宮城県仙台市。
東日本大震災では甚大な被害を受けましたが、実はあのとき、仙台の方々が懸命に守った小さな命があります。
震災から10日余りが過ぎた3月22日。
被災したペットの保護に取り組んでいた男性のもとへ電話が入ります。
それは「田んぼにイルカがいる!」という耳を疑うものでした。
海岸から2キロも入った一帯が押し寄せた津波によって水没していたのですが、そこに、なんとイルカが取り残されていたのです。
通りかかった人が気づき、避難所に貼ってあったペット保護の連絡先に電話。男性が仲間とともに駆けつけてみると、イルカの一種、スナメリの子供が田んぼに溜まった海水の中で苦しそうに身をくねらせていました。
しかし、県内の水族館も被災して電話がつながりません。
男性達は何とかしなければと田んぼに入り、苦労の末、ようやくスナメリを抱きかかえると、がれきの間を縫ってワゴン車を走らせ、砂浜では足を取られながら、ようやく海に戻したのです。
多くの命が一瞬にして津波にのみ込まれた混乱の中で、それでもイルカを見捨ててはおけなかった心温かき仙台の方々。
「イルカも自分達と同じ津波の被害者」
そんな思いがひとつになって救った小さな命は、波間を沖に向かって元気に泳いで行きました。