初夏の空を鯉のぼりが泳ぐ季節ですが、近年、各地で見かける「川渡しの鯉のぼり」、その発祥の地といわれるのが四国、四万十町(しまんとちょう)の十和(とうわ)地区です。
昭和49年、少年達が
「最近は僕らぁが大きくなったき、家で鯉のぼりを上げてくれん」
と話しているのを聞いた村のお兄さん達が
「よっしゃ!おまんらぁの鯉のぼりを持ってこい。
まとめて上げちゃうき!」と、四万十川にロープを渡して50匹ほどの鯉のぼりをかけたのが始まりです。
その後、次第にあちこちから鯉のぼりが送られてくるようになって、500匹もの鯉のぼりが泳ぐ町の一大イベントになりました。
ところが40周年を迎える今年、開催の危機に迫られます。
毎年、風に流されたりして数を減らしていた鯉のぼりですが、とくに昨年は悪天候の影響で大量に失われたのです。
そこで町がホームページなどで呼び掛けたところ、全国から次々に鯉のぼりが届き、瞬く間に100匹を超えました。
しかも、「うちの子も二十(はたち)になりました」
「我が家の鯉のぼりを、最後は四万十川で泳がせてやってください」
など、たくさんの手紙が添えられていたのです。
子供達との約束から始まった「川渡しの鯉のぼり」は、今年、多くの人々の温かな心の風に元気よく泳いでいます。