4/14「日本初の女性パイロット」
いま日本の空には多くの女性パイロットが活躍していますが、その草分けとなったのは明治生まれの兵頭精(ただし)という一人の女性です。
四国で生まれ育った彼女は、大空をめざして20歳で上京します。
その当時はまだ粗末な造りの飛行機が飛び始めたころ。
飛行機乗りは命知らずの男のやることで、女性が操縦するなど考えられない時代でした。
千葉県の飛行学校に入学を認められ、男性教習生たちに交じって厳しい訓練を受ける兵頭の存在は新聞でも紹介され、それに刺激を受けた女性も後を追って入学してきました。
そして大正11年3月、兵頭はついに3等飛行士の免許を取得。
日本初の女性パイロットが誕生したのです。
しかしその直後、彼女と或る男性との恋愛が、新聞各社から悪意に満ちた記事に書き立てられます。
その騒ぎによって「飛行学校が兵頭精を除名処分にする」と新聞が報道。それを読んだ彼女は飛行機の世界からふっつりと姿を消してしまい、やがて兵頭精の名前は忘れ去られていきました。
日本の航空史を研究する作家が彼女の居所を捜し出したのが昭和47年。作家が73歳になっていた兵頭に当時の飛行学校の卒業生名簿を見せると、年老いた彼女の顔がみるみる嬉しそうに輝いていきました。
その名簿には15番目に兵頭精の名前があります。
「除名処分する」という、あの新聞記事はデタラメだったのです。
日本の女性が飛行機を操縦して大空にはばたく道を切り開いた兵頭精。
その名誉はこのとき彼女の目の前で回復されたのです。
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