペースが沢山あることに
気づいたんです。広い庭(小原さんは箱と呼んでいるそうです)には、
ゆっくりとするスペースがない。また、人が入れないようなところが、実は
月がとても綺麗に見えたり・・・腰を掛けて、庭を楽しむ為の施設がない。
そこから作っていきました。しかも、家具以外のものを手作りで。」
緒方さん「最初は社員の方も戸惑っていました。社長は何を
やっているのだろうと。しかし、点と点が一つにつながった時に、あー、これを
したかったんだ!と皆さんも分かってきました。」
館内の装飾は 一つも意味を持たない。
新しく生まれ変わりつつある「和多屋別荘」。その大きな特徴の一つとして、
館内の装飾が素晴らしいそうです。(今村談)
詳しくご覧になりた方は上の和多屋別荘さんのホームページの動画をご覧ください。
どこかで美術の勉強をしたのかと思いきや・・・
小原さん「まったくそんなことはありません。私の装飾は一つも
意味を持たないんです。例えば・・・館内には五つの色で装飾をしている所が
あるんですが、それを見たお客さんや従業員から あれは何か意味があるのですか?と
聞かれます。でも、私は、母親程の年齢の従業員の方と、ああでもないこうでもない
言いながら、そこに合うと思う物を装飾しただけなんです。」
何もない、とはおっしゃっていますが、巨大な建物の装飾を何もないのに出来るとは
思えません。きっと、小さな頃から過ごしてきた場所だからこそ、様々な発想が出てくるんだと
思います。
館内の施設だけでなく、社員さんの意識も変えて言っているのだとか・・・
緒方さん「会議の場で、言いにくい事も言ってくださいと社員さんの前で
おっしゃるそうです。皆さんの意識も変わってきているのだと思います。」
代々続く老舗の旅館で、新しい事にチャレンジして進化する和多屋別荘。
まだまだ続く進化のお話しは、また次回・・・
オンエア曲
キャンドル・イン・ザ・ウィンド/ エルトン・ジョン
2人のストーリー / YUKI